リカ、ホントは“ジェームズ〇ンど”になりたい???
「今回は、カネの心配はないぜ」
フッ。
言ってみたかった憧れのセリフ。
もう気分は凄腕エージェント。
「ようこそリカ。毎回そうだと嬉しいよ」
両目の下には強そうなクマが二頭。しかし体は恐るべき子供サイズ。
それでいて、顔中に深く刻まれたシワが大変ミスマッチだ。
その姿はまるで、ファンタジー映画に登場するキャラクターのような。
この奇妙な風貌の男が、【興業地区・四番街】を俺が訪れた理由だ。
「相変わらず流行らない店だ。売れない屋台なんか辞めて、思い切って観光案内所にしちまえよ。その方がよっぽど儲かるぜ」
「口の悪さは相変わらずだな」
先祖代々受け継がれたという、
まるで『勇者の盾』のような触れ込みの鉄板に広げた薄い生地を
小男は慣れた手つきで広げ、さらに円を描くように薄く伸ばしていく。
「調べてほしいことがある。すぐ出来るか?」
「パニッシュなら、すぐに焼けるよ。ウチはパニッシュ屋だ」
「その笑えないジョークは、子供連れのマダムに向けて言うんだな。チップを弾んでもらえるぜ。――急ぎの仕事だ。すぐやってほしい。カネに糸目はつけない」
薄く伸ばして焼いた生地の上に、
スライスしたブタ肉、細かく千切りにしたミドリキャベツ、
ナマ卵とナチュラルチーズを、
ファンタジーキャラクターは順番に落としていく。
「オイ、聞いてんのか」
どんなに凄んだところで、コイツには効力がない。
分かっているが、ムカつく。パニッシュ完成のシメとして、
白く凝固したブタの脂身をファンタジーキャラクターは少量まぶす。
脂身が鉄板に跳ねた途端、
ジュウジュウと香ばしいサウンドがあちこちから始まって、
想像力を豊かにかき立てる。
なんだかんだと悪態をつく俺だが、
この屋台のパニッシュは〈地底〉で一番ウマいと思ってる。
焼き加減が絶妙なんだ。
ほどよく熱が通ったミドリキャベツの千切りとブタ肉に、
とろけたナチュラルチーズと溶いたタマゴと、
シメにまぶしたブタの脂身が素材によく絡み合い、
焦げの付いたパリパリの薄皮が食感のアクセントをつける。
「欲しいのは【商業地区・六番街】で始まった、一連の連続殺人だろ」
「さすが情報屋。ハナシが早くて助かる」
「ザンネンだな、リカ」
そう言ってファンタジーキャラクターは、
パリパリに焼き上げたパニッシュを新聞紙で包むと俺に差し出す。
「カネの心配はするな。なんと言っても今回、バックが『超』VIPだ」
「クライアントは黒服だろ。殺されたフレッチャー議員は、黒服の大物エージェントだ。お互いに、これからって時に消されて、親分がカンカンなんだろう」
なんだ。
やっぱり義理と人情たっぷりの、痛快復讐劇じゃないじゃないか。
俺のやる気マイナス35パーセント↓。
「そういうこと。じゃあ頼んだ」
「だからムリなんだ」




