馬耀さまの言うとおり
「いたた……」
目を覚ますと、蔵の中にいた。フカフカの布団の上で頭に氷嚢が乗せられているではないか。
「あれ……」
「起きましたか。ハチスガさんのおかげで妖魔が引っ込んだようで。ハチスガさんにも花丸をあげましたよ」
おっとりとした様子で馬耀が言う。
「グー子は……」
「隣でのびてます。はあ……調子に乗るとすぐダウンしてしまうんですから、困ったものですね」
「うわっ」
隣にはグー子が寝込んでいた。うなされて、たまにブツクサ何かを呟いている。
「キュームさん、貴方はつらいことを自分自身で食べ過ぎたのです。もういいんですよ。私がつらいことを食べてあげますから」
子をあやすように撫でられ、背筋が寒くなる。物理的に殺されそうな……。
「貴方にも貴方という妖魔が住んでいて、つらいことを食べ続けてきた。だからこの世界にこれたのです。ならば今度は私が肩代わりしてあげましょう」
「そうしたら」
「何もつらいことはない。普通の日常が暮らせるのです」
悪魔の囁きにも思えた。が、彼女はいきなり胸部に手を置くと、ズブズブと突き破り中身を引きずり出す。
唐突さに声も出せずにいると、中から奇妙な生き物が握られて現れた。ジタバタと暴れているが、馬耀はそれを丸呑みしてしまう。
「ごちそうさま。これで貴方は何も考えなくていい」
あれは何だったのか? あれを食べたられたら、自分自身はどうなるのか?
分からない。
「……お冷、お持ちしたのですが」
カヂがトレーにやかんとコップを乗せて、蔵に入ってきた。
「ありがとうございます。キュームさんが目を覚ましたので、丁度良かったです」
「よかった。力になれなかったものですから」
「そんなことありませんよ〜〜。勇敢に立ち向かったじゃないですか」





