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廃病院へ潜入!

「病院は昔、外からやってきた院長が居ましたが壁にへばりついてしまい、廃墟化してしまいましたのです。隣の診療所は院長のご家族がやっているのます」

(壁に……)

 要領を得ない説明だがこの村では何でもありなのだ。

「隣の診療所は壁にへばりついてないンだ」

「はい。フツーに診察してます。おたふく風邪を治してもらうです」

 夜道はあまりにも普通で拍子抜けしてしまう。暑さに負けた蝉の合唱とオケラの音、そうしてサワサワと草木が揺れる様。

 月のせいで影が歪に横ばいに転がっている。

 ゾンビとは。大家の脅し文句だったのだろうか。

「そろそろつきますのです〜〜。鍵は開いているのです」

「ありがとう。じゃあ、ここからは独りで――」

「大丈夫。車尾もついてくるのです」

 小学生を危険地帯へ潜り込ませるのはあまり……とはおもったが、この様子だとただの廃墟化した建物であろう。

「離れないでね」

 なるべく優しい忠告をして、キュームは大仰な病院の入り口のドアを押した。





 中はホコリ臭いものの、ふしぎとそこまで荒れていなかった。不良やらがこないせいか、忽然と人が消えてしまったみたいだ。

「……懐中電灯、持ってくればよかった」

「あるのです」

「あ、ありがとう」

 なんと用意がいい子供だ、いや、夜道の散歩の必需品であるから違和感はないが……。

 懐中電灯で照らし、院内に薬局やコンビニが併設されているのを地図で確認する。ならば薬が……。

 しかしおかしいのが全て地下にあるのだ。薬局も。地下というと――霊安室を彷彿させやすい。

「案内しますです」

「あっ、待ってよ」

 またまた勝手に歩き出した子供の後を追う形になる。埃が舞い、ライトの邪魔をする。なつかしい。

 良くこうやって現実世界でも廃墟化した民家へ不法侵入したものだ。

 階段を降りながら地下の空気がやけに重たく感じ、嫌な予感がした。視界の隅に「再霊安室」とあったからだ。

 ――再霊安室?

 どういう意味合いが込められているのか。

「お姉さんは薬局、見てくるね」

 早足で薬局の扉を開ける。そうして整列され綺麗に整った棚の片っ端から風呂敷型にした結んだブランケットに投げ込んだ。なぜだか注射のものもある。ならば着付け薬になりうるだろうか?

 急いでいると、ビーチサンダルの音がして車尾が笑顔で小瓶を持ってきた。

「記念に光る粉、あげるです」

「それは――」

「れんとげんしつの、器材からとったです」

「なんで……照射装置の、放射」

 言いかけた途端、無邪気な笑顔が悪意の塊に変わる。「悪い子には(・・・・・)イタズラしたくなりましたです。ざーんねんです。怯えてくれないのですね、キューム」

 歯茎が見えるほどの歪な笑み。

 霊安室からガタガタと複数の何かが動く音がして、キュームは咄嗟に廊下に飛び出した。病院服を着た群団……は顔が裂けている。そんな人々と巨大なナニカ(・・・)が現れてきている。

 食われる。

「クソっ!!」

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