第63話「暫定なる世界」
会議場は、異様な静けさに包まれていた。
四つの旗。
帝国。
協議会。
外洋連盟。
白炎教団。
円卓の中央に置かれた文書。
「世界基準暫定合意案」
レオンが立つ。
「本合意は、単一の秩序を定めるものではありません」
「並立を認める合意です」
帝国代表ヴェルドが読み上げる。
・利子の透明化義務
・独占利潤の制限
・宗教的契約拒否の権利保障
・航路の相互開放
・基準改訂は四勢力協議制
カイナが笑う。
「重たいけど、悪くない」
セラフィナは静かに言う。
「利子は禁止されていない」
レオンは頷く。
「選択を禁止しない」
「だが強制もしない」
アレクシスが低く言う。
「帝国は透明化を受け入れる」
会場がわずかにざわつく。
恐怖の帝国が、
“説明責任”を認めた。
セラフィナが目を閉じる。
「信徒に、選択を委ねる」
教団内部も割れている。
強硬派は反発するだろう。
だが今は並ぶ。
レオンが最後の一文を読む。
「世界は、恐怖のみで統べられない」
「信用のみで統べられない」
「信仰のみで統べられない」
「流動のみで統べられない」
「四つが並ぶ」
沈黙。
ペンが置かれる。
最初に署名したのは――
皇子アレクシス。
帝国の名で。
次にレオン。
カイナ。
最後にセラフィナ。
四つの印章が押される。
その瞬間。
会議場の外で、鐘が鳴る。
戦争の鐘ではない。
合意の鐘。
帝都。
港町。
外洋の船団。
世界に速報が走る。
――世界基準暫定合意成立。
帝国内。
貴族派は凍りつく。
「透明化だと?」
「帝国の威厳が……」
だが皇帝の勅命が続く。
――帝国は署名を尊重する。
覆せない。
会議場。
レオンは静かに言う。
「これは終わりではありません」
「始まりです」
ヴェルドが微笑む。
「透明は脆い」
カイナが肩をすくめる。
「自由は面倒だ」
セラフィナは小さく呟く。
「信仰は試される」
アレクシスは言う。
「帝国も」
四つの思想は、並んだ。
だが均衡は不安定だ。
利害は複雑。
内部は揺れている。
それでも。
恐怖の独占は終わった。
世界は、複数の秩序を持つ時代へ入った。
夜。
レオンは海を見つめる。
「選ばれる秩序」
小さく呟く。
まだ道は長い。
だが確かに。
世界は一歩進んだ。
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