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六話

翌日。

いつものように朝からグズるセリーナさんを半ば強制的に授業に行かせ、マリーさんと部屋の掃除をしていると来客があった。


「あ、貴女は」


ちょうど扉の近くにいたので私が応対に出ると、そこにいたのは見覚えのある顔の使用人。

サーシャにセリーナさんからの招待状を届けた時に応対してくれた侍女さんだ。


「サーシャ様にお仕えしている侍女のアイラと申します。

こちらにミリさんはいらっしゃいますでしょうか?」


アイラと名乗った女性は、藍色の髪に黒い瞳。

年齢は私より少し上でマリーさんと同じくらいだろうか。

髪はきちっと纏められていて、見るからに仕事の出来る女性って感じだけど、無表情でちょっと怖そう。


「私がミリです。ご用件はなんでしょうか?」


予想はついてるけど、一応聞いてみる。


「サーシャ様からミリさんへの招待状をお届けに参りました。

お困りになるのではないかと思うのですが、サーシャ様がどうしてもと仰っるので、お受け取り頂けますか?」


「あ、その件でしたらセリーナ様からお許しを頂いているので大丈夫です。

ありがたく受け取らせて頂きますね」


やっぱりあちらでも困ってたんだなぁ。

まぁ、普通ならまず有り得ない事だし、気持ちはすごく良くわかる。


「まぁ、そうなのですね。それはありがとうございます」


私の返答に驚いたように少し目を見張った後、にっこりと微笑むアイラさん。

すると、ちょっと怖そうに見えた表情が一気に和らぎ、とても穏やかになる。


こんな優しそうに笑ってくれる人が近くにいるんだ。

アイラさんの表情からサーシャの事を大切に思っているのが感じられ、胸の奥が暖かくなるのを感じた。


帰って行くアイラさんを見送った後、サーシャからの招待状を改めて見てみる。


品の良い封筒に、フェルチェ伯爵家の紋章で封蝋されたそれは、ぱっと見ただけだと貴族間で交わされる正式な書状と遜色ない。

簡単な形式で良かったのにと思いながらも、私に対してでもしっかりと礼を尽くしてくれるサーシャやその使用人の皆様に頭が下がる。


だけど、そんな思いは中の手紙を目にした瞬間消え去った。

こ、これは……。



「マ、マリーさん!どうしましょう!?」


「何?どうしたの?」


私の慌てた声に、奥の寝室を掃除していたマリーさんがひょこっと顔を出す。


「これ……。サーシャからの招待状なんですけど、見てみてください……」


私が手渡した招待状を見て、マリーさんも少し目を見開く。


「あら、これは……。正式な形式の招待状ね」


この世界の招待状には2種類ある。

1つは非公式な形式のもので、これは招待状の送り主と招待される側の完全にプライベートなもの。

その為、お茶会だろうが何だろうが、特にドレスコードもない簡易的なものになる。

もう1つが公式な形式のもので、家門からの正式な招待を意味している。

その為、ドレスコードはばっちりあるし、後日ではあるが招待を受けたお礼の贈り物なども必要になる。


ちなみに、以前セリーナさんがサーシャに送ったのは前者の非公式な形式のものだ。


今回サーシャから来たのは正式な形式の招待状なので、フェルチェ伯爵家から私への招待状という事になる。

そして、送り主であるサーシャがフェルチェ伯爵家を代表してお茶会を開くということに。


まぁ、サーシャは伯爵令嬢なんだし、伯爵家を代表しても問題はないんだろう。

問題なのは私だ。

貴族家のドレスコードに合う服……要するにドレスね。そんなもの持ってないし、私の財産で買える贈り物なんか伯爵家に送れる訳もない……。

サーシャ何してくれてるん?


「これは、サーシャ様のミリへの愛情が暴走しちゃった感じかしらね?」


所詮他人事なのか。マリーさんは随分と楽しそうにしている。

だけど、私は何も楽しくない。


「いや、どうしたらいいんですかこれ?」


「気楽に来てねって書いてあるし、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」


招待状を見つつ、のほほんとした口調で言うマリーさん。

確かに、そんなような事は書いてあるけど、いやでもね?

私が持ってる服は、以前マリーさんに選んでもらったもので、それなりに質もいい物ではあるけど、そうは言ってもやはり庶民の服だ。

もちろんドレスなんかじゃないし、さすがにそれで行く訳には……。


「そんなに気になるなら、お嬢様に貸して頂けないか聞いてみたら?

返礼品も何とかしてくれると思うし」


これまたのほほんとした口調でとんでもない事を言い出すマリーさん。

セリーナさんなら、確かに相応しい服もたくさんあるし、返礼品だって何の問題もなく用意出来る。

それはわかる。


「セリーナさんにご迷惑をかける訳には」


今回の招待状は私個人に来たんだ。ラズウェイ公爵家にでもセリーナさんにでもない。

それなのにセリーナさんに頼るのはどうかと思うんだ。


「迷惑だなんて思われないと思うけど?」


何を言ってるんだこの子は?とマリーさんの顔に書いてある。

だけど、何を言ってるんですかとは私が言いたい。


「とにかく!ちょっとどうする考えるんで、セリーナさんには言わないでくださいね!?」


どうにもならなそうなら、当日までにサーシャに言わないと……。

てか、絶対どうにもならないよなぁ、これ……。

はぁ……。


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