一貫性のない世界
彼女は自らをバグと名乗った。咒士は隅居において真の名前を晒してはいけないらしい。
ふとラベンダー荘の面々もあだ名で呼びあっているのを思い出す。ならやはり谷部江村は異界なのか。
真名を知られてしまうと相手方の咒士に命を握られてしまう、と。
「令和からきたの。この建物は孤独死した老人のもので、その親戚に頼まれたのよ」
「令和……? 何それ」
(違う世界から来たのかな)
キュームが最後に現実世界にいたのは平成だった。そうして隣にいるグー子も眉をひそめている。
「どうやらワタシたちは違う年代から来たらしいね。世紀末は乗り越えたのか、笑えるね」
「世紀末? 何? 私は平成」
古臭い単語にこちらも違和感を覚える。村の人たちの年代も、バラバラなのだろうか。
「平成? ウソよ、貴方たち過去から来ているの」
バグは顔面蒼白になり、あからさまにうろたえた。「今までそんなことなかった……どうしよう……わ、私、元の世界に戻れずに死ぬの?!」
「フン。それもありかもしれんな」
嘲笑うとグー子は歩き出した。独居老人の家はひたすらに懐かしい茜色で、独りで暮らしていたとは思えない。
「家主の願望が強く影響した空間だ。なるほど納得がいく。本体が幻を見せているのか」
「幻? 前回みたいなのじゃないんだ」
そんな場合もあるのかと感心する。
「人間の深層心理に近い。お前の深層に入り込んだ際に学んだね」
「はあ?! 勝手に何してんの?! サイテー!!」
「キューム、命令だ。本体を探せ」





