模擬
「主体はキューム、で、グイに加勢するなよ? いや、キュームの意識は半分にグイの力のみで敵を倒せるか……やってみたいね」
グー子は夕暮れ時の路上で、無理難題を口にする。
「グイって強いンでしょ? じゃー、グー子さんは八つ裂きにされちゃうんじゃないのー」
「ワタシも無力でないね。戦える術は持得ているのだ」
指先から火の玉を出現させ、彼女はフッとけした。
「ハァ……なんで私が……」
「これから敵、いや、異空に飛ばされたり、敵にやられるかもしれないからね」
「え? なにそのご都合展開」
「ワタシが何で飯食ってると思ってるね」
名刺を投げられ、慌てて受け取る――『霊能力、ビョーキ探し承ります』そんな文字が印字されているではないか。
「この村で? ビョーキ探し?」
「界隈の中での隠語になるね。猫鬼、病鬼などでも読める……とりあえず細々した妖魔を退治してく、まー、めんどくさいな。そのうち分かる」
ラベンダー荘の前では大家とあのヤンキーが物見遊山をしている。
「……よし、キューム、ワタシに集中するね」
「どうやって」
「そうだなぁ、ルールを決めていなかった。指、この人さし指を眺めろ」
「はー、わかりましたよ」
キュームは半信半疑で彼女の人さし指をみつめることにした。子供だましに付き合ってやるつもりで。
しかし意識がぼんやりして辺りの音がサーッと引いていくのを自覚し、内心焦る。だが手足が動かない。
「――さあ、出番が来たか、食いちぎってやろうじゃないか、ニャ」
耳元でグイがせせら笑っている。「大家さんに殺されたくないんだけど」
「あの魔獣に? それはそうだニャぁ……まあ、いい、グー子を八つ裂きにするぐらいなら罪に問われまい、ミャアー」
(魔獣?? え、それって、いや、知らなきゃ良かったことをサラッと言うなーっ!)
脱力感の中で、グー子の声がする。
「命令だ。グイに逆らいながらもワタシに戦いを挑め!」
脳内で火花が散った気がした。身体か勝手に俊敏に動き、まっすぐにグー子へ向かう。
彼女も無抵抗ではない。三つ編みから火の玉を召喚すると、呪文を唱えた。
「あんたりをん、そくめつそく、びらりやびらり、そくめつめい、ざんざんきめい――」
『そんな物効かぬニャ!!』
グイが嘲笑う。今の呪文が何だったのか気になるが、火の玉は円を書くとグー子の指に集まり、レーザー光線を放ってきた。
(そんなのあり?! とりあえずヤバそうな大家さんに殺められたくねええ!!)
喧嘩とカウントされないよう、キュームはイメージとしてグイの尻尾を鷲掴みした。
「ギャア!」
「デカ猫お〜〜!! 言うこと聞けーっ!」
「いだいっ! いだいニャ!!」
ジタバタする――イメージではあるが――グイの尻尾を引っ張り、ビームにわざとぶつかった。
「いだああああっ!」
書きたいシーンだけめちゃ増える。





