第78話「偽りの航路」
グランデル通信塔。
夜明け前。
エリスが静かに指示を出す。
「偽航路、送信開始」
伝令が動く。
光信号が飛ぶ。
だがその中に混じる。
一部だけ違う経路。
罠。
レオンが言う。
「敵は一部を持っている」
「だから全部は信じない」
エリスが頷く。
「だから“混ぜる”」
「本物の中に偽物を」
カイナが笑う。
「海と同じだね」
「本流と偽流」
数時間後。
黒海。
ラグナーの元に情報が届く。
「航路更新」
部下が興奮する。
「これで追えます!」
ラグナーは紙を見る。
静かに。
そして言う。
「二つあるな」
沈黙。
「どちらかが偽だ」
部下が困惑する。
「ではどうする?」
ラグナーは笑う。
「両方行く」
即断。
「艦隊を分けろ」
「二正面」
部下が驚く。
「戦力が分散します!」
「いい」
ラグナーの目が鋭く光る。
「どちらかは当たりだ」
海。
基準船団が進む。
だが今回は違う。
二つの船団。
本物と囮。
護衛も分散。
カイナが呟く。
「こっちが本命か」
風を読む。
波を読む。
そして――
遠くに黒い帆。
「来た」
三隻。
少数。
「分散してるね」
カイナが笑う。
「読み合いだ」
戦闘が始まる。
だが今回は短い。
黒海艦隊は引き際が早い。
「深追いするな」
カイナが止める。
「もう一つが本命かもしれない」
その頃。
別航路。
囮船団。
そこへ黒海主力が現れる。
五隻。
「来たぞ!」
だが。
船はすでに準備している。
速度を落とす。
わざと。
誘う。
ラグナーの船が迫る。
「今度は逃がさない」
その瞬間。
霧の中から現れる影。
外洋連盟の高速船。
待ち伏せ。
「囲め!」
黒海艦隊が包囲される。
初めての形。
逆包囲。
ラグナーの目が細くなる。
「やるな」
だが笑う。
「だが甘い」
次の瞬間。
黒海の船が煙を放つ。
視界が遮られる。
混乱。
その隙に――
突破。
完全包囲にはならない。
だが損害は出る。
一隻、損傷。
黒海側も一隻損傷。
互いに決定打なし。
戦いは終わる。
グランデル。
報告が届く。
エリスが言う。
「罠は機能しました」
ガルドが頷く。
「だが決めきれない」
カイナが笑う。
「相手も読んでる」
レオンは静かに言う。
「均衡だ」
地図を見る。
黒海。
基準航路。
互いに一歩も引かない。
その頃。
黒海。
ラグナーは海を見る。
「面白い」
低い声。
「信用は強い」
一拍。
「だが完全じゃない」
剣を置く。
「次で決める」
世界は今、
均衡にある。
だが均衡は長く続かない。
次は――
決定戦になる。
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