井戸とキツネと
「開☆門!」
きたのは井戸の中で、這い出るしかなかった。縄があったからまだ良かったがどんなランダム性なのだ。
土埃だらけになりながらも、また違和感のある世界にやってきたのを察知する。
野鳥のさえずりも人の気配もしない、風流な庭先。崩れた祠。
弱りきった狐らしき生き物が祠の前に倒れ伏している――あれは妖魔か?
「稲荷の使いをやりやがったね」
「稲荷? 稲荷神社の?」
稲荷神社というと狐のイメージが付きまとうが……本当に居るとは。確か神さまの使いだと世間一般では言われていたはず。
(神さまなんて信じてないけど)
内心毒づきながらも狐に歩み寄ろうとしたが、何かに阻まれた。毒々しいマキビシだった。
「わ! なにこれッ! 欲しい!」
「触るな! 咒いがかかっているね。……姿を表せ、不届き者の咒士め」
採取しようとした矢先、目の前にラベンダー荘にはいなそうな清潔そうな少女が出てきた。右手には護符を持ち、数珠を握りしめている。
「この屋敷神は家主を祟ったのよ? 成敗されて当たり前じゃない」
「家主は屋敷神を雑に扱ったのではないか。狐の祟りは怖いぞ、小娘」
グー子はトーンを落とした声色でけん制した。それに若い咒士は一瞬怖じ気ついたが、フンと鼻を鳴らす。
「すぐにやられる神使が?」
「命令だ。あの咒士の首をはねろ」
「え――」
キュームはギョッとしたが、脳内で火花が散った。身体が勝手に動き出し、掌から短剣を召喚する。だが――
「躊躇するな! それでもキュームか!」
背後から罵倒され怒りが湧く。息を吸い、回路をイメージした。グー子と己を結ぶ回路。
その感触と先ほどの負のエネルギーを接続させる。ノイズがかった短剣が光り輝き、幼き咒士の首をいとも容易くはねた。
冷たい血を浴びて、我に返る。目の前にいた人物はいない。
「……っ、やるじゃないか。まさかこちらにも負荷がかかるとは」
汗を拭い、グー子はズカズカと神使へ歩み寄る。「命拾いしたいならワタシに使われてみるか」
フッと狐がシニカルに笑った気がしたが、いつものように三つ編みへ食われた。依頼は終わったのだろう。
「あのさ」
「あの咒士は死んだ訳じゃない。現実世界へ弾き出されただけだ」
「……え、現実世界? なら私も負ければ」
「それはないね。死ぬだけね」
「ンガー!!!」
キュームはほぼ屋敷神とかなんも理解してないで動いてそう。





