# 第二話 テスト配信のはずだったんですが!?
こんばんは! 多分最初で最後の一日2話投稿です! 今回も面白く書けたと思うので見てみてください!
数日後。
「…………届いちゃった」
部屋に届いた大きな段ボール箱。中身は配信用のマイクや機材一式だ。
全部、深夜のテンションで私が買ったもの。
「……本当に配信するんだ、私」
推しの月城ルナみたいに、誰かを笑顔にできたらいいな。そう思ったのは本当だ。
でも、私は人と話すのが苦手なのだ。
コメントが来たらどうしよう。何を話せばいいんだろう。
「……ま、まあ、今日はテストだけだから!」
そう。今日は機材の動作確認。誰にも見せないのだから、緊張する必要はない。
……うん。大丈夫!
* * *
機材を接続し、配信ソフトを起動する。
画面には、黒いオーバーサイズのパーカーを着た黒猫の女の子が映っていた。
黒髪に青紫色の瞳、ぴょこんと立った猫耳。
私のVTuberモデルだ。
「わ……すご……!」
顔を傾けると、画面の中の黒猫も首を傾ける。口を開けば口が動き、瞬きをすれば目を閉じる。
「かわいい……」
自分で注文したモデルなのに、改めて見ると感動してしまう。
この子が、私の分身になるんだ。
「……よし!」
私は配信設定を確認した。
タイトルは『【テスト】初めまして、猫野クロです』。
配信先は大手動画配信サイト VTube。マイクもゲーム画面も問題なし。
公開範囲も非公開に設定した。
「完璧!」
私は配信開始ボタンを押した。
『ライブ配信を開始しました』
「よし、テスト開始!」
マイクに向かって声を出してみる。
「あ、あー……マイクテスト。聞こえ……ないよね?」
当然、返事はない。
「……うん。そりゃそうだよね」
次はゲーム画面の確認だ。私はNEXCを起動した。
* * *
「よし、ちゃんと映ってる!」
幻想的な景色と近未来的な銃器が共存するオンラインゲーム『NEXC』。普段から遊んでいるゲームだし、テストならいつもどおりでいいだろう。
私はキャラクターを操作して、フィールドを探索し始めた。
すると、建物の陰から敵プレイヤーが飛び出してきた。
「うわぁぁぁ!? 待って待って!!」
慌てて物陰に飛び込み、敵の攻撃を避ける。
「なんでいるの!? さっきまでいなかったじゃん!!」
悲鳴を上げながらも、敵が角から顔を出した瞬間、照準を合わせて引き金を引く。
銃声。
敵が倒れた。
『敵プレイヤーを撃破しました』
「…………ふぅ。生き残れた……」
私はほっと息を吐いた。
その後も敵に遭遇するたびに悲鳴を上げたが、気づけば何人もの敵を撃破していた。
「はぁ……危なかったぁ」
椅子にもたれ、満足げに息をつく。
無意識に少しドヤ顔になっていたことには、まったく気づいていない。
――一方、配信画面の向こう側では。
『悲鳴とエイムの温度差すごくない?』
『めっちゃ焦ってるのに敵が溶けていくw』
『これ本当にテスト配信?』
コメントが流れていた。
しかし、本人はコメント欄を一度も見ていなかった。
「……やっぱりNEXC、面白いなぁ」
さて、そろそろテスト終了だ。
配信ソフトに戻り、終了ボタンを探す。
「えーっと、これかな?」
その瞬間――。
**チャリン♪**
「……ん?」
聞き慣れない音が鳴った。
画面の隅に表示されていたのは、見覚えのない通知。
『匿名さんからスーパーチャットが届きました!』
「…………え?」
私はゆっくりと画面を見つめた。
『ライブ配信中』
『視聴者数:4』
「………………えっ!?」
慌てて設定を確認する。
公開範囲。
配信状態。
何度見ても、結果は変わらない。
――公開。
「な、なんで!? 非公開にしたつもりだったのにぃぃぃ!!」
しかも、スーパーチャットまで届いている。
『匿名さん:500円 エイムすごかったです! 次の配信も楽しみにしてます!』
「…………」
五百円。
私の配信に、お金を払ってくれた人がいる。
しかも、次も楽しみにしている、と。
……待って。
ということは、さっきの悲鳴も? 独り言も? あのドヤ顔も!?
「うわあああああああ!!」
恥ずかしい! 無理! もう二度と配信できない!!
「ど、どうしよう!? どうすればいいの!?!?」
とにかく配信を止めなきゃ!
終了ボタンはどこ!?
震える手でマウスを動かすけれど、まったく見つからない。
そのとき、視界の端にパソコンの電源ケーブルが見えた。
「……あ」
これを抜けば、パソコンが止まる。
配信も止まる。
そう考えた瞬間、私は勢いよく立ち上がった。
「ご、ごめんなさいぃぃぃ!!」
**ぶちっ。**
画面が真っ暗になった。
* * *
『…………え?』
『画面消えたwww』
『クロちゃん!?』
『まさかの物理切断w』
突然の暗転に、視聴者たちは困惑する。
やがて配信は終了した。
一方、その頃。
「…………やっちゃった」
真っ暗なモニターの前で、私は立ち尽くしていた。
パソコンは沈黙している。
部屋も静まり返っている。
「……はぁぁぁ……」
私はその場にへたり込んだ。
もう二度と配信なんてできない。
……できない、はずだった。
頭の中に、あのメッセージが浮かんでくる。
『エイムすごかったです! 次の配信も楽しみにしてます!』
私の配信を、楽しんでくれた人がいた。
ほんの数人かもしれない。それでも、誰かが見てくれて、面白いと思ってくれた。
「……また、やってみてもいいのかな」
小さく呟き、私は顔を上げた。
次は、ちゃんと設定を確認しよう。
それから、絶対に電源ケーブルは抜かない。
「……うん!」
こうして、陰キャでコミュ障な女子高生・小鳥遊詩乃の初配信は、最悪の形で幕を閉じた。
――けれど、猫野クロのVTuber生活は、確かに一歩前へ進んでいた。
お読みいただきありがとうございます! 今回も主人公を可愛く書けたと思います
では第三話で




