第百十三部 第十章 悪人正機
「ふふふふふふふふ、お前に一つ教えておこう。大切な事だ」
親父が俺に向き直って笑った。
「な、何なんだい」
「キアスも覚えておくと言い」
「はい」
親父の言葉にキアスが笑った。
「これが本当の悪人正機だ」
「「「「「「「「は? 」」」」」」」
カルロス一世やスカーフェイスは何を言ってるか分かんないけど、国王達などは皆、転生経験があるから、悪人正機が何か知っている。
歴史的には誤解してる連中が、例えば殺人をしたりしても、悪人ほど許してくれるってんで、お寺でお祈りして許されたって曲解してる連中がいたそうだが、現実には自分を悪人として見て愚かな人間と見て、そういう人間こそ阿弥陀様が救ってくれると言う話だ。
「つまりだな。悪い事ばかりやって最低の人間で皆に嫌われている奴がたまに良い事をすると、皆が褒めてくれる。そして、評価も全部変わってしまうのだ」
バーンって感じで親父が言った。
「「「「「「おおおおおおおおおお! 」」」」」」」
国王達が唸った。
「つまり、少女漫画でヤンキーが捨てられた子犬が雨の中で震えているのを助けるパターンだな」
国王が頷く。
「その通り、悪い事を先にやって、後で良い事をすると、評価がひっくり返るのだ」
親父が深く頷いた。
うわぁぁぁぁ。
曲解だし、本人の前で言うかね。
結さんが困った顔をしている。
「ほら、結さんが困ってるけど」
「いや、あの、軍人さん達が凄い事になってますけど」
俺達が結さんに言われて、そちらを見ると、一部の軍人が不安になって銃剣で自分を切ってみたらしくて、血が出ないので、真っ青になって人形みたいに倒れている。
「馬鹿な! 俺達が死人だと? 馬鹿な! 」
高柳中尉が混乱している。
「ついでに言うと、大日本帝国はもう無いよ」
国王が余計な事を言う。
「アメリカに負けたから」
宰相も余計な事を言った。
「ぬがぁぁぁぁぁあああぁ! 嘘を! 嘘をつくなぁぁぁ! 」
高柳中尉が叫んだ。
「これ、何回くらいやってるの? 」
親父が聞いた。
「この後、私が高柳中尉に撃たれて死んで、繰り返しだから、もう百回以上やってますね」
結さんが笑った。
撃たれるんだ。
えげつない。
「お前等には騙されん! 騙されんぞ! 」
高柳中尉が結さんを撃とうとしたので、スカーフェイスが高柳中尉の腕を撃ちぬいた。
そして、自分から血が出ていない事に気が付いて発狂している。
「嘘だぁぁぁあ! 嘘だぁぁぁ! 」
叫びながら高柳中尉が人形のようになつて倒れた。
「ここに、ストリムススを誘い込んではどうだ? 」
カルロス一世が提案した。
「ああ、駄目だな。あいつなら、本気でやればぶち抜いて来る」
親父が駄目だしをした。
「じゃあ、罠にも使えないのか」
スカーフェイスも少しがっかりしている。
「姉さん……」
腕を撃たれていた弟が自分が死人だと理解したのか、人形のように動かなくなった。
「どうするね」
親父が優しく結さんに聞いた。
「もう、良いです。十分に弟と楽しく暮らしました」
結さんが優しく笑った。
「そうか……」
親父が言うと全部が崩れていく。
高柳中尉も人形になって消えていく。
「ああ、良い夢をありがとう……」
人形になった弟を抱きしめて結さんが親父に頭を下げた。




