第60話「恐怖の先へ」
帝都は、重い沈黙に包まれていた。
皇子暗殺未遂。
それは帝国の権威への直接攻撃。
本来なら。
即日、徹底鎮圧。
見せしめ。
恐怖の再確立。
それが帝国の常だった。
だが今回は違う。
帝都中央広場。
焼け跡の前に、壇が設けられた。
兵はいる。
だが剣は抜かれていない。
人々が集まる。
恐怖か。
処刑か。
空気が張り詰める。
そこへ――
肩を包帯で巻いたアレクシスが現れる。
ざわめきが走る。
「皇子だ……」
彼はゆっくりと前に立つ。
傷は痛む。
だが声は通る。
「昨日、私は矢で射られた」
静まり返る。
「犯人は捕らえられた」
緊張が走る。
「だが処刑はしない」
空気が揺れた。
「え……?」
兵も動揺する。
アレクシスは続ける。
「恐怖で抑えれば、沈む」
「だが消えない」
「信仰も怒りも、地下で膨らむ」
沈黙。
ヴェルドが遠くから見ている。
表情は読めない。
「帝国は変わる」
その言葉が落ちる。
「利子制度を見直す」
「透明化する」
「神の名で暴力を振るうことも許さぬ」
群衆がざわめく。
強硬派は息を呑む。
「恐怖は帝国を作った」
「だが恐怖だけでは、未来を作れぬ」
その瞬間。
広場の空気が変わる。
恐怖の帝国が、
恐怖を部分否定した。
これは革命に近い。
レオンの元にも報が届く。
エリスが震える声で読む。
「帝国、利子透明化宣言」
カイナが笑う。
「揺れたね」
セラフィナは目を閉じる。
教団も選択を迫られる。
会議場。
レオンは静かに言う。
「帝国が並んだ」
外洋連盟。
宗教連合。
協議会。
そして今、帝国。
四つが“基準を話す側”に立った。
だが帝都では別の動きがある。
皇帝派の一部貴族が、密談していた。
「皇子は弱い」
「恐怖を捨てるなど愚か」
帝国は一枚岩ではない。
改革は、必ず反動を生む。
旗艦。
ヴェルドが静かに言う。
「殿下は賭けに勝ちました」
副官が問う。
「本当に勝ったのですか」
ヴェルドはわずかに笑う。
「まだ始まったばかりです」
帝国は恐怖を超えられるか。
世界基準会議は、
いよいよ核心に入る。
そして今。
世界は初めて、
“恐怖の先”を見た。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




