17/28
住むためのルール
カヂ?
セールスマンはニコニコと歩幅を進めてくる。真意の伺えなさに、思わず構えた。
「なに? 殺る気?」
「何もしませんよ。ラベンダー荘では住人同士の争いや恋愛、または金銭に対するトラブルは禁じられておりまして。キュームさんへ危害を加えません」
「そうなんだ」
なんだか合宿所みたいな建物である。見た所、あと数名は住んでいそうだ。
「じゃあ、引っ越しのあいさつも?」
「そうですね。引っ越しのあいさつは個人の自由ですが、隣人とのトラブルを招きかねないので」
確かに現代社会でも危ぶまれているので、内心ホッとした。(良かった。菓子折りのお金とかなかったし)
「それにギャアギャアうるさい三つ編みでキュームさんの存在は噂になっていますからね」
「はは……」
カヂは社員証を流れるような手つきで手中に収めると、では、といなくなってしまった。
「そういえば少しカヂさんに似ていたような……」
幅です、というのはカヂさんなのだろうか。いや、何だか違う気もする。
あの人は、早く逃げろ、と催促するその誰かを知っている――そんな雰囲気はした。
キュームの前の住人は……。
「ここから逃げたら死、とかないよね」





