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住むためのルール

 カヂ?

 セールスマンはニコニコと歩幅を進めてくる。真意の伺えなさに、思わず構えた。

「なに? 殺る気?」

「何もしませんよ。ラベンダー荘では住人同士の争いや恋愛、または金銭に対するトラブルは禁じられておりまして。キュームさんへ危害を加えません」

「そうなんだ」

 なんだか合宿所みたいな建物である。見た所、あと数名は住んでいそうだ。

「じゃあ、引っ越しのあいさつも?」

「そうですね。引っ越しのあいさつは個人の自由ですが、隣人とのトラブルを招きかねないので」

 確かに現代社会でも危ぶまれているので、内心ホッとした。(良かった。菓子折りのお金とかなかったし)

「それにギャアギャアうるさい三つ編みでキュームさんの存在は噂になっていますからね」

「はは……」

 カヂは社員証を流れるような手つきで手中に収めると、では、といなくなってしまった。

「そういえば少しカヂさんに似ていたような……」

 幅です、というのはカヂさんなのだろうか。いや、何だか違う気もする。

 あの人は、早く逃げろ、と催促するその誰かを知っている――そんな雰囲気はした。

 キュームの前の住人は……。

「ここから逃げたら死、とかないよね」

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