第二十遭遇
寒気を抑えながら、雄夜達は門をくぐり抜けた。
「俺達は入ってもいいのか?怜奈」
「なんで?」
「そりゃあ、いきなり俺達が入ってもよ」
「大丈夫、話はしといたから」
雄夜は軽く舌打ちをした。この理由で逃げ出したかったのだ。
玄関の前まで来て、怜奈はチャイムをならす。バタバタと誰かがやってくる。
「どうぞ、入ってください」
そんな声と共に玄関のドアの前に現れたのは、少しやつれてしまった女の人だった。
女の人に促されながら雄夜達は家の中に入っていき、リビングに向かった。
リビングはシンプルであり、無駄なものが無い。その中心にあるテーブルに雄夜達は座る。
女の人はため息を短くしたあと、話始める。
「私の息子はね、昔は運動もできて勉強もできる良い子だったの。でも、中一の後半になったとたん学校にいくのをためらい始めたの。理由はまだわからない。とっても優しくて友達思いだから決していじめが原因じゃないわよ。彼女もいたって聞いてるし」
雄夜はなぜか少しだけ、イラッときた。
「では、早速行動をおこしましょう」
怜奈は椅子から立ち上がり、真っ直ぐ引きこもりの子がいる部屋に向かっていった。まるで、前から知ってたかのように。
雄夜達も慌てながら、怜奈のあとについていく。
母は目をつぶり、願うしかなかった。何故かというと、母が部屋に入ろうとしてもドアの鍵が閉まっていたり、しつこく話しかけたときは子供の穏やかな声から一変し、殺意を持った声になった。それから一言も喋らないようになってしまった。つまり、母はなにをすればいいのか分からなかったのだ。
怜奈は二回ドアを叩く、返事はかえってこない。次にドアノブにてをかけて、回してみるが鍵がかかっている。
怜奈はため息を漏らし、ドアに顔を近づけながら話しだす。
「健次君、開けてちょうだい」
怜奈は子供の名前を口にする。その声は優しいお姉さんのような声だった。
雄夜は寒気が走り、体をさすっていると怜奈に足を踏まれた。
怜奈はなにもなかったかのように話続ける。
「私は怜奈っていうの。返事をしてちょうだい」
しかし、返事がかえってこない。怜奈はドアノブに手をかけると、無理矢理に何度も捻る、捻る。ガチャガチャという音は怜奈の心情を表しているようだった。つまり、苛ついてるのだ。だが、笑顔である。
「いい加減にしないと、お姉ちゃんも怒るよ」
怜奈はドスの効いた声で言うと、返事が返ってきた。「帰れ」と。
「もう少しで、怒っちゃうよ?いい?」
「消えろ」
怜奈はドアノブから手を離し、優衣に目をやる。すると、優衣は小さく頷きドアの前に怜奈とかわって立つ。
「よーし、もう開ける気はねぇのか?」
優衣は返事が返ってこないのを認識するとこれが最後の忠告だ、と続けた。
やはり、返事はかえってこない。
優衣は小さく深呼吸をしながら、空手の構えを連想させるような構えにはいる。
「うらああぁぁぁぁっっ!!」
そのまま優衣は真っ直ぐ正拳付きを、ドアノブの上に当てる。
バキッという音ともに、ドアに穴が開く。優衣はなにかをまさぐるように手を動かしたあと、鍵を開ける。次にガチャという鍵が開く音がする。
優衣がドアを開けると、怯えてる少年がいた。当たり前と言えば当たり前だ。
「なっ、こんなことをしていいと思ってるのかよっ!」
怜奈は優衣の脇から部屋に入り、得意気に「許可は貰ってる」と言う。
それに続いて、雄夜と雫も入る。
少年は髪が長く、目を覆っている。体格は少しひょろっとしているが、いい筋肉をつけていると分かる。見た目的にはイケメンの部類に入っている方だ。
「それで、なんかよう?」
健次は落ち着きを装いつつ言った。
「なんで、ヒッキーになってるか、聞きたい」
怜奈は嫌味をこめて「ヒッキー」と言った。健次は眉を少しだけ動かしたが、まだ冷静を装う。
「理由…そんなもんねぇよ」
「そ、それでは、外に行っても大丈夫じゃないんですか?」
雫が雄夜の後ろに隠れながら言った。
「雫ちゃん、普通はあるもんだよ。言いたくないだけ。だから、無理矢理聞き出すのみ」
怜奈はまた、優衣に目をやる。優衣は小さく頷く。雄夜はいつの間にそんな仲になったのかが理解できなかった。前もそうだった、この二人は何故か分からないことが多い。
そんなことを雄夜が考えていたら、話はついたそうだ。
「わ、わ、わ分かりましたよ!話せばいいんだろ」
怜奈は満足そうに頷く。健次の頭の隣に大きくヒビが入っているのを無視して。
「えーと、ただこの世界がつまらなくなっただけ」
その瞬間、健次以外の四人は吹き出してしまった。
「ぐははははっ!痛い、痛い腹痛い!」
雄夜が笑う。
「ぷぷぷ、こんな人、本当にっぶ」
雫が笑う。
「ま、まじかよ!これは酷い。それってマジで言ってんの!?マジ笑える!あはははっ!」
優衣が笑う。
「あはははっ、痛い腹が引きちぎられるほど痛い。というか、考えが違う意味で痛い」
そして、皆で思いっきり笑った。顔を赤くして、怒っているのか、恥ずかしがっているのか分からない健次を除いては。
「世界がつまらない」
雄夜が真顔で言うと、また、皆が笑い始める。
十分ぐらいそれが続いた。




