第二十四話 国際問題
「あの外務大臣、なんだかいらいらします……。ところで何か塗るもの持ってません?」
高級パンを頬張っているカルラが、優雅に国際会館へと入っていく外務大臣を見て嘆いた。
「そうだね、僕もそう思うよ……。ところで、凝固したケチャップまだ持ってるんだけどいる?」
太郎はカルラに同調すると、山小屋の時に凝縮して以降ずっと太郎の周りを浮遊していたケチャップをカルラの前に漂わす。
「いいんですか? ありがとうございます。でも、賞味期限大丈夫です? 二十一話から半年以上過ぎてますよ」
とはいえ、カルラはケチャップの塊をもらう。しかし、液状化しないケチャップに苛立ったのかパンに埋め込んでいる。
「え? そんなに?」
歳を取ると時間の経過が早いとは本当なのだなあと、太郎は一人で勝手に納得し、ふと何かを思いついたかのようにスマホを取り出した。そして、カルラやアマラが見えない場所まで来ると自称神様へと電話を繋げた。
だが、なかなか応答せず粘っていると三回目の電話でようやく向こうが応答した。
「もしもし、神様ですか?」
「すまぬ、今ゲーム中でな」
「ああ、BU○Gでしたっけ?」
太郎は自称神様に初めて会った時の会話を思い出した。
「何を言っているのだ次郎くん。今の時代エイ○ックスでしょうが」
エイ○ックスというのは、聞き慣れない単語だった。そんなレコード会社があったような気もする。
「ん? レコード会社ですか? BU○Gは何処に? あと、次郎じゃないです」
「BU○Gなんて数年前にオワコンよ。今はもっぱらエイ○ックスってゲームじゃわ。それにしても、名前を間違えるなんてすまんな。名前は確か……リヴェノ・アーリンくんだったかな?」
「違いますねぇ。山田太郎ですよ。間違えないでくださいよ」
別次元の人物を名前を間違える神様に、太郎は少し呆れた。
「いやーすまんすまん。ところで、電話をしてきたということは何か用事があるのか?」
「ええ、実は」
太郎は神様に今までのことを話した。
「なるほどの。そんなものチートの力でねじ伏せてしまえばしまえば良いではないか」
神様は楽観的に言ってくれるが、そんなに余裕なら相談する必要性なんて感じないのだ。それに、神様と違って人生経験も少ない。一応確認の意味もある。
「そうでしょうか……」
「気になる点でも?」
「失敗したら責任重大ですし……。会議に武力を持ち込むのはちょっと……」
何でもかんでも武力で解決するのに、太郎は抵抗があった。だと言うのに、神様は呼吸できてるのかと思えるくらいに大笑いをする。
「気にする必要はないぞ。次郎くん。今までの転生者は国を潰すなど日常茶飯事だったからな、世界の神になる者すらいた。何も気に病む必要はない。好きなだけ暴れて、それで武力衝突が起こったら潰せばいい。わしも車で人撥ねた時人生終わったって思ったけど、よくよく考えたら上級国民だし転生の間は犯罪者引き渡し条約結んでないからどうでもよかったことに気がついたわ」
自称神様の高らかな笑い声がスマホのスピーカーから太郎にも聞こえる。それを受け、太郎もつられてしまい二人で爆笑してしまった。
「わかりました。また電話しますね」
「ああ、いつでも待ってるぞ。三郎くん」
こうして、太郎と神様の通話が終了した。太郎は急いで三人に合流する。
「遅いですよタロウさん」
アマラはとうに休憩を終え、今にも国際会館に入る準備万全だった。カルラも同様である。
「じゃ、入ろうか」
四人は国際会館の中へと入っていった。
国際会館の中は、ふかふかのレッドカーペットが床に敷き詰められ、敷かれていない場所はすべて大理石のタイルである。壁も屋上も同様に大理石であり、いかにも贅を尽くしましたという感じだ。
受付に向かうと、そこには品の良さそうな受付嬢が。美しい佇まいに、太郎は一度アマラたち三人を一瞥する。
「な、なんですか……」
ジト目になりながら睨んでくるアマラを気にせずに、受付嬢に待ち合わせを伝えた。
「ご案内いたします」
太郎は三人、否二人の冷ややかな視線を浴びつつ目的の部屋へと到着した。「それでは失礼いたします」と受付嬢が戻っていく。
いざ国際会談となると途端に太郎は緊張でいっぱいになり深呼吸をして呼吸を落ち着かせる。しかし、ノックをしようとした際ノックの回数を忘れてしまった。
「ノックって何回だっけ?」
太郎はノックの回数を三人に確認する。
「3回じゃない?」
「兵士時代はみんな2回ですね」
「我のような高尚な者は4回だな」
三人とも別々の答えに太郎は思わず頭を抱えてしまう。ステフィーはまず率先して除外するとして、問題は2回か3回だ。
太郎はアマラの顔も、カルラの顔も見るがどちらともどこかそっけない態度をとっているが嘘をついているようには見えない。
「だったら……」
太郎は名案を思いついた。ドアの前に立つと2回ノックをする。そして、ノックというには小さなノックをもう1回する。
「二人の間をとって2.5回ということで」
二人に了承を求めようと二人の方を見るが、それよりも前に扉が勢いよく開き扉の目の前にいた太郎は吹き飛ばされた。
「んなもんがあるか!」
外務大臣が、怒りに燃え狂ったような顔をして息切れしていた。
「イタタタ……。ちょっと何するんですか!? 国際問題ですよ!」
「国際儀礼も弁えぬおまえに国際問題だととやかく言われる筋合いはないぞ! そもそも、国際儀礼に基づくとノックは4回だ! 全く、なんでこんなやつが派遣されたんだ。それほどまでに旧政府は人手不足なのか」
「そうだよ」
原因はお前らだよと言いたげな口調で太郎は外務大臣を睨みつける。
「まあいい、取り敢えず入れ。こんなところで油を売っている暇などないのだからな」
そう吐き捨てると、外務大臣は部屋へと戻っていく。太郎たちも、部屋の中に入っていった。
リヴェノ・アーリン→https://ncode.syosetu.com/n6149gw/




