ラベンダー荘の朝
「……あれ」
結局、一睡もできずフラフラとラベンダー荘の中庭に出ようと階段を降りようとした。
中庭には謎の木々が手入れされ、異国情緒のある仕組みになっている。部屋より庭へ労力を向けたかのような。
その中で大家さんとグー子が椅子に座り、あの長い三つ編みを――髪を編み込んでいた。
かなり長くのばしたものだ。(普通の髪なんだ、あれ)
薄明るい時間帯に静かな雰囲気。
邪魔してはならない気がして、キュームは反対側の幅が向かった方へ忍び足で方向転換した。
「ん?」
角に消火器が置かれている。その後ろに何かが落ちていた。
気になり、拾うと社員証だった。中肉中背の男性が映っていて、不意に脳裏に「幅です」が蘇る。何やら警備会社に勤めていたらしく、年代も自分自身より昔のもの。
幅って、なんだ。
気味が悪いので元の場所に置いておき、壁に「にげろ、いっこくもはやく」と小さく書かれているのを見て――さすがにゾワッとした。
この男性は何を知ったのだろう。
「おや、こんなもの、捨ててしまえばいいのに」
背後から声がして振り返ると、ウサギの耳がついた怪しげな人物が佇んでいた。
「あの大家も本当に意地が悪い」
営業スマイルを貼り付けた――セールスマン風の彼? 彼女? はキュームを値踏みする。
「貴方がキューム。よろしくお願いします、私は可知といいます」





