第三部番外編 怪異ハンター 十二使徒の造反 前 4
「あれが、勝小吉ですか……」
インディアンとともにいつの間にか行動を共にしている着流しの男を見ているものがいた。
異様な気配を見せるそれは幾重にも布を重ねるように着ていた。
そして、それは金で飾り付けられた神聖ローマ皇帝冠みたいなものを被った骸骨であった。
「ワイトエンペラーたるバキエルが貴様に力を見せてやろう。これが十二使徒たるものの証である事を。貴様もまた光の創造主の念で固められたものであれば、我が主たる<並び立つもの>と呼ばれた偉大なる主の念で作られた私がどれほどのものかが分かるであろう」
そうバキエルの冠と幾重にも巻かれた布が金色に輝きだす。
「さあ、眠りし者どもよ。起きてこの世界を荒らせ……」
そう呟いた途端に土が盛り上がり次々と骸骨の死霊とまだ肉の身体を持っているゾンビ達が次々と辺り一面から現れた。
そう、そこはかって、たくさんのインディアンと白人達が戦った激戦の場でもあったのだ。
「ふははははは、貴様だけが神の力を受け継いでいるわけではない。そして、我はこの世界を滅ぼす為に産まれた十二使徒。人間どもの攻撃は全く効かぬ」
そうバキエルが叫ぶ。
勝小吉のまわりのインディアン達が斧とマスケット銃での攻撃が、死霊の骸骨やゾンビ達に全く効かない。
そして、その背後の山からはさらに怒声と悲鳴が響いた。
勝小吉とインディアンを潰そうと背後から狙っていたアメリカの市民軍がいたのだ。
彼らも死霊の骸骨とゾンビの襲撃を受けてマスケット銃で激しく銃撃したが、それは死霊の骸骨やゾンビ達には全く効かない。
次々と襲い掛かられて、殺されて、それは新しい死霊の骸骨やゾンビに変わっていく。
バキエルは死を操るものであった。
彼は生きるものを次々と死霊と化して、それらを全て統べるものなのだ。
「ふははははははははははははは! 」
高らかにバキエルが叫ぶ。
あるはずだった<結末の時>にする筈だった事を今ここでするように、今までしたかった事をここでやるようにバキエルは大喜びだった。
「ちっ! 」
勝小吉が刀を抜いてタメに構えた。
「ほう? 」
バキエルがそれを見て興味深い顔をした。
タメから真横に一閃して斬撃スキルを勝小吉が発動させた。
一瞬にして無敵なはずの、死霊の骸骨とゾンビ達が両断させられた。
バキエルが長大な杖を幾重にもなる布の下から出して、その斬撃を受け止めた。
誰にも傷つけれない筈の十二使徒の長大な杖が火花を散らせて斬撃を受けた。
「むう。流石は光の創造主の特別に作ったものではある。傷つけれない筈の我らにもダメージを与えれるか」
そうバキエルが笑った。
今まで傷もつかなかった長大な杖には数センチの深さの抉れた傷が出来た。
それを見て勝小吉がこれはヤバいと思ったのか、仲間の馬を奪って逃走に入った。
「むう、即座に判断か。なるほど侮れぬわ」
そうバキエルが言うとさらに巨大な光の輪を拡げた。
それは死者を起こす光。
その光によって、一斉に数十キロ四方近い範囲の全ての死んだものが動き出す。
それは人に限らず死したアメリカバイソンなども動き出した。
あらゆる死霊の骸骨とゾンビが産まれて、白人達だけでなくインディアン達も生きているアメリカバイソンなどの動物達を襲い、それらを新しい死霊の骸骨とゾンビに変えていった。
「全ての我の傘下達に命じる。勝小吉を捕らえよ。別に死して我が配下にしてもかまわぬ。全ての死んだ者どもよ。お前達の皇帝の命令だ」
そうバキエルが厳かに宣言した。
そして、勝小吉に両断された死霊の骸骨とゾンビ達が全く動かず塵になるのを見た。
「やはり、光の創造主の手になるものだな侮れぬ。たが、戦いと言うのはこうでなくてはな」
そうバキエルが心の底から笑った。




