# 第八話 神ゲーの予感……って、操作が難しすぎませんか!?
今回から、新しいゲームに挑戦です!
クロは無事に冒険を進められるのか……!?
ぜひ最後までお楽しみください!
登録者五百人を突破してから、少し経ったある日のこと。
私はパソコンの前で、ひとつのゲームの公式サイトを眺めていた。
「……きれい」
画面に映っているのは、青い空と、どこまでも広がる草原。
風に揺れる花々。その向こうには、雲を突き抜けるほど巨大な山がそびえ立っている。
そして、空には二つの月。
これ、本当にゲームの映像なの……?
私は何度もスクリーンショットを確認した。
タイトルは『Eternal Chronicle』。
広大な世界を旅し、仲間たちと出会い、魔王を倒すことを目指すアクションRPGらしい。
王道のファンタジー。
それだけなら、別に珍しくはない。
でも、このゲームは発売前から話題になっていた。
圧倒的なグラフィック。
作り込まれた世界。
選択によって変化する物語。
そして、数々のゲーム音楽を手がけてきた作曲家が参加しているらしい。
「……やってみたい」
気づけば、購入画面を開いていた。
値段を確認する。
……うん。ちょっと高い。
でも、これだけ評判がいいなら、きっと楽しめるはず。
私は少し悩んでから、購入ボタンを押した。
「……買っちゃった」
勢いである。
いつものことである。
そして数時間後。
私は配信画面の前で、再び固まっていた。
「……配信、しよう」
せっかく買ったのだ。
一人で遊ぶのもいいけれど、リスナーさんたちと一緒に楽しむのもいいかもしれない。
ゲーム配信なら、雑談よりは話せるはず。
たぶん。
……きっと。
そう信じたい。
◇
『【初見プレイ】話題の新作RPGを遊んでみます!』
配信タイトルを設定して、開始ボタンを押す。
「こ、こんばんは……! 猫野クロです……!」
『こんばんはー!』
『待ってた!』
『今日はNEXCじゃないんだ!』
『新作RPGだ!』
『クロちゃんのストーリー実況、楽しみ』
「ひゃっ……!」
コメントが流れる。
最近は、配信を始めると挨拶してくれる人が増えた。
それはとても嬉しい。
嬉しいのだけれど、コメントが一気に流れると、やっぱり慣れない。
「きょ、今日は……このゲームを、初めて遊びます……!」
『おおー!』
『完全初見?』
『ネタバレなしで見守るね!』
『困ったら聞いてねー』
「は、はい……! よろしくお願いします……!」
私はゲームを起動した。
画面が暗転する。
そして――。
静かなピアノの音が、部屋に響いた。
「…………」
画面に、一人の少女が立っていた。
白い衣装。
淡く輝く髪。
その手には、光をまとった剣が握られている。
少女の前には、夕焼けに染まった城下町。
石畳の道を人々が行き交い、屋台からは湯気が立ち上る。
遠くでは鐘が鳴り、鳥たちが空へと飛び立っていった。
カメラがゆっくりと空へ向かう。
夕焼けの向こうに、巨大な城がそびえている。
そして、画面いっぱいにタイトルが表示された。
――Eternal Chronicle。
「…………わぁ」
思わず声が漏れた。
きれい。
本当に、きれい。
ただ映像が美しいだけじゃない。
そこに人が暮らしていて、世界が動いているように感じる。
風の音。
遠くから聞こえる人々の声。
柔らかく流れる音楽。
全部が自然につながっていた。
『映像すごいな』
『これ本当にゲーム画面?』
『音楽めっちゃいい……』
『クロちゃん、静かになったw』
「……すごい、です……」
いつもなら、配信が始まっただけで緊張してしまう。
でも今は、それすら忘れていた。
もっと見たい。
この世界を、もっと知りたい。
そう思った。
◇
オープニングムービーが終わり、ゲームの操作画面が表示された。
主人公の少女は、剣を持って街の広場に立っていた。
画面の隅には、いくつものアイコンが並んでいる。
「……え?」
私は画面に顔を近づけた。
攻撃。
回避。
ジャンプ。
ガード。
スキル。
必殺技。
キャラクター切り替え。
属性切り替え。
メニュー。
「……多くない?」
『アクションRPGだからねw』
『慣れればいける!』
『まずはチュートリアルだ!』
チュートリアルの案内が表示された。
『通常攻撃を行ってください』
「えっと……これ、かな?」
ボタンを押す。
主人公が剣を振った。
シュッ、と風を切る音が響く。
「おおっ!」
もう一度押す。
今度は二連撃。
三回目で、華麗な回転斬りが繰り出された。
「えっ、かっこいい……!」
さっきまで戸惑っていたのに、少し楽しくなってきた。
次は回避。
主人公が軽やかに横へ飛ぶ。
ジャンプ。
剣を振りながら空中へ飛び上がり、そのまま地面へ着地する。
「わ、わ、わっ!?」
操作を試しているうちに、主人公が広場を走り回り始めた。
止まろうとして、またジャンプ。
方向を変えようとして、回避。
気づけば、広場の端で主人公がくるくる回っていた。
『何してんのwww』
『主人公が落ち着かないw』
『操作確認あるある』
『クロちゃん、まず止まろうw』
「と、止まってくださいぃ……!」
操作しているのは私だ。
私が止めなければ、止まらない。
ようやく主人公を静止させ、私は深呼吸した。
「……よし」
まだ、始まったばかり。
大丈夫。
ゲームの操作なんて、遊んでいれば慣れるはず。
たぶん。
◇
チュートリアルを進めると、主人公の前に小さな光の玉が現れた。
『あなたは、光の加護を受けし勇者』
画面に、そんな文章が表示される。
「勇者……!」
王道だ。
勇者が仲間と出会い、世界を旅し、魔王を倒す。
そういう物語は大好きだ。
さらに説明が続く。
勇者は光の属性を基礎とし、各地を巡って精霊の試練を乗り越えることで、別の属性を扱えるようになるらしい。
炎、水、風、地、氷、草。
それぞれの属性を解放すれば、光と組み合わせて戦闘スタイルを切り替えられるという。
「……え、属性を切り替えられるの?」
画面には、光の剣を構える勇者の姿。
その隣に、炎をまとった剣のイラストが表示された。
続いて、水、風、地、氷、草。
どれも演出が違う。
「えっ、待って。これ、全部使えるようになるの?」
『そういうシステムらしいね』
『属性ごとに戦い方変わるの楽しそう』
『全部解放したいな』
「……やりたい!」
さっきまで操作の多さに怯えていたのに、もう気持ちは先へ進んでいた。
新しい属性を解放したら、どんな技が使えるんだろう。
どんな演出が見られるんだろう。
考えるだけでわくわくする。
そして、画面に次の案内が表示された。
『仲間と協力して、試練を乗り越えましょう』
仲間。
この世界には、勇者以外にも操作できるキャラクターがいるらしい。
戦闘中はボタンひとつで操作キャラクターを切り替えられる。
さらに、仲間に移動や待機の指示を出せば、離れた場所で仕掛けを操作してもらうこともできるという。
「……えっと?」
私は画面の説明を読み直した。
キャラクターを切り替えて。
仲間に指示を出して。
離れた場所の仕掛けを解いて。
さらに属性まで切り替える。
「…………」
私はそっとコントローラーを握り直した。
「……覚えること、多すぎませんか?」
『今さら気づいたwww』
『でもこういうのが面白いんだよ!』
『クロちゃん、NEXCで鍛えた操作技術を見せてくれ!』
「む、無理です! NEXCとこれは別ですぅ!」
思わず叫んでしまった。
コメント欄が笑いで埋まる。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
わからないことだらけだ。
操作も覚えきれない。
この先、何度も失敗するだろう。
それでも。
この世界をもっと見てみたい。
この物語の続きを知りたい。
そう思っている自分がいた。
「……よし。頑張ります!」
私はコントローラーを握り直した。
画面の中で、勇者が光の剣を掲げる。
新しい冒険が、今始まろうとしていた。
新しいゲームって、始める前が一番わくわくしますよね!
クロはこれからどんな冒険をするのか、見守っていただけたら嬉しいです!
面白かった、続きが気になると思っていただけたら、感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!




