生き人形はスペア
ハルガスミは上質な衣を土まみれの階段に垂らしながら、こちらへ歩み寄ってきた。その目つきは商品を値踏みしているものだった。
「ふむ。確かに魂がない、生きているようだが……強い意思で動いている不思議な個体だ」
「あの」
「思考もする。呼吸もする。――グー子が特別な咒いを持ち得ているわけではなく、この個体の方みたいだねえ」
胸の真ん中に指を当てられ、パチンと電源を切られた。視界が暗転し、意識が違う場所へ移動した気がした。
「へ?」
「ちょ、ハルガスミさま! 手荒なことはやめてくださいっ」
真横でピサロが慌てふためいている。
「キュームはそっちにいるぞ。意識を失ってはいない」
「え? あれ」
いつもと声の聞こえ方が異なり、手を見ると成人したものであると確信する。
「グー子になってる??!」
「主の意識を上書きできるほどの余力がある。最高の生き人形じゃあないかな?」
「グー子は?!」
ピサロが慌てふためくが、ハルガスミは平生としている。
「気絶しているか、または意識自体停止しているかじゃないの? しかし最高じゃないかな、スペアがあるんだ。どちらかが負傷しても咒士は動ける。好条件でないか」
「……生き人形を操る主側からしたらたまったものじゃないですが。人道的な問題を無視すれば楽な話ですね」
カヂが苦笑いをしつつも肯定する。一方、キュームは落ちつかなかった。
「い、いつ戻るンですか?!」
「ハッハッハ! ハルガスミさまのご都合次第、生き人形を作ったグー子にはお灸をそえなければなー!」
大笑いをすると、倒れていたキュームの身体が起きあがった。
「ギャーッ!」
幽霊? が苦手なキュームには刺激がつよい光景に、廃寺のヌシはまた笑う。
「ンなぁ?変な感じにゃ……」
「起きたか。自称大妖魔のグイ」
「グイ?」
ピサロとカヂの驚愕した問いが重なったのだった。





