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退学勧告②

今日二度目の更新なので、前の話からどうぞー!


 驚きすぎてなんにも言葉にならなかった。それでも絞り出すようにあたしはなんとか声に出した。ニーナがびくっと体を震わせた。


「た、退学?」

「うむ」


 グランゼフ学園長は目を閉じて両手を組んだまま頷いた。え、ええ? あ、あれだけ苦労したのに?


「そ、そんなのってないよ! どうしてそうなるの!?」


 気が付いたら叫んでた。だってあたしだけの力で入ったわけじゃない。いきなり退学なんて言われても受けるわけにはいかない。グランゼフ学長は片目を開いてちらっと見る。


「なんか勘違いしているな。退学しろなんて言っておらぬ。外からマオを退学させろと言われているんだ」


 ますます意味が分からない……。グランゼフ学園長は書類の束から一つ取り出して読んだ。それは一通の書状だった。


「えーなになに。貴校における入学式に出席した折、登壇をした女生徒は甚だ品位に欠ける演説を行い……ええいめんどくさい。最後の方にはな『娘を預ける身としては学園長に善処されることを求めたい』という脅し文句が書いているんじゃ」


 グランゼフ学園長は読み終わった後に片手でその書状をぷらぷらと揺らす。


「ワシも学園長としてはいるがこの学校はギルドや貴族の出資によって成り立っている。いわば雇われよ。その中でワシよりも金を出しているお偉いさんの言葉を尊重しなければならないことがあるということだ。大切にせねばならぬ」


 そういうと彼は書状をぽいと捨てた。床の絨毯に落ちる。


「と、いうことでなマオ」


 グランゼフ学園長の目があたしを見る。力強いとしか言いようがない。ぎらぎらと光る眼光。でもあたしはまっすぐに見返す。


「どうする?」

「……さっき用事があるって呼んだってことはさ。あたしに何か言いたいことがあったんだよね。ただ退学をしろっていうことじゃなくて」

「無論むろん」


 にやあと面白そうに顔をゆがめるグランゼフ学園長。負け時とあたしも何となく笑ってみる。


「ふっふふ。気にくわんじゃろう? 外野からとやかく圧力をかけてくるような輩はのう。何を隠そうワシもじゃ」

「うん!」

「いー返事じゃ。がーはっはっはっ」

「あはははは!」


 二人で笑う。


「な、なにを笑っているんだ?」


 困惑した顔でニーナが言うからなんとなくおかしくなってさらに学園長とあたしで笑ってしまう。ニーナは身を引いてる。い、いやひかなくていいじゃん!


「マオよ。さっきのカス……いやお偉いさんからの書状によるとなお前の能力に強い疑義を感じているということじゃ。建前ではな、じゃから力を示せ」

「力……?」

「そうじゃ。ほれ、これをやろう」


 学園長が一枚に紙を渡してくる。そこには「ポーラ」先生もいる。これからの授業を受ける先生が一覧だった。


「こいつらは選りすぐりの変人どもじゃからこいつらに認められるように授業をうけろ。それにな……少なくともBランク程度の依頼をどこかで達成するんじゃ。授業は半年区切り……その間に明確に実績を作れ。その間はワシが守ってやる、そしてこの条件を達成した後は必ず守ってやる」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 ニーナが言った。


「学園長はご存じないと思いますが、このポーラ先生とはマオは少なからず因縁があります。あの人に認められないと退学なんて……そんなのは理不尽です」

「ニーナ……」

「お前もお前だ。するすると話を受けるな! そもそも誰が文句を言っているかすらわからないじゃないか。せめて誰がこいつのことを言っているんですか!? だってこの学校はいろんなところから人を集めるから最初から力を持っている人間ばかりになるとは限らないはずです!」


 いつの間にかニーナが立ち上がっていた。グランゼフ学園長は「ほう」と言って。それから、


「秘密じゃ」

「そんな……! そんな理不尽」

「まあまあ聞けニーナ」

「ニーナ!???」

「ワシはな。この学園で起きていることはできるだけ知ろうとしている。それでいうのじゃが、この書状を送ってきたものの名前を明かすのはまだ時期尚早というもの。……マオ、知りたければ先の条件を飲め。……ポーラとの因縁も表面上は知っておる。知ったうえで、腹の中に入ってこいと言ってる」


 グランゼフ学園長は歯を見せて笑った。あたしも立つ。両手を組んで言ってやる。


「わかった! ……どこの誰だか知らないけどマオ様にいちゃもんをつけたことを後悔させてやる!」

「よーしその意気じゃ!! がーはっはっはっ!!!……お、それとまだお菓子があるが食べるか?」

「食べる!」


 ☆


「と、ということがあってね」


 すごい怖い顔でラナが見下ろしている。一通り話おわったときラナは逆ににこにこし始めた。

 

「マオさん。あのですね」


 マオさんっていうの怖い、


「私が思っていたことよりも数倍ややこしいことになっているのどういうことなんですか?」


 敬語やめて! ラナが笑顔なのに全然目が笑ってない。ラナはその場でぐるぐる歩き回り始める。「あー」とか「うー」とか唸っている。


「なんなの……トラブルを生み出す根源なの? ……そもそも入学式の挨拶で有力者に目を付けられるって何?? 荒事だってやる冒険者を育てる学園なんだから……そんくらい大目に見なさいよ」


 一人でラナがつぶやきながら歩く。あたしとニーナはそぉっと足を崩そうとするとラナが磁路って見てきた。


「だーれが足を崩していいっていったの? あ、ニーナはわかったからいいわ」

「……」


 ニーナははーと息を吐いて足を崩すとその場に崩れた。足がしびれているらしい。正座というこの様式はどこかの国の座り方らしいけど、こんなんで座ってたら膝とか痛めるよ!


「それとマオ」

「は、はい」

「クッキー没収」

「ひえ!?」


 まって!! まってラナ!


「教会に持って行って孤児とかにあげるから」

「そ、そんなー」

「ていうか食い意地張りすぎ……いやそんなことどうでもいいわ。授業が始まったらまーたいろんなことに巻き込まれることに……」


 そこでラナがふっと真顔になった。片手で目元を覆って何か考え込んでいる。


「ラナ?」

「あ、いや、何でもないわよ。あーつかれた。話を聞いてもどうしようもないから疲れるだけだったわ。とにかく今日は外に軽く食べに行って……寝よう。もういいわよ。マオ立っても」

「やった。わ、いったぁ」


 足が、あしがぁ。何この座り方、絶対おかしいよ。


「ほら、おいていくわよ。ニーナも食べに行くでしょ……あんたも同じ授業を受けるなんてさぁ。いい奴っていうか。あー、むかつく」


 ラナは倒れこんでいるあたしを放置して部屋から出ていった。



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