第百十三部 第三章 結(ゆう)さん
「お久しぶりでございます」
いきなり、綺麗な着物を着た美しい四十くらいの女性が近くにやって来て親父に頭を下げた。
大正時代のような漁村の方から歩いて来たらしい。
「誰? 」
親父が真顔になっている。
「ふふふふふ、そう言えば、そう言う約束でしたね」
綺麗な女性はそう言って笑った。
「約束ってなんだ? 」
「分かっております」
親父の不思議そうな顔に、そう言って女性が答えた。
やばいな。
多分、親父の場合、完全に忘れているんだと思う。
それが普通だから。
「と、とりあえず。どなたなんでしょうか」
俺がその着物を着た綺麗な女性に聞いた。
「はい、この漁村で網元をやっています。結と申します」
結さんがそう答えた。
「どうも、お騒がせしてすいません」
俺がまずは頭を下げた。
流石に、静かな漁村にこの面子はおかしいだろう。
「貴方は? 」
「ああ、息子です」
俺が親父を見て答えた。
「<終末の子>? 」
結さんが凄く驚いた顔をした。
「ちょっと、待ってください。<終末の子>をこんな漁村の村人が知ってるなんて変な話ですね」
ギョギョが前にバーンと立って追及する。
いやいや、お前が一番怪しいよとは誰もが言えない。
ギョギョが怪しいを連発するたびに全員が脂汗を流した。
それはお前が言う事では無いのに。
「いえいえ、私達もあなた方に近しいものですから」
結さんが笑った。
「まあ、そうだろうね。ギョギョ見て怪しいって騒がないもの」
俺が呟いた。
同じように着物を着た人達が俺達を見てほほ笑んでる。
やはり、大正あたりの雰囲気だ。
とすると、親父が百年以上前に何かしたって事だよな。
ああ、そりゃ、覚えいて無いわ。
間違いない。
「とりあえず、ここでは何ですので、是非、私の屋敷に泊まりに来てください」
結さんが深く頭を下げた。
「どうすんの? 」
俺が親父に聞いた。
「とりあえず、行ってみるか? 」
親父がまた軽いノリで答えた。
「いやいや、軽すぎるだろ」
スカーフェイスとかは警戒している。
当たり前だろう。
ただ、俺も殺意は感じない。
「嫌な予感はしないのか? 」
カルロス一世が囁いてきた。
「とりあえず、今のところは……」
俺が答える。
「じゃあ、行ってみるか」
カルロス一世が笑った。
何という適当。
とは言え、親父はすでに結さんについて行ってたりする。
軽すぎぃ。




