第61話「静かな謀議」
帝都の夜は、表向きは静かだった。
暴動は鎮まり、
広場は片付けられ、
兵は平時の配置に戻った。
だが、静けさは本物ではない。
皇宮の一角。
重厚な扉の向こうで、
数人の貴族が集まっていた。
「皇子は帝国を弱くする」
老貴族が低く言う。
「恐怖を緩めるなど愚行」
別の男が続ける。
「民は導かれる存在だ」
「選択など与えるべきではない」
テーブルの上には、地図。
帝国圏。
協議会圏。
外洋航路。
そして赤い印。
「改革が進めば、商会は協議会と接近する」
「財政も揺らぐ」
沈黙。
「……皇帝陛下は?」
「ご病気で公務を控えている」
その言葉が、空気を重くする。
帝国の頂点が弱い。
だからこそ皇子が動いた。
そしてそれを、快く思わぬ者もいる。
「事故は起きるものだ」
誰かが呟く。
冷たい言葉。
その頃。
旗艦。
ヴェルドは報告を受ける。
「貴族派が不穏です」
「分かっています」
淡々とした声。
「止めますか」
「止めません」
副官が目を見開く。
「殿下が危険です」
ヴェルドは静かに言う。
「殿下は帝国を変えたい」
「ならば揺れを経験せねばならない」
冷酷にも聞こえる。
だが彼の目には、わずかな迷いがある。
翌日。
会議場。
四勢力が再び集まる。
レオンは報告を受けていた。
「帝国内で貴族派が動いています」
エリスが言う。
「内乱の可能性」
カイナが眉を上げる。
「帝国が割れたら、世界は荒れるよ」
セラフィナは静かに言う。
「恐怖を緩めた代償です」
レオンは考える。
帝国が内乱になれば。
恐怖はさらに強化されるか、
あるいは帝国そのものが崩れる。
どちらも混乱。
その時、急報が入る。
「皇子の護衛隊が急襲されました!」
空気が凍る。
「殿下は?」
「無事ですが、数名負傷」
帝国は、静かに割れ始めている。
アレクシスは剣を握る。
包帯の下の傷が痛む。
「内乱にするな」
短い命令。
「帝国は、恐怖でなくとも立てると証明する」
だが証明は、容易ではない。
帝国貴族派。
宗教強硬派。
改革派。
財務派。
恐怖の帝国は、
今や複数の“未来”に引き裂かれた。
世界基準会議は続いている。
だがその裏で、
世界最大の国家が揺れている。
レオンは静かに言う。
「帝国が割れれば、我々も巻き込まれる」
「世界基準を急がねばならない」
風が強くなる。
四つの旗が揺れる。
恐怖の先に進むには、
さらに血が必要なのか。
帝国は今、
崩壊と進化の境界に立っていた。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




