第百十三部 第八章 高柳中尉
俺達が漁港の方へ向かうと十人くらいの日本軍人が海からあがってこようとしている、クジラの頭のようなものを三十八式歩兵銃で軍人たちが射撃していた。
その前に肩を撃たれた三十くらいのお兄さんとそれを庇う結さんがいた。
その銃撃は目の前の将校が撃ったらしい。
その将校の手には二十六年式拳銃が握られている。
「何だ、外人までいるのか面白いっ! 私は帝国陸軍特務機関の高柳中尉であるっ! この島は我々によって封鎖されるっ! 逆らう奴は撃つからそう思えっ! 」
高柳中尉が叫ぶとさらに二十六式拳銃を撃たれたお兄さんに向けた。
「待って下さい! 弟を撃たないでください! 」
結さんが泣き叫ぶ。
「弟だと? 死人では無いかっ! 」
高柳中尉が哄笑した。
言われてみれば、お兄さん……結さんの弟さんは血が出ていない。
「女将が弟をあの化け物を使って、よみがえらせたのは分かっているのだ! 早くあの化け物の操り方を教えろっ! でないとあの化け物が死んでしまうぞ! 」
高柳少尉が海のクジラの頭のようなものを睨んだ。
「駄目です。あれは亡くなった人達を蘇らせてくれる神様なのです。戦争で使うことは許されません」
結さんが必死だ。
「ふははははは、この世界は恐れ多くも天照大神からつながる陛下の収める国ぞ! その国を守るために使うのであれば、八百万の神々に何の無礼があるのかっ! 」
高柳中尉が苦々しく笑った。
その高圧な物言いといい、本当に嫌な奴っぽかった。
「ああ、それ魔界のものたけどな」
親父が笑った。
「はあ? 」
高柳中尉がこちらを見た。
「思い出したわ。そうだそうだ。こんなのあったな」
親父が笑いだす。
「何だ! 貴様わっ! 」
高柳中尉がこちらに十二式拳銃を向ける。
「ああ、こいつこいつ、相変わらずムカつく顔をしているだろう」
親父が高柳中尉を指差して笑った。
「何だ、貴様は? 」
高柳中尉がこちらを振り向きざまに親父を撃った。
でも、親父は障壁を張って弾をはじいた。
「学習しねぇな。何べんも自分が繰り返してんのに気が付かないのか? 」
親父がさらに馬鹿にしたように笑った。
「繰り返しているだと? ふざけた事を! 」
高柳中尉がこちらを撃ちまくるが親父の障壁で弾かれた。
「いい加減に思い出せよ」
親父が呆れたように耳をほじる。
「ええい、貴様ら、こいつを撃てっ! 」
高柳中尉が兵士たちに三十八式歩兵銃を撃つように指示した。
まあ、親父の障壁を超えれるとは思わんから気にならないが。
それよりも親父の発言が気になった。




