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村の竜宮城伝説

 ――この世界に未来も過去も「今」もない。

 カヂはそう言う。ならこうして過ごしている時間は何だ?

「昔、この村の寺の近くに竜宮城があったんですよ。それを破壊してしまった者がいて、竜宮城があふれ出してしまった……なんて言い伝えがありましてね」

「竜宮城? 海にある?」

 カヂは何一つ変わらない笑顔で頷いた。

「実はね、日本には海ではない場所にも竜宮城があった伝説がたくさんあるのですよ」

「へー、うーん……」

 浦島太郎は竜宮城で楽しい時間を過ごして帰ると……、そんな話をキュームは絵本で読んだ記憶がある。

「竜宮城の時間が流れていると?」

「なんて、村では信じているヒトもいる訳です」

 不可思議な話だがそれを跳躍しているのだから、納得してしまうのもありだろう。

「伝承の元になった朱塗りの寺があるので見に行くといいですよ。谷部江村(たにぶえむら)の観光地になっておりますし」

 朱塗りの寺。寺が朱色など想像できまい。不思議の国のアリスなら、あり得るか?

 キュームはあやふやに頷いておき、自らの部屋に戻った。相変わらず暑くて過ごしにくい。

「もう今日はずっと部屋にいよう……」

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