# 第六話 黒猫スナイパー、爆誕!?
前回、無事に配信を最後までやり遂げた猫野クロ。
少しずつ配信に慣れてきた彼女ですが、ゲームの腕前は相変わらず本人の自覚以上のようで……?
今回も、悲鳴とエイムのギャップをお楽しみください!
配信を終えてから、数時間後。
「……今日も、楽しかったな」
私はベッドの上で、スマホを眺めていた。
画面に表示されているのは、さっきまで配信していた自分のチャンネル。
配信が終わると、いつも少しだけ寂しくなる。
でも、コメント欄には今日の配信を見てくれた人たちの言葉が残っていた。
『今日も悲鳴が最高だったw』
『普通にエイムうますぎるんだよなぁ』
『次回も待ってます!』
「うぅ……やっぱり悲鳴のこと言われてる……」
恥ずかしい。
すっごく恥ずかしい。
だけど。
「……次も、頑張ろう」
そう呟いて、スマホを置いた。
明日も、配信できたらいいな。
そんなことを考えながら、私は目を閉じた。
――そして翌日。
私は、いつものように配信機材の前に座っていた。
「よし……。今日は、もうちょっと落ち着いてプレイする……!」
目標は、悲鳴を減らすこと。
敵が出てきても慌てない。
冷静に状況を判断する。
そして、ちゃんと生き残る。
うん。完璧な計画だ。
私は配信画面を開いた。
タイトルは――。
『【NEXC】今日は落ち着いてプレイしたい……!』
「……よし」
配信開始ボタンを押す。
『猫野クロです……! こ、こんにちは!』
『クロちゃんきたー!』
『今日も来たよ!』
『今日はPC抜かないでねw』
『落ち着いてプレイできるかな?w』
「だ、だから今日は抜きませんってば!」
もう、みんなそればっかり!
私だって、好きでパソコンを落としたわけじゃないんだから!
「……こほん。それじゃあ、今日もNEXCやっていきます!」
ゲームを起動する。
今回の装備は、スナイパーライフル。
遠くから敵を狙撃する武器だ。
普段使っている武器とは少し違うけれど、私はこの武器も好きだった。
遠くの敵を見つけて、狙いを定めて、撃つ。
その瞬間が、なんだか気持ちいい。
もちろん、敵に見つかったら大変だけど。
「よし……。今日は遠くから、こっそり……」
私は物陰に身を隠し、周囲を見渡した。
すると、遠くの建物の間を敵プレイヤーが横切った。
「……あっ」
反射的に照準を合わせる。
敵が立ち止まった、その瞬間。
パンッ!
銃声が響いた。
敵プレイヤーが倒れる。
「……え?」
思わず画面を二度見した。
今の、当たった?
かなり遠かった気がするんだけど……。
『えっ、今の当てた!?』
『距離やばくない?w』
『初弾ヘッドショット!?』
『うっまwww』
「え、えっと……。た、たまたまです!」
そう、たまたま。
偶然、敵がそこにいただけ。
私がすごいわけじゃない。
うん。きっとそう。
……そういうことにしておこう。
私は気を取り直して、次の敵を探した。
すると、今度は建物の屋上に敵が現れた。
「あっ、いた……!」
敵はこちらに気づいていない。
私は照準を合わせる。
相手が動く。
少しだけ先を狙って――。
パンッ!
また、敵が倒れた。
「ひゃあっ!? た、倒せたぁ!?」
『また当てたwww』
『偏差撃ちうますぎる』
『この猫、スナイパー適性高すぎない?』
『本人が一番びっくりしてるの草』
「い、いやいや! 今のもたまたまですから!」
コメント欄が、どんどん流れていく。
私は恥ずかしくなって、思わずアバターの顔を隠したくなった。
でも、配信画面の黒猫は――。
ドヤァ。
「なんで!?」
またドヤ顔だった。
私、そんなに自信満々じゃないんだけど!?
その後も、私は遠距離から敵を見つけては狙撃していった。
もちろん、毎回うまくいくわけじゃない。
撃つ前に見つかって、慌てて逃げることもある。
『うわあああ!? こっち来ないでぇぇぇ!』
『さっきまでの冷静さどこいったw』
『スナイパーなのに悲鳴が近距離戦w』
「だ、だって近いんですもん!!」
敵が近づいてくる。
私は必死に逃げながら、隙を見て振り返った。
照準を合わせる。
撃つ。
パンッ!
敵が倒れた。
「……え?」
また、倒れた。
『振り向きざまに当てた!?』
『反応速度どうなってんのw』
『悲鳴上げながら当てるなwww』
「わ、私だってびっくりしてるんですけど!?」
もう何が何だか分からない。
私はただ、生き残りたいだけなのに!
それからしばらくして、配信は終盤に差しかかっていた。
画面には、今日の戦績が表示されている。
「……えっと」
私は数字を見つめた。
倒した敵の数。
思っていたより、ずっと多い。
「……こんなに倒してたんだ」
『今日のクロちゃん、めっちゃキルしてるw』
『スナイパー回、当たり回だな』
『黒猫スナイパー爆誕』
『黒猫スナイパーwww』
『その名前、似合いすぎる』
「く、黒猫スナイパー……!?」
コメント欄に、同じ言葉が次々と流れていく。
『黒猫スナイパー、次の配信も待ってます!』
『遠距離から敵を溶かす黒猫w』
『なお本人はずっと悲鳴を上げている模様』
「えええ……!?」
そんな名前がついちゃったの!?
私はただゲームをしていただけなのに!
……いや、確かにスナイパーは使ったけど!
「えっと……。あの、黒猫スナイパーって呼ばれるほど、すごくないと思います……」
『謙遜するなw』
『本人だけ自覚ないの草』
『ドヤ猫は自覚ある顔してるぞw』
「ドヤ猫は関係ないです!!」
画面の黒猫が、今日も堂々と胸を張っていた。
……もう、好きにして。
私は小さくため息をつきながら、終了画面を開いた。
「そ、それじゃあ、今日はこの辺で! 見に来てくれて、ありがとうございました!」
『お疲れさま!』
『黒猫スナイパー、またね!』
『次回も楽しみにしてる!』
「……はい! また、来てくれると嬉しいです!」
配信終了ボタンを押す。
画面が切り替わり、部屋が静かになった。
「……黒猫スナイパー、かぁ」
私は、自分のチャンネルを見つめた。
新しい呼び名。
新しいコメント。
少しずつ増えていく、私を知ってくれる人たち。
まだ、配信を始めたばかりだ。
学校に行くことだって、まだ怖い。
だけど、この場所では。
少しだけ、自分のことを好きになれる気がした。
「……次も、頑張ろう」
私はそう呟いて、黒猫のアバターを見つめた。
画面の中の黒猫は、やっぱりドヤ顔をしていた。
第6話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、クロがスナイパーライフルに挑戦するお話でした!
本人はたまたまだと思っているのに、次々と敵を倒してしまうクロ。
そして、ついに「黒猫スナイパー」という呼び名まで誕生しました!
悲鳴を上げながら敵を倒す黒猫の活躍を、これからも見守っていただけると嬉しいです!
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これからもよろしくお願いします!




