麦茶はうまい
「起きましたか。キュームさん」
目を覚ますと、ラベンダー荘の中庭にいた。絨毯が敷かれ、頭に氷が乗せられている。
「あれ……私は、夢を見たんですか」
「お見事でしたよ。グイを抑え込める逸材なんて、なかなかいませんから」
「現実っ」
「グー子は今しがた買い物に行っていますから、ご安心を」
(えええ、逆に大家さんがこわいんだけど)
相変わらずニコリとした顔で彼女は寄り添っている。グイからとんでもない情報を与えられた後に、2人きりは気まずかった。
しかしグイが嘘を吹き込んできた可能性も捨てきれないのだし。
キュームはとりあえず礼を言った。
「良いんですよ〜。私はキュームさんがアパートに来てくれて、本当に良かったと思っているんです。グー子がああして元気に過ごしてくれるのなら」
「はぁ……」
「自暴自棄以前に廃人だったあのグー子が活き活きしているのが喜ばしいのです。キュームさんと共にがんばってほしい、私はそう願っています」
(廃人……?)
朝方に三つ編みを結いている大家と、彼女がフラッシュバックする。あれは彼女たちの関係性の一面なのではないか。
「はい。麦茶」
「え゛っ」
「毒は入っていませんよ。今年も暑いから倒れているだけで脱水してしまいますもの」
冷たい麦茶を飲むと、久しぶりに懐かしくまともなものを口にした気がする。
「美味しい」
「おかわりはたくさんありますよ」





