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四話

そして翌日。


いつものように、午前中はセリーナさんの話し相手という名の愚痴を聞くお役目を終え、マリーさんと買い物へ行く為に屋敷の玄関前で待機していたのだが。


「……ミリ。その格好で行くの?」


私を見るマリーさんの顔が引き攣っている。


「何かおかしいですか?」


何でだろうと思いつつ、自分の格好を見下ろしてみる。

今私が着ているのは、公爵家の使用人に支給されるお仕着せ。

まぁ、何の飾り気もない紺色のワンピースだ。

これにエプロンを付ければ、お馴染みのメイドさんの格好になる。


「おかしいってことはないけど……」


そう言うマリーさんは、淡い水色のワンピース姿。

うん、可愛い。


「私これしか服持ってないんですよ。このまま出掛けたらまずいですか?」


屋敷に来たばかりの頃にセリーナさんから借りていた服はすぐに力づくで返してしまったし、お仕着せ以外だと夜着しか持ってない。


「まずくはないわ。

そっか……。まだ服買ってなかったのね。

気付かなくてごめんね?」


何かすごく可哀想な子を見る目で見られている。

お仕着せは確かに地味かも知れないけど、動きやすいし、公爵家の支給品だけあって、生地も良いものを使っている。

日本にいた時から、そんなにお洒落に気を使うタイプでもなかったから、これがあればいいかなくらいに思ってたんだけど、どうやらそうではなかったようだ。


「よし、じゃあ先にミリの服買いに行きましょうか」


「え!?いえ、大丈夫ですから!」


そう言うやいなや玄関を開けて出て行くマリーさんを慌てて追い掛ける。

今日はセリーナさんからの買い物を頼まれて出掛ける訳だから、いくらのんびり行って来ていいと言われてるとはいえ、関係ない買い物してたらまずいのでは……。


「良くないでしょ!?

ミリもお年頃なんだから!」


「お?何か騒がしいな。どうした?」


珍しくお怒り気味のマリーさんにどうしようかと思っていると、外にいた男性から声をかけられた。

あれ?この人は確か……。


「あ、ジャック。待たせた?

それがね、ミリが……」


マリーさんはがさっきまでの会話を暴露している男性は、この世界に来た直後、森で最初に私に声をかけてきた人だ。

確か、公爵家に所属する騎士様でセリーナさんの護衛騎士も務めてる方だったはず。


年齢は20代後半くらいで、茶色の髪を短く切り揃えている。

普段はキリッとしている髪と同じ色の瞳も、今日はお休みなのか、穏やかな光をたたえている。


私はセリーナさんが王太子妃教育に出掛けるのを見送る時に顔を合わせるくらいだからそれほど親しくはないが、長く屋敷に務めているマリーさんとは結構親しそうな雰囲気だ。


「あぁ、そういう事か。

俺は女性の服に関しては詳しくないけど、マリーの言うことは聞いておいた方がいいぞ?

逆らうとものっすごく怖いからな」


そう言って笑いながら私の頭をぽんぽんしているジャックさん。

子供扱いされているようで、恥ずかしいやらなんやら……。


「余計なこと言ってないで早く行くわよ?」


「あれ?ジャックさんも一緒に行くんですか?」


ぽんぽんし続ける手から抜け出し、先に歩き出すマリーさんを追い掛ける。

てっきりマリーさんと2人で行くものだと思ってたけど。


「今日は非番だったからな。護衛も兼ねて一緒に行くことにしたんだ」


しっかり守ってやるからなーと言いながら、また頭をぽんぽんしようとしてくる。

護衛はありがたいけど、頭ぽんぽんは恥ずかしいから辞めて欲しい……。


ジャックさんの手から逃れようとしていると、マリーさんがその手をバシッと叩いて止めてくれた。


「ほら、ミリが嫌がってるでしょ?

女性の髪に気軽に触ろうとするんじゃないわよ」


「いやー、ちょうどいい高さにあるからつい?」


「ミリも嫌なら怒っていいからね?」


まぁ、私としては辞めて欲しいとは思うけど、怒るほどではないから曖昧に笑って誤魔化しておくことにした。

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