リカ、今度の“相手”は…手ごわし。
「……ムリ? オイオイ、一体なにが不満なんだ。俺の態度なら改めるぜ」
「実は少し前に、お前と“同じ依頼をしたヤツ”が居る」
「同じ依頼? イカれた殺し屋を追ってるのか。警察関係者……は、ないか。向こうは自前のデータベースにアクセスできるしな。それに、こんな奇妙なキャラクターが店番する屋台に、わざわざ巡回に来るアホな警官が居るワケない。誰だソイツは? 【暗黒街】の人間か?」
「顧客情報は口が裂けても言えねえ。まあ、お前とは長い付き合いだ。だから特別にタダで教えてやる――その殺人犯の情報は、なにひとつ出ない」
なにひとつ、出ない……?
「意味が分からん。どういうことだ」
「言葉通りの意味だ。惨殺死体がボンボン出る【商業地区・六番街】の隅から隅を調べても、犯行の痕跡は“なにも出ない”。調べて分かったことはひとつ。ヤツは〈高性能監視カメラ〉の位置を正確に把握してるってことだ」
この情報屋は〈地底〉のありとあらゆる場所に設置された
〈高性能監視カメラ〉を覗き見ることで、
ターゲットを完全に丸裸にする。
正義の味方にとって、
これ以上ないほどに都合のイイ犯人検挙システムであるが、
しかし、死角は存在する。
一台の〈高性能監視カメラ〉がカバーできる範囲は
限られているし、個人が所有するスペースは、
出向いて新規にカメラを設置するなどのアクションを起こさない限り、
情報の“空白地帯”となる。
「理屈は分かるが、そんなこと実際に可能なのか? カメラがどこに付いてるかなんて、いちいち意識したことはないぞ」
「俺だって、カメラがありそうな位置は経験上分かるが、絶対に映らないように、“全部避けて通る”なんてムリだ。入念に下調べしたところで、どこかで必ずボロが出る。ヤツは既に五件の犯行を重ねてる。パーフェクトに進行中だ。そんなのは人間技じゃない」
確かに。
人間はそんなことする必要がない。
〈神〉か悪魔のどちらかだ。
「死体が突然現れるのか? 出でよ○○!って、召還魔法みたいに」
「死体は決まってカメラに映らない場所に上がる。恐ろしいほど正確に、な。しかも屋内じゃなくて、路上だぞ。大したヤツだよ」
「映像はダメでも〈携帯端末〉の記録から辿れないか?」
「そッちはバカ息子の担当だ。だが、犯行に繋がる証拠は出そうにない気がするぞ。ダメ元で依頼してみるか?」
網の目のように〈地底〉に張り巡らされた
〈高性能監視カメラ〉の包囲網を抜けるヤツだ。
犯行計画を〈携帯端末〉に向かって、
ベラベラ相談するマヌケじゃないだろう。
「でも……一応やってくれ。可能性がないワケじゃない」
「フッ。持ってるヤツは違うな、リカ。いつもそうだと嬉しいね」
余計なお世話だ。
「そうだ、もうひとつ。なにも手掛かりがないなら【高級クラブ】から辿ってみたらどうだ? まあ、お前も気付いているだろうが」
「?」
「殺された五人は、【高級クラブ】のゴールド会員だ」




