# 第二十話 ダンジョンって漢字でどう書くと思いますか?
今回は、広大な洞窟の探索を続けます!
道に迷ったり、巨大な蜘蛛と戦ったりと、クロの冒険は今回も大騒ぎ。
そして、洞窟の奥でついに先行していた地の大精霊と契約者たちに合流します。
ぜひ最後までお楽しみください!
「こんにちは、猫野クロです!」
私は画面の中の黒猫アバターに合わせて、軽く手を振った。
『こんにちはー!』
『クロちゃん待ってた!』
『今日は洞窟探索の続き?』
「はい! 前回から引き続き、巨大洞窟の探索をしていきたいと思います!」
画面には、薄暗い洞窟の通路が映っていた。
壁には小さな魔力結晶が埋め込まれていて、青白い光が足元を照らしている。
その先には、いくつもの分岐。
右へ進む道。
左へ進む道。
さらに奥へ続く道。
「……うん」
私は画面を見つめた。
「突然ですが、ダンジョンって漢字でどう書くと思いますか?」
『え?』
『急に漢字クイズw』
『洞窟探索中に?』
「正解は、迷宮です!」
「……名前の通り迷いました!」
いや、ほんとに迷ってるんですけど!?
この洞窟、広すぎません!?
『もう迷ってるw』
『早すぎるwww』
『まだ探索始めたばっかりだろw』
『クロちゃん、マップ見てw』
「見てます! 見てるんですけど……!」
私は画面の隅に表示されているマップを開いた。
そこには、今まで歩いてきた通路が表示されている。
……表示されているのだけれど。
「えっと……この道、どこから来たんだっけ……?」
『知らんwww』
『自分で歩いたんだよw』
『分岐でピン置こうぜ』
「……ピン?」
私は首を傾げた。
ピン。
マップに目印をつける、あのピン?
『そうそう!』
『探索済みの道とか、後で行く場所に置くやつ』
『いらないアイテムを置いて目印にしてもいいぞ』
「…………」
私は、しばらく黙った。
そして。
「あっ!」
『えっ、何?』
「そういうの、ありましたね……!」
『忘れてたのかよwww』
「だ、だって! 敵を倒して、宝箱を開けて、先に進むことしか考えてなかったんですもん!」
『それで迷ってたのかw』
『ダンジョン探索の基本を忘れる新人』
『クロちゃんらしい』
「うぅ……!」
私は慌ててマップを開き直した。
確か、マップ画面からピンを置けるはず。
操作ガイドを確認して、目印を設置する。
……よし。
これで、今まで通った道が分かる。
「ふふん! これで迷子になりません!」
『フラグかな?』
『その発言、危ないw』
『もう迷子になった後なんだよなぁ』
「な、なんですか! ちゃんとマップを確認してますから!」
私は少し得意げに頷いた。
これで大丈夫。
今度こそ、ちゃんと探索できるはず。
◇
マップに目印をつけながら、私は洞窟の奥へと進んでいった。
通路は、進むほどに複雑になっていく。
広い空洞に出たと思えば、そこから細い通路が三つに分かれていたり。
狭い道を進んでいたら、いつの間にか別の広い空間につながっていたり。
「……これ、自然にできた洞窟なんですよね?」
『そういう設定だったはず』
『人が掘った坑道も混ざってるんじゃない?』
『広すぎて全体像が分からんw』
「ですよね……」
私はマップを確認した。
洞窟の中には、かつて鉱石を採掘していたと思われる小さな坑道がいくつも存在している。
ただし、奥へ進むにつれて、壁や床に不自然な魔力の流れが見えるようになってきた。
ここから先は、ダンジョン化した領域なのだろう。
「……うーん」
私は少しだけ眉を寄せた。
この洞窟の奥に、魔物が増えている原因がある。
そして、地の国の精霊と契約者たちも、すでに調査に入っているはずだ。
早く合流したい。
そう思っていたのだけれど。
「……あれ?」
画面の奥に、見覚えのある通路が見えた。
壁に大きな亀裂。
その横に、青い結晶。
……さっきも見たような。
「えっと……」
私はマップを開いた。
目印を確認する。
そして、通路の先を見つめた。
「…………」
……あれ?
この道、探索済みじゃない?
『クロちゃん?』
『まさか』
『また迷ってるw』
「ち、違います!」
私は慌てて首を振った。
「迷ってるんじゃなくて、確認してるんです!」
『それを迷ってるって言うんだよw』
『マップにピン置いた意味w』
『ピンを置いても迷う女』
「うぅぅ……!」
私はマップを確認しながら、今度こそ正しい道を探した。
すると、少し離れたところに、まだ目印を置いていない通路があった。
「……あっ! こっちだ!」
私は主人公を走らせた。
通路を進む。
少し広い空間に出る。
その先には、さらに奥へ続く道があった。
「よし! 進めそうです!」
『おお!』
『今度はちゃんと進んでる』
『探索が進んでるぞ!』
「ふふん! どうですか!」
私は少しだけ得意げになった。
……その瞬間だった。
カサ。
「…………ん?」
何かが動く音がした。
私は操作を止めた。
カサカサ。
カサカサカサ。
「……え?」
通路の奥。
壁に張り付いていた何かが、ゆっくりと動いた。
大きな脚。
黒い身体。
そして、いくつもの目。
「…………」
私は固まった。
「……蜘蛛?」
それは、巨大な蜘蛛だった。
普通の蜘蛛とは比べものにならないほど大きい。
その身体は洞窟の壁に張り付き、長い脚をゆっくりと動かしている。
「…………」
私は画面を見つめた。
そして。
「いやあああああああああああああああ!!」
叫んだ。
『出たwww』
『クロちゃん、蜘蛛苦手なのかw』
『悲鳴助かる』
『でっかい蜘蛛だな……』
「む、無理です! 無理無理無理!!」
私は椅子の背もたれに身を押しつけた。
「ちょっと待ってください! なんでこんなところに蜘蛛がいるんですか!?」
『洞窟だからw』
『魔物だからw』
『ダンジョンだぞw』
「そういう問題じゃないですぅ!!」
巨大蜘蛛が、こちらへ向かって動き始めた。
長い脚を動かし、壁を伝い、天井へ。
そして。
こちらを見下ろしていた。
「…………」
私は、静かにコントローラーを握り直した。
……いや、握り直したくない。
できれば逃げたい。
でも、逃げ道は狭い通路だけ。
しかも、後ろには仲間たちがいる。
「……えっと」
私は小さく息を吸った。
「……戦います」
『頑張れクロちゃん!』
『仲間がいるぞ!』
『ガルドとフィリアとエルフィに任せよう』
「そ、そうですよね……!」
画面の中では、ガルドが大剣を構え、フィリアとエルフィが杖を握っていた。
勇者も剣を構える。
巨大蜘蛛が、天井から飛び降りた。
「ひゃああああっ!?」
戦闘開始。
◇
巨大蜘蛛は、素早く脚を動かしてこちらへ迫ってきた。
その動きは、見た目以上に速い。
「えっ、速っ!? ちょっと待って!」
私は慌てて回避ボタンを押した。
勇者が横へ跳ぶ。
巨大蜘蛛の脚が、地面を叩いた。
ドンッ!
「ひゃああっ!?」
地面が揺れる。
その隙に、ガルドが大剣を振り下ろした。
ズンッ!
巨大蜘蛛の脚に攻撃が命中する。
しかし、蜘蛛はすぐに体勢を立て直した。
『硬いな……!』
ガルドが呟く。
フィリアとエルフィが杖を掲げた。
『なら、魔法で動きを止めるわ!』
火の魔法が放たれる。
炎が蜘蛛の身体に命中し、黒い煙が上がった。
「おおっ! リリア、すごい!」
私は勇者を操作し、剣で攻撃した。
蜘蛛の脚を狙う。
攻撃が命中すると、巨大蜘蛛が少しだけ体勢を崩した。
「今だっ!」
ガルドが大剣を振り下ろす。
蜘蛛が大きく後退した。
『いいぞ!』
『連携できてる!』
『クロちゃん、落ち着いて攻撃して!』
「お、落ち着いてます!」
……落ち着いているつもりだった。
でも。
巨大蜘蛛が、再び天井へと登り始めた。
「……え?」
私は画面を見上げた。
蜘蛛は天井に張り付き、こちらを見下ろしている。
そして。
口元から、白い糸が伸びた。
「…………」
私は、静かに息を吸った。
「……糸?」
次の瞬間。
蜘蛛が糸を吐き出した。
糸が地面に広がり、勇者の足元に絡みつく。
「えっ!? ちょ、動けない!?」
勇者がその場に拘束された。
巨大蜘蛛が、こちらへ向かって降りてくる。
「いやああああああ!!」
私は慌てて操作を切り替えた。
ガルド!
……違う!
フィリア!
……違う!
「誰ですか!? 今、誰を操作してるんですか!?」
『クロちゃんwww』
『操作キャラ確認してw』
『蜘蛛よりボタンに苦戦してるw』
「もう! ボタンが多いんですぅ!!」
どうにかフィリアに切り替え、魔法を放つ。
炎が蜘蛛に命中する。
蜘蛛が怯み、勇者を拘束していた糸が緩んだ。
「今だ!」
勇者が動き出す。
回避。
攻撃。
再び回避。
ガルドが大剣を振り、フィリアが魔法で援護する。
少しずつ、蜘蛛の体力が減っていった。
……よし。
このままなら、倒せるかもしれない。
そう思ったとき。
巨大蜘蛛が、突然大きく跳び上がった。
「……え?」
蜘蛛が天井に張り付く。
そして、こちらへ向かって――。
「ちょっと待って! 何する気ですか!?」
蜘蛛の身体が、ゆっくりとこちらへ落ちてくる。
「いやあああああああああああ!!」
私は慌てて回避ボタンを押した。
勇者が横へ飛ぶ。
ガルドも後退する。
フィリアが魔法を放つ。
ドンッ!!
巨大蜘蛛が地面に落下した。
衝撃で、洞窟の床が揺れた。
「…………はぁっ、はぁっ……!」
私は椅子の上で息を切らしていた。
……怖い。
この蜘蛛、怖すぎる。
『大丈夫!?』
『今の攻撃、範囲広いな』
『よく避けた!』
『クロちゃん、あと少しだ!』
「……あと少し?」
私は画面を確認した。
巨大蜘蛛の体力は、まだ残っている。
……うそ。
「まだあるんですか!?」
『ボスだからw』
『頑張れ!』
『仲間の連携で押し切ろう!』
「うぅ……!」
私はコントローラーを握り直した。
勇者が剣を構える。
ガルドが大剣を肩に担ぐ。
フィリアが杖を掲げる。
エルフィが魔法を準備する。
そして、四人が同時に攻撃を仕掛けた。
光。
大剣。
魔法。
それぞれの攻撃が巨大蜘蛛に命中する。
蜘蛛の体力が、一気に減った。
「……今だ!」
私は勇者を操作し、最後の一撃を放った。
剣が、蜘蛛の身体を貫く。
巨大蜘蛛が大きく震えた。
そして――。
ドサッ。
地面に倒れた。
『VICTORY』
「…………」
私はしばらく画面を見つめた。
そして。
「……勝ったぁぁぁぁ……!」
椅子の背もたれに倒れ込んだ。
疲れた。
怖かった。
でも、勝てた。
『撃破おめでとう!』
『連携よかったぞ!』
『蜘蛛のボス強かったな』
『クロちゃんの悲鳴も絶好調だったw』
「……もう、蜘蛛は見たくないです……」
私は小さく呟いた。
……いや。
ゲームの中なら、まだいい。
現実に出てきたら、絶対に無理。
◇
巨大蜘蛛を倒したあと、通路の奥に新たな道が開いた。
そこには、今までの洞窟とは少し違う空間が広がっていた。
壁には巨大な結晶が埋め込まれている。
床には、古代文字のような模様。
そして、中央には大きな魔力装置が設置されていた。
「……ここ、何だろう?」
私は画面を見つめた。
そのとき。
空間の奥から、淡い光が集まり始めた。
光はゆっくりと形を変え、やがて――。
ゴゴゴゴゴ……!
地面が震えた。
巨大な岩石が、ゆっくりと動き始める。
いくつもの岩が重なり、太い腕と脚を形作っていく。
そして、中央に埋め込まれた大きな魔力結晶が、青白く輝いた。
「……えっ?」
私は画面を見つめた。
岩石の巨体。
石でできた腕。
巨大な足。
そして、結晶の光を宿した頭部。
地の大精霊だった。
「……あっ!」
思わず声が出た。
ゴーレムのような姿をした大精霊が、ゆっくりとこちらを向いた。
『……勇者よ』
低く、重たい声が響く。
その声は、洞窟全体を震わせるようだった。
『よくここまで来た』
「……はい!」
私は少し緊張しながら頷いた。
大精霊の隣には、契約者らしき人物が立っていた。
その後ろには、数人の兵士たち。
どうやら、先行して洞窟を調査していた精霊の契約者たちのようだ。
『ここまで来たということは、外の魔物を倒してきたのだな』
「は、はい……!」
契約者がこちらを見た。
大精霊が静かに頷く。
『よく来ました。ここから先は、私たちもまだ調査しきれていない領域です』
「……まだ、奥があるんですか?」
『ええ。洞窟の最深部には、ダンジョンの核が存在しているはずです』
その言葉に、私は画面を見つめた。
ダンジョンの核。
そして、魔物が外へ出てきている原因。
もしかすると、この先にすべての答えがあるのかもしれない。
「……よし!」
私はコントローラーを握り直した。
「一緒に、奥まで調査しましょう!」
画面の中で、勇者と仲間たちが前を向く。
精霊と契約者たちも、静かに頷いた。
洞窟の奥には、まだ何かが隠されている。
そして、その先には――。
……あれ?
私はマップを開いた。
新しい通路が表示されている。
その先に、いくつもの分岐。
「…………」
私はそっとマップを閉じた。
「……あの」
『どうした?』
『まさかw』
「……この先も、迷いそうなんですけど……」
『もう迷ってるw』
『ピン置こうなw』
『今度こそ忘れるなよw』
「わ、忘れません!」
……たぶん。
こうして、クロの洞窟探索は、さらに奥へと続いていくのだった。
今回は巨大蜘蛛との戦闘回でした!
毒攻撃まで仕掛けてくる蜘蛛に、クロは大パニック。それでも仲間たちと連携し、なんとか撃破することができました。
そして、洞窟の奥でようやく地の大精霊と契約者たちに合流。ここから調査も本格的に進んでいきます。
次回も、クロたちの冒険を見守っていただけたら嬉しいです!
面白かった、続きが気になると思っていただけたら、感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!




