第二十一遭遇
「う、う、うるさああぁぁぁいっ!!」
「あぁ、ごめんごめん。それで、なんで世界がつまらないの?…ぷっ」
健次は震える手を抑えつつ、話し出した。
「俺って、なんでもかんでも見れば覚えて、実践できるんだよ」
怜奈は「ふーん」とだけ言い、雫の顔に自分の顔を近づけた。
「本当にそうなのか、調べてちょうだい」
少しの間雫は首を傾げて、何を言ってるのか分からなかったが、すぐに雫は気づいた。
「分かりました」
雫は健次の前に座り、そっと手を握ると、健次はビクッと手を震わせる。
「質問をします。あなたは本当に見ただけで覚えたり、実践ができるんですか?」
「え…、まぁ、そうです」
「霧山さん、本当らしいです」
怜奈は頷き、雫のことを抱きしめる。
「ありがとね~。雫ちゃん」
雫は少し照れながら「はい」と言った。
「これで何がわかんだよ」
健次が怜奈を睨みながら言った。すると、怜奈は鼻で笑いながら話し出す。
「雫ちゃんは誰の心の中でも見れることができるの。やれるならやってみなさいよ」
「嘘に決まってんじゃん」
すると、雫は健次の手をもう一回握る。
「証明します。あなたの誕生日はなんですか?」
「え…」
「七夕の七月七日ですね。あなたの好きな人は誰ですか?」
「ちょ…」
「立花蘭さんですね。えっ、どんだけ立花さんのことについて調べてんですか。ちょっと引きます。立花さんの誕生日は十月月二日、血液型はB型、家を調べるためにストーカーをした。一昨年に誕生日プレゼントとして、八千円の指輪をあげた、と。気持ち悪いです」
「な、な、な、ななななんでその事について知ってんだよっ!」
「あなたが思ったことです。あ、記憶も少し見ましたけど」
雫が周りを見ると、全員が青い顔をしていた。
「そこまで言わなくても…」
怜奈が雫の肩に手を置きながら言った。雫もバッと健次のことを見た。
健次は部屋の角で体育座りをしながら、ぶつぶつと独り言を言っていた。
「す、すみません」
「大丈夫だよ、雫ちゃん」
怜奈は健次の近くに行き、耳元に唇を近づけて、
「ざまぁみろ」
と言った。
健次は目頭になにか熱いものを感じたのは言うまでもない。
雄夜は健次が可哀想だと、心の底から思った。
「そんなことより、早くこいつを外に出させようぜ」
優衣は健次のことをさすがに可哀想だと思って、話を変えようとしていた。
「もう、出ていってくれよ!僕はこんな世界に飽き飽きなんだよっ!死にたいんだよっ!」
健次の言葉に雄夜が立ち上がり、健次の近くにいく。
そして、胸ぐらを掴みあげる。
「死にたいって簡単に言うんじゃねぇよっ!ふざけんなっ!」
「や、止めなさい」
怜奈が雄夜を止めるために言ったが、雄夜の耳には届かない。
「お前が死んで悲しいと思う奴はたくさんいんだよっ!それを簡単に死にたいだぁ!?ふざけんなっ!てめぇのははおやはどんだけ心配してると思ってるんだっ!飽き飽きしたぁ!?お前が楽しもうとしないからじゃねぇかっ!」
雄夜は死んでいった父を思いながら、叫んでいた。この場にいる雄夜は父の言葉に従って楽しく生きてこれたから、ここにいるのだ。
「お前は僕みたいな体質じゃないからそんなことが言えるんだよ!」
健次は目に涙を浮かべながら反抗する。
「あぁ、知らねぇよ。でもな…簡単に死にたいって言うなよ」
次は雄夜の目に涙が浮かんだ。
「簡単に言ってねぇよっ!僕だって考えた、でもな、周りの人は僕を避け始めたんだ」
「…は?お前の母さんはそんなこと―――」
「そうだよっ!外では僕みたいな人とつきあってるように見せて、自分も同じ位に立ってるように見せて…でも、学校の中では軽蔑してるんだよっ!なんで、頭が良いのが悪い、なんで運動ができて悪い。こんな世界なんてつまんないんだよっ!たがら死にたいんだっ!」
雄夜はゆっくりと健次の胸ぐらを掴んでる手の力を抜いていく。健次が地面に座り込んだまた雄夜を睨んでいた。
雄夜はなにも言わずに、自分の鞄を開ける。そして、筆箱を取り出す。
「な、何してるんですか?」
雫が心配そうに雄夜のことを見つめる。
雄夜は筆箱の中からカッターを取り出し、刃を出していく。
怜奈は、雫を助けるときにした行動を脳裏にうかび、「止めてっ!」と叫んだが既に遅かった。




