キューム 尻尾が生える
次の日、夜明け前にハチスガがバットを素振りをしているのを垣間見て、あれで殴られたのかと納得した。
ピサロがそれを木の下で眺めているのも。
このラベンダー荘では朝方というのは各々の黄昏る時間なのかもしれない。
キュームは馬耀に看病してくれた礼をいい――何か食べれたのは夢ということにして――自室に戻った。
「おはようございます。キュームさん」
「うわ、は?」
いきなり部屋の中からカヂの声がするものだから、後ずさる。幻聴ではなく、本当にカヂが座っていた。
「体調は」
「ふ、不法侵入ですよ???」
「そう怒らないでください。偶然、貴方が大家の手中に下ったのを見てしまいましてね……」
ニヤニヤ、と意図の読めない笑顔に違うものが混じっている。
「……まあ、何か良く分からないケド……勝手に」
「背中、見せてくれませんか」
「エッ」
「痣がどうなっているのか見たいので」
カヂが異性だった場合、どう反応していいものか。非行をしてきたキュームにも恥じらいというのはある。
「妖魔の配下にいるのは貴方だけではないのですよ、このラベンダー荘はそんなヤツらばかりなんです」
「貴方も馬耀さんに?」
「まさか。私は茶々良洞窟のヌシと組んでいるのです。だからこの触角が生えている、と言うわけです」
(触角だったんだ……それ)
カヂは妖魔の支配下に置かれると身体に異変が起きるという。彼は無性別になり、グー子は痣ができた。
「……デメリットしかないよーな」
「まあ、人間としては。咒士としてはエネルギーが増したり、身体能力が上がったり良いこともあるんです」
説明を受け、しかたなく背中を見せる。「どうですか」
「グー子さんと同様……あと」
「ひょあああっ??!」
何か気持ち悪い感覚に飛び上がる。「尻尾が生えています」
「え、え。ちょっと気持ち悪い! 触り続けないでください」
「虎というよりはチャトラの猫ですね、これでは」
「ヤメローッ!!」
手を離してもらうと、短い尻尾が生えていると言われ、中身にいるグイが笑った気がした。
「グッ……」
「今日は茶々良洞窟のヌシと対策を話し合いましょう。ピサロさんに許可をとって」
「?」





