表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

リカ、ブラックジョークで窮地に追い込まれる???



 呼吸を整える。

 そして軽く準備運動。



 ふーーーーっ。



 ……。

 よし。


「配達ならフロントに。新聞の契約も宗教の勧誘も、料理がヘタ過ぎる“美少女”も、今は結構だ。で、オタクの用件は?」

 

 と、ピタリと急に止まる部屋のベル。不気味な静寂が訪れる。

 壁に身を寄せて、ジッと耳を澄ませる。

 ドアの向こうで微かな気配。足音を殺し、注意深く慎重に、

 こちらの動向を窺っているのが分かる。



 ――しばらく、そのまま時は流れ、スッ……と、

 ドアの下に白い厚紙が差し込まれる。



「先日は部下が失礼しました。それは“お詫び”としてお納めください」


 身を屈め、差し込まれた“モノ”を素早く回収。

 丁寧に封をされた便箋の中に、

 大手銀行のロゴが刻印された小切手が入っていた。



 その気になる金額は……金貨でなんと“一千枚”。



「ご確認いただけましたか?」


 たまらなくイヤな予感が一瞬の内に全身を駆け巡る。

 ドアの向こうの相手の、ビジネスライクな口調が、

 俺の危険センサーをさらに激しく煽り立てる。



「“コイツ”は返す。帰って親分に伝えな」

「まさか……ご納得できませんか?」

「そッちの都合が悪いってンなら、好きに使っていいぜ。串焼きがオイシイ小料理屋なら、“このボロアパートを出てすぐ”だ。ちなみに営業は〈夜〉からだ。開店時間までは、まだまだあるから少し運動をして」



 おっと。

 ちょくちょく宣伝を挟む俺。別にカネをもらってるワケじゃない。

 タダの親切心だ。



「――とにかく。受け取るようなことを俺はしてない。もしも誤解があったようなら、代わりに謝っておいてくれ。以上、解散」

「そうもいかないのです。お願いです、このドアを開けてもらえませんか? 直接会って、リカオンさんとオハナシしたいのです」


 そして隣人が壁をドン! 

 思いっきりコブシを叩き付ける音が俺の部屋を震わせる。


 隣人は、かなりお怒りのご様子。


「なあ、そこに居られるとホント迷惑なんだ。このボロアパートは壁が薄くて、となりの部屋の会話が筒抜けになる。これ以上は、俺のイメージが大幅ダウンするだろ。その責任を、どう取ってくれるんだ?」


 しん、とする。

 また訪れる不気味な静寂。

 俺の洗練された自虐的なブラックジョークは、

 相手を黙らせる効果があるらしい。


 さて冗談はこの辺で。

 ヤツらの強行突入に備えて、まずはバリケードを――


「出せ」


 お気に入りのソファーベットを引っ張り出して、ドアの前に素早く設置。

 そして俺の相棒である〈携帯端末(パーソナルハンド)〉を

 サイドテーブルから手繰り寄せ、それから武器になるモノを――


 ガタン! バタン!


 なにかを蹴破る物々しい音が、俺の部屋を両サイドから震わせる。

 それは順番に、この階層に小気味良く波及していって、

 男どもの情けない悲鳴がアパート全体にこだまする。



 ひやあ――とか、ほわあ――とか。

 さらに連れ込んだオンナの悲鳴も入り混じって、

 もう廊下が大変なことに……。


「これでオハナシできますか、リカオンさん? どうかお願いします!」


 冗談じゃない。ヤツらは、いつだってマジだ。

 ユーモアセンスの欠片もない。



 俺は諦めてソファーベットを脇に退けると、

 部屋のドアをイヤイヤ開いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ