# 第二十一話 巨大ムカデが気持ち悪すぎるんですけど!?
今回は、ついにダンジョン最深部のボス戦です!
巨大ムカデの登場に、クロはまさかのリアル椅子落下……。そして怒りの覚醒から、仲間たちとの連携必殺まで!
ぜひ最後までお楽しみください!
地の大精霊の案内で、私たちはダンジョンの最深部へと向かっていた。
「……この先に、ダンジョンの核があるんですよね?」
『そうだ。だが、その前に立ちはだかるものがいる』
地の大精霊が答える。
その声に、私は少しだけ緊張した。
ダンジョンの核。
それを破壊すれば、今回の事件は解決に近づく。
でも、ここまで来る途中にも、たくさんの魔物がいた。
転がる岩の魔物。
巨大な岩のゴーレム。
そして、蜘蛛。
「……もう、十分怖いんですけど」
『まだ奥があるぞ』
「聞きたくなかったぁぁぁ!」
コメント欄が笑いで埋まる。
『クロちゃん、頑張れw』
『そろそろボスかな?』
『回復薬は十分持った?』
「持ってます! 今回はちゃんと補充しましたから!」
私はアイテム欄を確認した。
HP回復薬。
最上級、二個。
上級、八個。
中級、十個。
下級、十個。
MP回復薬も、ほぼ同じ数。
……うん。
これだけあれば、何とかなるはず。
そう信じたい。
* * *
しばらく進むと、広い空間に出た。
そこには、地の精霊の契約者たちが待機していた。
人数は数人。
全員が武装していて、周囲を警戒している。
その中でも、ひときわ目立つ人物がいた。
……大きい。
とにかく、大きい。
筋肉がすごい。
鎧の上からでも分かるほど、腕も胸も分厚い。
背中には、身体と同じくらい巨大な盾を背負っていた。
「おう! お前たちが今回の助っ人か!」
その男が、豪快に笑った。
「俺はバルガス! 地の大精霊と契約している者だ!」
「よ、よろしくお願いします……!」
私は思わず頭を下げた。
バルガスさんは、私たちのパーティーを見回した。
「ふむ。勇者に大剣使い、魔法使いが二人か。いいじゃねえか!」
そして、背中の盾をドンッと地面に置いた。
「敵の攻撃は俺が受け止める! お前らは思いっきり攻撃しろ!」
『脳筋盾役きたw』
『頼もしいなw』
『防御は任せろタイプだ!』
「……す、すごく頼りになりそうです!」
私は思わず頷いた。
すると、バルガスさんはさらに笑った。
「そうだろう! ガハハハ!」
……うん。
声も大きい。
この人、絶対に脳筋だ。
* * *
地の大精霊が、奥の扉を見つめた。
『この先に、ダンジョンの守護者がいる』
「……守護者?」
『核へ近づく者を排除するために生み出された存在だ』
私は、ゆっくりと扉を見た。
……ボス。
つまり。
「……ボス戦、ですか?」
『そうだ』
「…………」
私は、そっとコントローラーを握り直した。
回復薬は十分。
仲間もいる。
地の大精霊もいる。
契約者たちもいる。
……大丈夫。
きっと大丈夫。
「……よし。行きます!」
私は扉を開けた。
* * *
――その瞬間。
視界に、巨大な影が映った。
長い身体。
無数の脚。
硬そうな外殻。
そして、こちらを向いた巨大な頭部。
それは――。
「…………」
私は、固まった。
数秒。
十秒。
そして。
「…………む」
声が震えた。
「む、ムカデ……?」
巨大なムカデが、ゆっくりと身体を動かした。
その脚が、カサカサと床を這う。
長い胴体が、うねるように動く。
「…………」
私は、ゆっくりと後ずさった。
「……むり」
『え?』
「むりぃぃぃぃぃぃぃ!!」
――ガタンッ!
椅子から転げ落ちた。
配信画面の黒猫アバターが、突然固まる。
『クロちゃん!?』
『今の音なに!?w』
『椅子から落ちた!?』
『大丈夫!?』
……数秒後。
「…………はっ!?」
私は目を開けた。
あれ?
私、何してたんだっけ?
……あ。
画面。
ムカデ。
巨大ムカデ。
「…………」
ゆっくりと椅子に戻る。
そして、画面を見つめた。
「……ふざけんな」
『え?』
「ふざけんなぁぁぁぁぁ!! なんでそんな気持ち悪いのがいるんですかぁぁぁ!!」
『急にキレたwww』
『クロちゃん逆ギレモードw』
『まだ戦闘始まってないぞw』
「もういいです! さっさと倒します!!」
私はコントローラーを握り直した。
……もう怖くない。
いや、怖い。
めちゃくちゃ怖い。
でも。
このムカデを倒さないと、先に進めない。
「……来い! ムカデぇぇぇ!!」
* * *
巨大ムカデが、身体を丸め始めた。
その全身に、魔力が集まっていく。
『突進チャージを確認』
画面に警告が表示された。
「……え?」
ムカデが、こちらに向かって突進しようとしている。
『チャージを阻止しろ!』
「はいっ! 分かりました!」
私はガルドに切り替えた。
大剣を構える。
「ガルドさん! お願いします!」
――ドゴォォン!
大剣がムカデの頭部に直撃した。
『チャージ阻止!』
ムカデの身体が爆発した。
そして――。
巨大な身体が、ひっくり返った。
『弱点露出!』
柔らかい腹部。
そして、尻尾。
外殻に覆われていない部分が、むき出しになっていた。
「……今だぁぁぁ!!」
私は勇者に切り替えた。
光属性の攻撃。
ガルドの大剣。
フィリアとエルフィの魔法。
バルガスさんも、巨大な盾でムカデの身体を押さえ込んでいる。
「おおおお! 今だ! ぶちかませぇぇぇ!!」
その声に合わせて、仲間たちが一斉に攻撃した。
ムカデが身体をよじる。
しかし、バルガスさんが盾を押し込んで動きを止める。
「逃がすかぁぁぁ!!」
――連携必殺発動!
主人公とガルド。
フィリアとエルフィ。
二組の連携必殺が、同時に炸裂した。
光の剣と大剣が、ムカデの外殻を打ち砕く。
二人の魔法使いが放った魔法が、露出した腹部へと直撃する。
単純な足し算ではない。
連携によって威力が掛け算される、圧倒的な火力。
巨大ムカデのHPゲージが、一気に削れていった。
「……え?」
私は画面を見つめた。
「……えええええ!?」
HPゲージが、ほとんど消えている。
『連携必殺つっよwww』
『ダメージおかしいw』
『ボスのHP消し飛んだw』
「ちょ、ちょっと待って!? 何これ!? 強すぎません!?」
そして。
最後の一撃。
勇者の光が、ムカデの身体を貫いた。
『古代遺跡の守護ムカデを撃破しました!』
「…………」
私は、画面を見つめた。
巨大ムカデが、動かなくなっている。
倒した。
……倒した?
「……やったぁぁぁぁ!!」
私は思いきり叫んだ。
その瞬間。
ふっと、意識が遠のいた。
「…………あ」
画面が、少しだけ暗くなる。
そして――。
* * *
「…………ん?」
私は、ゆっくりと目を開けた。
……あれ?
何してたんだっけ?
私は椅子に座っている。
パソコンの画面には、巨大ムカデが倒れていた。
「…………」
数秒間、画面を見つめる。
「……あれ?」
コメント欄が、ものすごい勢いで流れていた。
『クロちゃん!?』
『意識飛んでたwww』
『ボス倒したよ!』
『連携必殺で一撃だったw』
「……え?」
私は、ゆっくりと首を傾げた。
「……あれ? 倒してる?」
『倒してるwww』
『さっきまでブチギレてたのにw』
『クロちゃん、ボス撃破おめでとう!』
「…………」
私は画面を見つめた。
巨大ムカデ。
撃破表示。
仲間たち。
そして、コメント欄。
「……えっと」
私は、そっとコントローラーを置いた。
「……何が起きたんですか?」
『自分で倒したんだよwww』
『怒りの覚醒すごかったぞw』
『ムカデへの怒りでゲームが上手くなってたw』
「…………」
私は、ゆっくりと頬を膨らませた。
「……ムカデが悪いんですぅぅぅ!!」
『またキレたwww』
『クロちゃん、もう大丈夫?w』
……うん。
大丈夫。
たぶん。
でも。
「……もう、ムカデは見たくないです……」
私は、そっと画面を閉じた。
* * *
ボスを倒したことで、奥の扉が開いた。
その先には、ダンジョンの核があるらしい。
地の大精霊が、静かに告げた。
『これで、核へ進むことができる』
私は、ゆっくりと頷いた。
「……よし」
まだ、終わりではない。
ダンジョンの核を破壊し、魔力の供給を止める必要がある。
そして、外部から繋がれている魔法の依代も破壊しなければならない。
……でも。
今は。
「……ちょっと休憩させてください……」
私は椅子の背もたれに寄りかかった。
巨大ムカデ。
もう二度と見たくない。
――こうして。
クロたちは、ダンジョンの守護ムカデを撃破した。
そして、次に待つのは。
ダンジョンの核と、事件の真相。
……ただし。
クロの心には、まだ巨大ムカデの姿が焼き付いていた。
「……ムカデ、ほんと無理……」
その呟きは、配信のマイクにしっかり拾われていたのだった。
クロの怒りの覚醒、書いていて楽しかったです(笑)
そして、地の精霊の契約者バルガスも登場! 筋肉モリモリの盾役として、ボス戦で活躍してくれました。
次回は、いよいよダンジョンの核へ。今回の事件の真相に迫ります!
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