傀儡じゃない
「はー、なかなか上手く動かせないなー」
「当たり前でしょっ! 生きてるんだから!」
キュームは良く分からない呪いのせいで、グー子に体を操られていた。体幹のないゾンビのような動きしかできない――というか、動かない。
「いや、お前は生きてないね。心停止状態で動いてる。だがオートで今まで動いていただけなのだ」
「な、何よ、それーっ!」
殴りたい気分だった。動かない身体でありながら、グー子を精一杯殴るイメージをした瞬間……ヤツは後ろへつんのめる。
「いきなりエネルギーを最大出力でぶつけるな!」
「は? 訳わかんないし」
陰気くさい女は頭を抑えて、顔をしかめている。どうやら殴れた訳ではなさそうだが……。
「グー子、彼女は傀儡ではありませんからね。息を合わせないと」
大家さんが木陰で紅茶を優雅に飲みながら、そんな事を言う。
「傀儡?」
「傀儡は意思のないゾンビみたいなものです。貴方は意識がある、そうしてグー子との回線を介して動いているのです」
「へー」
(いつでも遠隔で殴れるのか。すごっ)
グー子はため息をつくと操るのをやめて、オートに切り替えたらしい。
「かなり力を使ったね。休む」
そう言うなりヤツは中庭の木陰にドカリと座り込んだ。
「キュームさん、傀儡やゾンビには気をつけてくださいね。彼らは見境ないですから」
大家さんが温かい紅茶を差し出してくる。臭いからして何かが混ぜられているのをキュームは察した。
「ストレスがとれますよ」
仕方なく口にして飲み込むと、世界が一瞬で虹色になった。





