リカ、名前を“メッチャ”呼ばれる!!
「リカオンさん」
欲望のジャングル地帯を探検する冒険家で大混雑する中、
俺を呼ぶヤツが居る。
「リカオンさん!」
空耳ではないようだ。
ほんの少しだけ歩幅を緩めて振り返ると、
真後ろに居た子供とバッチリ目が合う。
まるで欲望から遠ざけるように
愛娘を抱っこするヤンチャそうな若いパパは、
急に速度を落とした俺にガンを飛ばす。
「――リカオンさん! こっちこっち! こっちです!」
ありったけの声で俺の名前を叫んで、
元気に飛び跳ねる変なヤツが向こうに居た。
「“オハナシ”しませんか! “お仕事”の! ねえリカオンさん!」
アイツを今すぐ消してくれる誰かが居たら、
俺は惜しげもなく金貨をバラ撒くだろう。進行方向を戻し、
知らないフリを決め込む。
しかし、それでもヤツの、広告費ゼロの迷惑な宣伝は続いた。
殺してやりたくなった。
万単位の人間を、まるで伝説のダイジャのように腹に収め続ける
【屋台街】を途中で抜け、
こちらはスペースに余裕のある
【宿舎前大広場】にたまらず退避する。
迷惑男の声は聞こえない。
ホッと息をついて、目の前に広がった歓声に注意を向ける。
ドラム缶から盛大に昇る巨大な火柱の傍で、
大道芸でメシを食うプロたちが自慢の芸を
広場のあちこちで披露していた。
その中で俺の視線は、天高く噴き上がっては散る美しい火花を
全身に浴びながら踊り狂う、異質な存在に引き寄せられる。
引き締まった肉体美を見せつける半裸の男たち――
その中央に鎮座する、古めかしい戦士の格好をした美女――
俺を含め、この瞬間にしか味わえない
強烈なファンタジーに包まれた観客たちは、
彼らによって描き出される時間旅行の物語に、我を忘れて没頭した。
この降り注ぐような“星空”の下、
まるで〈地上〉に居た頃のように“地底人”たちは、
きっと不思議な懐かしさを分かち合ったことだろう。
「リカオンさん」
やれやれ……。
日々こうして俺の神経は摩耗していくのだ。生きるのは大変だ。




