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# 第九話 冒険者ギルドって怖くない!?

すみません 昨日病院行ってて投稿できませんでした


でも!今回から、いよいよ本格的な冒険の準備!


憧れの冒険者ギルドに、仲間探しに、街の探索まで!


クロは無事に冒険へ出発できるのでしょうか……?


ぜひ最後までお楽しみください!



 ゲームを起動してから、しばらく。


 私は画面に映る街並みを、ひたすら眺めていた。


「……すごい」


 石畳の道。


 木造の露店。


 レンガ造りの建物に、風にはためく旗。


 道の端には荷車が停まり、商人らしき人たちが商品を並べている。


 鎧を身につけた冒険者。


 大きな杖を持った魔法使い。


 背中に弓を背負ったエルフらしき人までいる。


 まさに、ファンタジーの世界だった。


「本当に……こういう世界なんだ……!」


 私はコントローラーを握りながら、画面に顔を近づけた。


 もちろん、ゲームなのは分かっている。


 でも、ここまで細かく作り込まれていると、まるで本当にこの世界が存在しているみたいだ。


 街の奥には大きなお城が見える。


 その周囲には、いくつもの塔。


 空には鳥が飛び、遠くから鐘の音が聞こえてくる。


 そして、画面の隅には地図が表示されていた。


 武器屋。


 道具屋。


 宿屋。


 魔法道具店。


 そして――。


「…………あっ!」


 私は地図の一点を見つめた。


 そこに表示されていたのは、見覚えのある文字。


 **冒険者ギルド。**


「冒険者ギルド……!?」


 思わず声が裏返った。


 あるんだ!


 本当にあるんだ!


 ファンタジー作品で何度も見てきた、あの冒険者ギルドが!


 依頼を受けたり、仲間を探したり、冒険者として登録したりする、あの場所!


「い、行きます! 今すぐ行きます!」


『テンション上がってて草』

『冒険者ギルドはロマン』

『クロちゃん、まだ街に着いただけだぞw』

『武器屋とか宿屋も見ようぜ!』


「だって! だって、冒険者ギルドですよ!?」


 私は地図を確認しながら、主人公を走らせた。


 ……走らせたつもりだった。


 主人公は目的地とは反対方向へ走っていった。


「えっ?」


 慌てて方向を修正する。


 今度は露店にぶつかりそうになり、慌ててジャンプ。


「わぁぁっ!? 違う! そっちじゃない!」


『方向音痴勇者www』

『ギルドに着く前に迷子になるなw』

『街の中で迷子は才能』


「迷子じゃないです! ちょっと道を確認してるだけです!」


 そんな言い訳をしながら、私はようやく大きな建物の前にたどり着いた。


 建物の上には剣と盾を組み合わせた紋章。


 入口の両側には、武装した冒険者たちが立っている。


 中からは賑やかな話し声が聞こえてきた。


「…………」


 私は操作を止めた。


 そして、画面を見つめた。


「……すごい。本当にギルドだ……」


 ここまで来ただけなのに、妙に感動してしまった。


 だって、冒険者ギルドだよ?


 何度も物語で読んだ、あの冒険者ギルドなんだよ?


 実際に中へ入って、冒険者登録ができるんだよ?


「……入ります!」


 私は勢いよく入口をくぐった。


     ◇


 ギルドの中は、想像していた以上に賑やかだった。


 大きなテーブルでは冒険者たちが食事をしている。


 壁には依頼書がびっしりと貼られた掲示板。


 奥には受付カウンターがあり、何人もの冒険者が順番を待っていた。


 壁に飾られている剣や盾も、ただの装飾ではないらしい。


 細かな傷まで再現されていて、使い込まれた雰囲気がある。


「うわぁ……!」


 私は思わず声を漏らした。


『めっちゃ楽しそうw』

『依頼掲示板あるぞ!』

『薬草採取とか魔物討伐とかありそう』

『まずは登録だね』


「そうですよね! 冒険者登録……!」


 私は受付カウンターへ向かった。


 そこには、栗色の髪を後ろでまとめた女性が座っていた。


 優しそうな笑顔。


 落ち着いた雰囲気。


 いかにも頼れる受付のお姉さん、という感じだ。


 頭上には、名前が表示されている。


 ――ミレーユ。


 そして、その下に小さく表示された文字。


 『ギルド受付嬢』


「……この人が受付のお姉さん……!」


 私はなぜか緊張していた。


 いや、相手はゲームのキャラクターだ。


 AIで動いている、ゲームの中の受付嬢。


 そう。


 分かっている。


 分かっているのに。


「…………」


 話しかけるボタンを押せない。


『どうしたw』

『受付の前で固まってるwww』

『クロちゃん、登録しようよw』


「わ、分かってます……!」


 私は深呼吸した。


 大丈夫。


 ゲームだ。


 失敗したって、現実の誰かに迷惑をかけるわけじゃない。


 よし。


 話しかけよう。


 私はようやくボタンを押した。


『こんにちは。冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?』


「ひゃっ!?」


 急に話しかけられた気がして、肩が跳ねた。


『いやNPCだぞwww』

『自分で話しかけたんだよw』

『クロちゃん、かわいいなw』


「分かってますぅ! 分かってますけど、急に話しかけられるとびっくりするんです!」


 自分で話しかけたのに。


 私は顔を覆いたくなった。


 ゲームのキャラクター相手に何をやっているんだろう。


 画面には会話の選択肢が表示されていた。


 ・冒険者登録をしたい

 ・依頼について聞きたい

 ・ギルドについて聞きたい


「えっと……冒険者登録、ですよね」


 選択肢を選ぶ。


『冒険者登録ですね。では、こちらの書類に必要事項を記入してください』


 画面に登録画面が表示された。


 名前。


 職業。


 得意な武器。


 そして、簡単な自己紹介。


「おおっ! ちゃんと登録するんだ!」


 私はわくわくしながら項目を埋めていった。


 名前は勇者。


 職業は、もちろん勇者。


 得意な武器は剣。


 ……なんだか、本当に冒険者になった気分だ。


 最後の項目まで入力すると、受付嬢がにっこりと微笑んだ。


『登録が完了しました。これであなたも、正式な冒険者です』


 画面に、登録証が表示された。


 金属製の小さなプレート。


 そこには主人公の名前と、冒険者としての登録情報が刻まれている。


「…………」


 私はしばらく、その画面を見つめていた。


「……冒険者に、なれた……!」


 ただのゲームだ。


 でも、嬉しかった。


 ここから依頼を受けて、街の外へ出て、仲間と一緒に冒険する。


 そんな物語が、今から始まるんだ。


「やったぁぁぁ!」


『登録おめでとう!』

『勇者、冒険者になる』

『まだ何もしてないのに感動してて草』

『こういう王道がいいんだよ』


「だって、こういうの憧れませんか!?」


 私は画面の登録証を、何度も確認した。


 ……うん。


 これだけでも、このゲームを買ってよかったと思える。


     ◇


 登録を終えると、受付嬢から説明を受けた。


 ギルドには、魔物の討伐や素材の採取、護衛など、さまざまな依頼があるらしい。


 依頼を達成すれば報酬がもらえ、冒険者としての評価も上がっていく。


 そして。


『冒険者同士でパーティーを組むこともできます。旅の仲間をお探しでしたら、掲示板やギルドに登録している冒険者に声をかけてみてください』


「……仲間!」


 私は思わず身を乗り出した。


 そうだった。


 このゲームは、一人で魔王を倒す物語じゃない。


 仲間と出会い、協力しながら世界を旅する物語なのだ。


 しかも、仲間になるキャラクターは一人や二人ではないらしい。


 ギルドに登録している冒険者の中にも、パーティーに誘える人物が複数いる。


 それぞれ得意な武器も、性格も、戦い方も違う。


 画面に表示された候補者の一覧を見て、私は目を輝かせた。


「えっ、待って……! この人、魔法使いなんだ! こっちは弓使い!? えっ、この人も仲間にできるの!?」


『候補多いなw』

『誰を選ぶか悩むね』

『戦士もいるぞ!』

『説明文を読むだけで時間が溶けそう』


「どうしよう……!」


 私は真剣に悩み始めた。


 魔法使いがいれば、遠距離から攻撃できる。


 弓使いなら、遠くの敵や仕掛けにも対応できるかもしれない。


 前衛の戦士がいれば、勇者が攻撃しやすくなるはずだ。


 でも、気になるキャラクターが多すぎる。


「みんな魅力的なんだけど……!」


 候補者の説明を一人ずつ確認していく。


 ところが、あるところで手が止まった。


 『パーティーに誘う』


 そのボタンを押せば、キャラクターに勧誘の会話ができるらしい。


「…………」


 私は静かにコントローラーを置いた。


『えっ』

『なんで置いた音がw』

『さっき登録できたじゃんw』


「いや……だって……!」


 登録はできた。


 受付嬢とも会話できた。


 でも、仲間を勧誘するとなると話が違う。


 相手は受付嬢ではない。


 これから一緒に旅をするかもしれない人なのだ。


 もし断られたら?


 もし変なことを言ってしまったら?


 いや、AIだから断られたところでゲームの進行に影響するだけかもしれない。


 でも。


「……緊張するものは、緊張するんです……!」


『ゲームの中でもコミュ障発動www』

『クロちゃんらしい』

『まずは一人誘ってみよう!』


「うぅ……!」


 私は意を決して、一人の候補者を選んだ。


 短い髪の戦士。


 大剣を背負い、腕を組んで立っている。


 名前はガルド。


 いかにも頼りになりそうな男性だ。


「……よし」


 会話を開始する。


『おう。俺に何か用か?』


「ひゃっ!?」


 また声が出た。


『だからNPCだってw』

『何回目だよwww』


「分かってますぅ!」


 私は会話の選択肢を選んだ。


 ・一緒に旅をしてほしい

 ・腕前を見せてほしい

 ・また今度にする


「……一緒に旅をしてほしい、ですよね」


 選択する。


『魔王討伐の旅か。面白そうじゃねえか。いいぜ、俺も同行しよう』


「…………えっ?」


 加入成功。


 画面に、ガルドがパーティーメンバーとして登録されたことを示す表示が出た。


「えっ、いいの!? そんな簡単に!?」


『相手も乗り気だったw』

『勧誘成功おめでとう!』

『クロちゃん、交渉力あるじゃん』


「いや、私、ほとんど何も言ってないんですけど!?」


 ガルドは大剣を肩に担ぎ、勇者の隣に並んだ。


 その姿が、妙に頼もしく見えた。


「……仲間、できちゃった……!」


 嬉しい。


 すごく嬉しい。


 でも、まだまだ気になるキャラクターはいる。


 ギルドの候補者だけでも、かなりの人数がいるのだ。


 この中から、誰を仲間にするか。


 どんな組み合わせで旅をするか。


 考えるだけで、わくわくしてくる。


 ……同時に、選ぶのが難しすぎる。


「ええっ……どうしよう……みんな仲間にしたい……!」


『パーティー枠には上限あるぞw』

『全員連れていきたい気持ちは分かる』

『まだ街にいるキャラも調べてみようぜ』


「……街にいるキャラ?」


 コメントを見て、私は首を傾げた。


 そういえば、仲間になれるのはギルドの冒険者だけなのだろうか。


 ゲームの説明には、そんなことは書いていなかった気がする。


 気になった私は、もう一度地図を開いた。


 武器屋。


 道具屋。


 宿屋。


 魔法道具店。


 そして、街の広場や路地にも、いくつか気になる場所がある。


「……よし!」


 私は立ち上がるような勢いで、コントローラーを握り直した。


「街を探索します!」


『本来それが冒険だw』

『寄り道開始』

『メインストーリーが進まないやつだw』


「だって! こういうの、全部見たくなりません!?」


 まずは武器屋。


 店内には、剣や槍、弓など、さまざまな武器が並んでいた。


 店主に話しかけると、武器の説明を聞くこともできる。


「おお……! 武器までこんなに種類があるんだ……!」


 次は道具屋。


 回復薬や素材、旅に必要な道具が並んでいる。


 さらに魔法道具店では、属性に関するアイテムまで売られていた。


「えっ、これ、今は買えないけど、後で使えるようになるのかな……?」


 気になるものが多すぎる。


 街を歩くだけで、次々と新しい発見がある。


 私はすっかり夢中になっていた。


 そして、広場を抜けて細い路地へ入ったとき。


 ふと、画面の端に気になる人物が映った。


 古びた建物の前。


 木箱に腰かけている、フードを深くかぶった人物だ。


 周囲の人々は、その人物を気に留める様子もない。


 頭上に名前は表示されていなかった。


 ただ、近づいてみると、画面の隅に小さなアイコンが浮かび上がった。


『???』


「……ん?」


 私は操作を止めた。


 何だろう。


 普通の街の人とは、少し違う気がする。


 試しに話しかけようとすると、短いメッセージが表示された。


『今はまだ、話すことはない』


「えっ!?」


 それだけだった。


 詳しい説明も、名前も、仲間に誘う選択肢もない。


 ただ、そこにいるだけ。


「……な、何この人!?」


『隠しキャラか?』

『気になる』

『条件満たすと仲間になるやつかも』

『こういうの見つけるの楽しいよね』


「えっ、待って! この人、仲間になったりするのかな!?」


 私は周囲を見回した。


 建物の裏側。


 路地の奥。


 広場の隅。


 街の中には、まだ調べていない場所がいくつもある。


 もしかしたら、他にもこういう人物がいるのかもしれない。


 ギルドで紹介される冒険者とは別に、街を歩き回らないと出会えないキャラクター。


 条件を満たさないと仲間にならない人物。


 そして、もしかすると――。


 普通の冒険者より、ずっと強い人物だっているのかもしれない。


「……このゲーム、街の探索だけでも終わらないんじゃ……?」


 私は地図を見つめた。


 まだ、街の外にすら出ていない。


 魔王討伐の旅も、ほとんど始まっていない。


 それなのに、もう気になることだらけだった。


「……すごい」


 自然と笑みがこぼれた。


 この先には、どんな仲間がいるんだろう。


 どんな物語が待っているんだろう。


 そして、さっきの謎の人物は、一体何者なのだろう。


「……よし!」


 私はコントローラーを握り直した。


「今日は、街を全部見て回ります!」


『メインストーリー進めてwww』

『魔王「まだ来ないの?」』

『クロちゃん、寄り道が本編になってるw』


「だ、だって気になるんですもん!」


 こうして、冒険者登録を済ませ、最初の仲間を得た勇者。


 しかし、魔王討伐の旅が始まるのは、もう少し先になりそうだった。


 ――なぜなら、クロはまだ、この街の面白さを知り尽くしていなかったのだから。


冒険者ギルドって、ファンタジー作品ではおなじみですが、実際にゲームで登録できるとわくわくしますよね!


ギルドの仲間候補だけでなく、街にも気になる人物がいるようで……?


クロの寄り道は、まだまだ続きそうです(笑)


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