表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

リカ、好感度はキニシナーイ!!

「凄いなあ、本物だ」

「サッサと用件を言え。アルコールがキレそうなんだ。さっきからずっと、イライラしてしょうがねえ」

「やだなあ。怒ってるんですか、“センパイ”?」



 美的感覚を疑わせる、

 ピッチピチのライダースーツで現れたストーカーは、

 俺をジッと見つめたまま自然体で構えている。



 なんとなくイヤなカンジ……。

 人懐っこい笑みを絶やさず、常に柔らかな物腰で、

 女性受けする綺麗なモデル顔と相まって、

 一見すると非の打ちどころのない『超』好青年だが、

 どうも雰囲気がカタギじゃない。



 ピリリと肌を刺すような緊張感が、この一帯に漂った――



「そんなに警戒しないでください。リカオンさんを敵に回すつもり、ありませんから」



 明らかに浮きまくっているヤツだが、逆に“有り”かもしれない。

 【商業地区・六番街(グリッドストリート)】は映画やドラマのロケ地でもある。

 撮影を抜けてきたイケメン俳優なら、

 この統一感のなさは許されるはず。



「でも驚きました。だって実際に僕の前に“居る”んだから。野生のオオカミ(ワイルドドック)って、ホントに実在したんですよね?」

「用件を言え」



 食えないヤロウだ。表情がミリ単位も変わらない。



「どこからだ」

「え? なんですか、リカオンさん?」

「どこから見てた、“誰”の命令で俺を監視する」

「あなたのファンですよ、リカオンさん……って、ジョークを言って許される状況じゃない、か」



「二度と名前を口にするな。俺は安くない」



 初めて素顔がお目見えする。

 だがイケメンの事実は変わらない。



 ますますムカつく。



「“大佐”がお会いしたいそうです。ご同行いただけますか?」

「おめでたいヤロウだ。ギャング映画の見過ぎで思考力の明らかな低下が見られる。それに加えて、相も変わらずダサい階級で呼び合う、そのセンスの古さ……

 五秒やる。数える間に消えな」


「さすが“生きる伝説”。〈ユニオン〉を震え上がらせた野生のオオカミ(ワイルドドック)殺し屋(エース)――『なんでも屋のリカオン』は、まだまだ健在のようで」



 息を止める。



 踏み込む。

 グッと地面を蹴り出す。


 ――驚きの軽さ。思わず自画自賛する、近年ないバツグンのキレ。

 この最高速度を絶対維持。


 ヤツも瞬時に戦闘モード。意識の切り替えはスムーズ。

 間違いなくヤツも武闘派。



 どう制圧する? 

 なぜか負ける気がしない。気分はハイ↑。

 やっぱりカラダは絶好調。



 低空で頭から突入。それを見て、ヤツの膝が迎撃態勢に入る。

 ――よし、食いついた!




「ゲームオーバーだぜ、イケメン」




 風を切る音が聞こえてきそうなヤツの鋭い膝が、

 最高到達点に来る前にフォールする。思わぬ行動に、

 イメージもボディバランスも崩したヤツに、

 もたれかかるように仲良くそのまま男二人でベッド・イン。

 悩ましげに抵抗するイケメンの左足を最後に“シメ”る。


 人の気配がない寂しい空間に、ボキリと鈍い音が響いた。


「頭の中がおめでたい、テメエの上司に伝えろ」


 苦痛に顔を歪めるイケメン。しかし、すぐに片方の足で立ち上がる

 運動神経バツグンのイケメン。シメた左足は不自然に内側を向いたまま、

 恨めしそうに正常な方の足を見つめている。


「今度コソコソ嗅ぎ回ったら“潰す”」


 先週レンタルしたギャング映画に影響されたかな。

 セリフが我ながらキナ臭い。

 美女にモテモテの凄腕スパイより、

 やっぱり俺は“そッち”がハマり役らしい。



「……コワイな、やっぱり。あなたは恐ろしい人だ。“大佐”には確かに伝えます」

「それからイケメン、おしゃべりは男に嫌われるぜ。口が寂しいならアメ玉でもしゃぶってろ」



 ――イケメンを徹底的にボコる俺。典型的な悪役のポジション。

 ヒガミ度はMAX。


 あとは、そうだ。


 ハードボイル・(ドー)をトコトン突き進むことにした俺は、

 コートのポケットからコインを感覚で数枚掴むと、

 傷ついた若者の足元にバラ撒いた。


「とっとけ。慰謝料だ」


 好感度はキニシナーイ。振り返らず去る。

 それがハードボイル・(ドー)


 すっかり気分は上々。

 アクションシーンもバッチリ決めて、今夜は酒が進みそうだ。



 銅貨ばっかりだったら笑える。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ