ハルガスミさま
ピサロに連れられ、皆で朱色が剥げた廃寺へたどり着いた。境内も荒れ果ててはいるが、寺の前には透き通る美しい底なしの池がある。
これが竜宮城への入り口?
キュームは覗き込んでみたが、相当底が深いのか暗闇に吸い込まれそうになった。
「ハルガスミ、やってキタヨ! 例の新人ダネ!」
「おや、その茶トラちゃんが? ご生憎、ミルクはきらしていてねえ」
間延びした女性の声がするや、廃寺から古風な格好をした少女が現れる。とはいえ、高校生くらいで車尾や寿桃のように幼くはない。
「ハルガスミさま。どうやったら馬耀からの支配下を遅らせられるでしょうか」
ピサロが暗い顔持ちで言う。
「会雲は世界を支配する妖魔。我々は逆らえない……まあ、キュームだっけ。貴方にはどうやらグイがついている。ソイツなら何か知っておろうよ」
「グイ……アイツはこの村から出さぬよう、見張っていた元凶ね! 馬耀の手下なのは確実じゃないかっ」
グー子が鼻息を荒くしてグイを貶した。
「グイは咒いをかけられ、意思とは無関係に見張り番をさせられていただけ。まあ……アヤツ、皮肉極まりないなあ」
ハルガスミは欄干に座り込むと、クスクスと笑った。キュームは不意に変な夢で虎と戦っていたそっくりな人物を思い出す。
「……」
「お前の意思があべこべなのも、馬耀の影響かい? 馬耀もある意味優しいヤツさ。人間にはね」
「? 訳がわかりませんが」
「すいません。カヂさん。ハルガスミさまはいつもこんな感じで……」





