依頼主は生きているか?
名刺を懐から取り出し、いつものような出だしかと思えば――彼女は渋った。
「……これは止めておくか。次回にしよう」
「ええ? そんなことも有りなの」
「まあ」
名刺にはどこかの高校教師の名前があった。なぜだか血染みまでついている。
「これを交換した後、教師はバス事故で死んだのだ。理由は分からないが……血痕が浮き出ている場合、依頼主は死んでいる。難易度が上がるのね」
「そうなんだー。不思議な名刺だねー」
「思ってないだろう! しょうがない、こちらにしよう」
次の名刺は普通だった。だがどこかカビているような、そんな気がした。
「ねえ、なんかそれ、カビてない?」
「はあ? お前の眼球がカビてるね!」
「あ?」
グー子にも感知? できていない?
キュームは嫌な予感がしたが、確かに名刺はカビが生えていた。依頼主はどんな状態になっているのか……生きているのか?
「――開☆門!!」
視界が明転した。
「うべあっ!!」
狭い排水溝のような、何が水浸しになった場所に転送されキュームは息継ぎをした。一気にびしょ濡れになり体温が冷たくなる。
ここはどこだ? 水が流れる音がして、視界が暗い。
「……トンネル内に来たようだね」
「トンネル?? でも異常に暗いし、水浸しじゃない??」
2人は何とか這い出して膝下まで冷水に浸かりながらも、辺りを見渡した。目が慣れるまで分からなかったが壁面が崩落し、車がひしゃげている。
「……依頼主は、まさか」
キュームが言いかけた。「死んでいるわ。貴方たち、なんなの? 行く先行く先」
聞き慣れた声色にハッと振り返ると、バグがたたずんでいた。
「バグ!」





