下僕《生き人形》は主のために、主は下僕のために。
暑さを体感しなくなるのは楽なことだが、食事もしなくて良くなるとグー子は言っていた。それはやはり心停止している証なのではなかろうか。
己から生の感覚がなくなるのはあまり怖くなかったが、突きつけられると癪なものがあった。
「キュームさん、グー子とタイミングを合わせるんです。グー子もキュームさんに息を合わせないと上手くシンクロシティーできませんよ」
「無職に言われたくないね。下僕になぜ付き添わなきゃならんのだ」
(そういうとこだよ、そういうの)
「聞こえてるね」
釘を刺され、ムスッとするがピサロはわずかに真剣さを含んだ声色で説明してくれた。
――下僕は主のために、主は下僕のために。
そのような文言がかつてあったという。今は禁術とされ、咒士は下僕を作っただけで物理的に打ち首獄門らしい。
お互い、息を合わせ回路を通じて魂を操る。そうすると凄まじい能力を発揮できるいわゆる「切り札」、「ジャイアントキラー」な存在だった。
それがあると治安やバランサーを崩すので、禁止にされた歴史があるのだとか。
「……お前にわざと歩幅を合わせろと?」
「つよい力を得たいならそうなんじゃないの」
「グー子。その切り札を使えるのはごく一部の人間しかいませんわ。例えば、大妖魔殺しの柳沢という咒士でしてよ」
グー子は知らないのか片眉を上げただけだった。
「その大妖魔殺しのヤナギサワさんはそんなにすごかったの?」
「はい。生き人形を使い、様々な大妖魔と呼ばれる化け物を退治し、咒士たちから憧れの眼差しを向けられていました。ですが……やはり生き人形には危険性があります。技を使えば使うほどに精神融合が起こりやすく……しかし、それ以前に柳沢は忽然と姿を消してしまったのです」
明治時代、忽然と姿を消した伝説の咒士は今も消息不明だという。
「……グー子、危険な禁術に手を出すのはお止めなさい」
「ふんだ。お前に言われるとさらに止めたくなくなるわい」
「グー子!」
ピサロは元々凄腕の咒士でした。





