↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/61

どこにも行けない魂

「待て。コレは害をなすものじゃないね」

 足蹴りで軽く、飛びかかったバグのみぞおちを蹴り飛ばす。襖に叩きつけられた彼女は咳込んだ。

「クソアマッ!」

「礼儀のなっていない甘ちゃんだ。お前の師匠ならなんと見るか?」

 いきなりそんな問いかけに彼女は目を白黒させる。

「わ、分からないわよ……」

「これは輪廻する前の蛹ね。邪魔するのが邪になる」

「輪廻する? 人って輪廻するの」

 キュームは胡散臭いワードに眉をひそめ、蛹に近づく。このなかに魂が眠っていると?

「実際に輪廻があるとは限らないがね。魂は一旦、纏っていた肉体を溶解させ、どこかへ飛び立つ。キューム、お前も本来なら(・・・・)そうなるはずだったのだ」

 本来なら? とわずかに驚いた瞬間、蛹から美しい蝶が孵り、フワリと羽ばたいたと思ったかと思えば――消えた。

「魂は新しくなり、また死ぬ。そうして再生される」

「知らないわ、そんなの」

 バグは蝶がいなくなったのを目撃してしまったのだ。否定はできない。

「若造は知らなくていい。ましてや現実世界に生きるものには、ね」

 グー子がそういう間に蛹は粉になり、最初から無かったかの如し、居間は夕日が沈んだ冷たい夜に戻っていた。

 視界が明転する。




谷部江村(たにぶえむら)は魂が孵れないものたちの世界な訳」

 ラベンダー荘の中庭で麦茶を飲みつつ静かに呟いた。

「私は……現実世界では死んでる?」

 キュームは膝を抱え、初めての感情に戸惑う。死など怖くないし、意識すらなくなると思った。感情が氾濫してコントロールできずにいる。

「キュームさん」

 大家さんが優しく抱きとめてくれる。余計なことを。

「泣かないでください」

「泣いて……いませんよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。