第十九遭遇
放課後に入り、少しだけ傾いた夕日の光がが教室内に充満する。
「もう、帰っていいか?」
雄夜は宇宙について白熱して、話をしている優衣と怜奈に言った。
「まだいたのかよ、緑神。帰っていいぞ」
優衣が頬杖をつきながら、言った。雄夜は「分かった」と言って、帰り支度をする。と言っても既に帰る支度はできているので、カバンを肩に掛けるだけである。
「あぁ、ちょっと待って、もう少しで終わるから」
そう言って、雄夜を帰らせようとしないのは怜奈だ。雄夜は一つため息を漏らして、椅子に座る。
こんなやり取りを三十分前もした。
「雫は帰ってもいいんだぞ」
雄夜は隣の席に座っている雫に話しかけるが、雫は帰ろうとしない。
「はぁー、いい加減、用事ってのを聞かせろよ」
雄夜の不満度が高まってきたのを怜奈は感づき、「仕方がない」と言って優衣との話を切り上げ、椅子を雄夜の方に向けた。
「話ってのは、私の隣の家に住んでいる子供なんだけど、なんか不登校になったらしく、私がなおさないといけなくなったの。まぁ、つまりニートの更正ってやつかな」
雄夜は少し静止して怜奈の言ったことを考える。そして、パッと目を見開き、怜奈に言う。
「俺、関係ないじゃん!なんで一時間近く、足止めされてたの!?あぁ、アホらしい帰ろ」
雄夜は立ち上がり、教室のドアに向かって歩き出そうとするが、腕がつかまれる。
「私だけじゃダメなの…」
そこには、雄夜が前も見たことがある目頭に涙が溢れて、目を潤ませながら見上げてくる怜奈だった。女の涙は男の怒りを抑える効果を持つと言われているが、雄夜は普通に怜奈のこの表情は苦手だった。わざとだとわかっていてもだ。
「変態…」
優衣が一言、雄夜に言った。優衣の「変態」というのは、いつもこんなことをしているのか、という意味合いだった。
その言葉に雄夜は目が覚め、肩に抱きつく怜奈を振りほどく。
「私も助けてあげたいです」
次に雄夜の右から聞こえてきたのは雫の声だった。
「俺は関係無い―――」
「霧山さんの願い事はめんどくさいことばかりおこるから極力避けたいと思ってるけど、その子供についてとても心配してて、助けてあげたいと思ってるんですね?」
雄夜は「うっ…」と言いながら自分の右手を見ると、雫が掴んでいた。
「な~んだ、結局行きたいってことじゃん!さっすが、雫ちゃん!」
怜奈はギューっと雫を後ろから抱きつく、雫は別にいやがろうとせず、そのまま雄夜の手を握っていた。
「アタシはどっちでもいいぞ、帰っても暇だし」
「私も力になるなら行きたいたです」
「んじゃ、決まりだね!さっそく四人で向かおう!」
怜奈が片手を振り上げる。
「おいおい!なんで俺が入ってんだよ!」
「え?行きたいんじゃないの?子供を助けたいんじゃないの?」
雄夜はなにも言えずに、怜奈を見ていると、怜奈はニヤッと笑い、自分のカバンを肩に掛ける。
「そんじゃ、行こっか」
怜奈と優衣と雫は意気揚々と教室を出ていく、そんな三人を見ながら雄夜は「くそぅ」と言って、立ち上がった。
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今日の授業は六時間であり、いつもより早く帰れるので、放課後は三時に始まり、怜奈と優衣が一時間話をして、怜奈の家には四時半に着いた。怜奈の家は普通と同じく一戸建てのそこら辺にありそうな家だった。
雄夜はもしかしたら改造とかされてて、UFOに模した家でもあるのかと思っていた。
しかし、雄夜の期待を裏切るように、怜奈の家はどこにでもありそうな家だった。
「前はもっと派手だったのに…」という怜奈の一人言に雄夜はやっぱりと思った。
そう、怜奈の家はもっと派手というか、凄いことになっていた。形は映画によくでるUFOと同じくらいで、そろばんの珠のようになっているので隣の家から苦情が来る。夜になると毎日ライトアップされ、これもまた深夜でもやるので、近所に迷惑になる。すると、必然的に警察のお世話になるわけである。
このことは全て怜奈が一人でやったことだ。
しかし、四人は怜奈の家に入ることなく隣の引きこもっている子供がいる家に向かった。
「つーかさ、なんで手伝うことになったんだよ」
「え?だって助けたいって思ってたんでしょ?」
「ちげぇよ、俺のことじゃねぇ。なんで、お前が手伝おうとしたかだ」
「単純明快!困っている人は助けるのが基本でしょ」
怜奈が人差し指をたてながら言った。
「それじゃあ、なんで俺の時は助けてくれなかったんだよ(ストラップを返しにいくとき)」
「なんかさ~、雄夜は苛めたくなるんだよね」
雄夜は「はぁ?」と少し怒りを混ぜながら言った。
「何て言うんだろう、オーラてきな」
「オーラぁ?」
「そうそう、たまにいるじゃん。あ、こいつはいじられキャラだ、とか分かったりすること」
雄夜は分かったような気がしたが、雄夜自身はいじられキャラではないと思っていた。雄夜は隣にいた優衣と雫に「俺っていじられキャラ?」という質問をした。すると、雫は「え…っと……全然大丈夫ですよ。ほ、ほら雄夜くんって皆より優しい人ですから」と焦りながら言った。逆に雄夜は心配をした。優衣は「はぁ?お前って殴られキャラじゃね」という意味がわからない、というか絶対になりたくないキャラを言った。
「そんな話をしてる場合じゃないよ、ほら、ここが例のところ」
怜奈がまるで心霊スポットを紹介するように言った。雄夜はその家を見ると、確かに近寄りがたいオーラ、むしろ近寄りたくないオーラが出ていた。
雄夜は租借するうように唾を飲み込んだ。冷や汗がたらりと頬をつたった。




