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# 第十三話 気になっていた人に話しかけたら仲間になりました!

前に街の路地で見かけた、名前の分からない謎の女性。


気になっていたクロがもう一度話しかけてみると、ついに仲間に……?


そして、パーティーが四人になったことで、メインクエストにも変化が!


ぜひお楽しみください!



 古代遺跡の探索を終えた翌日。


 私は、光の国イルミナスの冒険者ギルドに来ていた。


「……えっと、回復薬は……」


 メニューを開いて、持ち物を確認する。


 回復薬、よし。


 装備、よし。


 古代遺跡で拾った用途不明の魔力結晶も、ちゃんと残っている。


 ……うん。準備は大丈夫そう!


『クロちゃん、アイテム確認めっちゃ慎重w』


『回復薬ちゃんと常備してるの偉い』


『そろそろ次の冒険かな?』


「そ、そうですね……! たぶん……!」


 コメントに返事をしながら、私は少しだけ考え込んだ。


 チュートリアルを終えて、冒険者ギルドにも登録した。


 仲間もガルドとフィリアがいる。


 ……あとは、メインクエストを進めていけばいいはず。


 そう思ったところで、ふと、ある人物のことを思い出した。


「……あっ!」


『ん?』


『何か思い出した?』


「ま、前に……街で、気になる人を見かけたんです……!」


 そう。


 冒険者ギルドを出て、街を探索していたときのこと。


 細い路地の奥にある、古びた建物。


 その前に置かれた木箱に、フード付きのローブを着た女性が座っていた。


 頭上に表示されていた名前は『???』。


 話しかけても、


『今はまだ、話すことはない』


 としか返ってこなかった、不思議な人物だ。


「……あの人、今もいるのかな」


『あー! 前に見つけた謎のNPCか!』


『名前が???だった人ね』


『あれ、何か条件があるんじゃない?』


「そ、そうかもしれません……!」


 私はゲーム内の地図を開いた。


 あのときは、特にイベントも起こらなかった。


 でも、名前が表示されないキャラクターなんて、どう考えても気になる。


 ……もう一度、話しかけてみたい。


「……ちょ、ちょっと行ってきます!」


『いってらっしゃいw』


『今度こそ何かあるといいな!』


 私はコントローラーを握り直した。


 よし!


 今度こそ、何か分かるかもしれない!


     * * *


 大通りを抜け、細い路地へ入る。


 石畳の道の両側には古びた建物が並び、壁にはところどころ蔦が絡まっていた。


 前に来たときと、ほとんど変わらない景色。


 そして――。


「あっ……! い、いた……!」


 路地の奥。


 古びた建物の前に置かれた木箱に、一人の女性が座っていた。


 フード付きのローブを身につけているが、顔は隠していない。


 長い髪に、整った顔立ち。


 どこか気品を感じさせる雰囲気の女性だった。


 頭上に表示されている名前は、前と同じ。


『???』


「……やっぱり、ここにいたんだ」


 思わず、ほっと息を吐いた。


 別に、いなくなっていたら困るわけじゃない。


 ないんだけど……。


 気になっていたキャラクターが、ちゃんと同じ場所にいると、なんだか嬉しい。


『クロちゃん、隠しキャラ探し楽しそうw』


『今度こそ何か起きるか!?』


『前回は何もなかったからなぁ』


「……よ、よし」


 私は女性の前まで歩いていった。


 そして、声をかけようとして――。


「…………」


 止まった。


 ……あれ?


 何て話しかければいいんだろう。


 前にも一度話しかけているんだから、普通に挨拶すればいいだけ。


 それだけなのに。


 知らない人に話しかけるのって、やっぱり緊張する。


 相手はゲームのキャラクターなのに!


「……うぅ」


『ゲーム内でも人見知り発動w』


『クロちゃん、頑張れ!』


『ボタンを押すだけだぞw』


「わ、分かってます……!」


 私は深呼吸した。


 すぅ……はぁ……。


 よし。


 いくよ。


「あ、あの……こんにちは……」


 女性が、ゆっくりと顔を上げた。


「……あなたは、以前の」


「えっ……!?」


 覚えていてくれた!?


 思わず声が裏返った。


 前に一度話しかけただけなのに、ちゃんと覚えてくれていたらしい。


 ……いや、ゲームのイベントだから、そういう仕様なのかもしれないけど!


 それでも、ちょっと嬉しい。


「え、えっと……その……」


 言葉が続かない。


 何か話さなきゃ。


 でも、何を?


 前に話しかけたときは、今はまだ話すことがないって言われたんだよね。


 じゃあ、今は……?


 女性は、私の様子をしばらく見ていた。


 やがて、静かに口を開いた。


「……あなたは、冒険者なのですね」


「は、はいっ! あ、えっと……そう、です……!」


 思わず背筋が伸びた。


 いや、そんなに緊張しなくてもいいのに!


 相手はNPC!


 NPCなんだから!


 ……分かってるのにぃ!


『クロちゃん、面接みたいになってるw』


『冒険者登録済みなのに新人感すごい』


『落ち着いてwww』


「お、落ち着いてます……!」


 全然落ち着いていなかった。


 女性は少しだけ視線を落とし、何かを考えるように黙り込んだ。


 それから、意を決したように顔を上げた。


「あの……もしよろしければ、私も皆さんの旅に同行させてもらえませんか?」


「…………えっ?」


 一瞬、頭が真っ白になった。


 今……なんて?


 一緒に旅をしたい?


 つまり……。


「な、仲間に……?」


 思わず聞き返してしまった。


 女性は小さく頷いた。


「はい。私の魔法も、皆さんのお役に立てると思います」


 ……ええええっ!?


 仲間になってくれるの!?


 ずっと気になっていたキャラクターが!?


 しかも、魔法使いさん!?


 やったぁぁぁ……!


 ……いや、待って。


 返事!


 返事をしなきゃ!


「わ、私は……!」


 声が裏返った。


 恥ずかしい!


 でも、ここで黙っていたら、せっかくの申し出に返事ができない!


「……えっと、その……!」


 私は一度、深呼吸した。


「……い、一緒に……来てくれたら……う、嬉しいです……!」


 最後のほうは、ほとんど消えそうな声になってしまった。


 それでも、ちゃんと言えた。


 女性は少し驚いたように目を見開き、それから柔らかく微笑んだ。


「……ありがとうございます」


 その笑顔を見た瞬間、私まで嬉しくなってしまった。


 やった……!


 新しい仲間が増える!


『クロちゃん、めっちゃ嬉しそうwww』


『声ちっちゃくなってるのかわいいw』


『仲間加入きたー!』


『これは嬉しいイベント』


「うぅ……! だ、だって……嬉しいんですもん……!」


 私は顔が熱くなるのを感じながら、コメント欄から視線をそらした。


 ……もう!


 みんな、見てないでくださいぃ!


 いや、配信だから見てるんだけど!


 そんなことを考えていると、ガルドが口を開いた。


「俺も異論はない。だが、旅は危険も多いぞ。それでもいいのか?」


「はい。覚悟はできています」


 女性は迷いなく答えた。


 フィリアも頷く。


「私も賛成です。先ほどの魔法も見事でしたし、心強い仲間になってくれると思います」


 ……よかった。


 みんなも賛成してくれている。


 私はほっと息を吐いた。


「……よ、よろしくお願いします……!」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 女性は丁寧に頭を下げた。


 そして、ふと表情を変えた。


「あの……一つ、お願いがあります」


「……な、何でしょう?」


「本当の名前を、そのまま名乗るわけにはいかないんです」


 ……名前を隠さなきゃいけない事情があるんだ。


 私は少しだけ気になった。


 でも、無理に聞き出すことでもない。


「ですから……エルフィ、と呼んでください」


「……エ、エルフィちゃん?」


「はい。どうか、その名前でお願いします」


「……わ、分かりました。エルフィちゃん……ですね」


 名前を呼ぶだけなのに、ちょっと緊張してしまった。


 でも、これから一緒に旅をする仲間なんだから。


 少しずつ、話せるようになれたらいいな。


「……よ、よろしくね、エルフィちゃん!」


「はい!」


 エルフィは、安心したように微笑んだ。


 その瞬間、視界の端にシステムメッセージが表示された。


『???が仲間になりました!』


『パーティーに新しい仲間が加わりました』


 私は慌ててパーティー画面を開いた。


 そして――。


『エルフィ』


 先ほどまで『???』だった名前が、変わっていた。


「わぁぁ……!」


 思わず声が漏れた。


 こういう演出、いいなぁ!


 ずっと気になっていたキャラクターが、ついに仲間になったんだ!


 これからは戦闘でも一緒に戦えるし、旅の途中でどんな会話をするのかも楽しみ!


 私は何度もパーティー画面を確認してしまった。


『名前が変わった!』


『こういう演出好き』


『クロちゃん、さっきから画面見つめすぎw』


「だ、だって……! 気になってた子が仲間になったんですよ……!」


 嬉しい。


 本当に嬉しい。


 ……うん。


 このゲーム、やっぱり買ってよかった!


     * * *


 エルフィが仲間に加わり、パーティーは四人になった。


 勇者である私。


 大剣使いのガルド。


 魔法使いのフィリア。


 そして、謎の多い魔法使い、エルフィ。


 ……改めて考えると、すごいメンバーになった気がする。


 私はパーティー画面を閉じ、メニューを確認した。


 すると、その瞬間。


 画面の端に、見慣れた光の精霊がふわりと浮かび上がった。


 小さな光が、いつもより強く輝いている。


『メインクエストが更新されました』


「……えっ?」


 思わず画面を見つめた。


 続いて、新しい表示が現れる。


『チュートリアルを完了しました』


『パーティーメンバーが4人になりました』


『次の目的地:水の国アクエリア』


「……あっ! そ、そういうこと!?」


 チュートリアルを終えて、仲間も四人になった。


 それで、次のメインクエストが解放されたんだ!


 なるほど……!


 今までは、冒険の準備を整える段階だったんだね。


『メインストーリー解放!』


『ようやく次の国へ!』


『寄り道も楽しかったからヨシ!』


「う、うん……! た、楽しみ……!」


 私はクエストの詳細を開いた。


『水の国アクエリアへ向かい、現地の状況を調査してください』


『水の国では、現在、深刻な問題が発生しているようです』


「……深刻な問題、かぁ」


 いったい何が起きているんだろう。


 少し不安だけど、それ以上に楽しみだった。


 新しい国。


 新しい街。


 新しい仲間との冒険。


 考えるだけで、わくわくしてくる。


『クロちゃん、次の国でも寄り道しそうw』


『まずはメインクエストを進めような!』


「……よ、寄り道も大事ですから……!」


 思わず言い返してしまった。


 ……まあ、否定はできない。


 だって、気になるものは気になるんだもん!


     * * *


 翌朝。


 私たちは、光の国イルミナスの東門に集まっていた。


 目的地は、水の国アクエリア。


 回復薬も補充したし、装備も確認した。


 パーティーは四人。


 準備は万端だ。


「忘れ物はないな?」


「だ、大丈夫です!」


「問題ありません」


「私も大丈夫です」


 ガルド、フィリア、エルフィがそれぞれ答える。


 私は最後に、街のほうを振り返った。


 最初にこの国へ来たときは、何も分からなかった。


 操作方法も、戦闘の仕組みも、この世界のことも。


 それでも、少しずつ冒険を進めて、仲間も増えた。


 そして今、次の国へ向かおうとしている。


「……よし!」


 私はコントローラーを握り直した。


「そ、それじゃあ……出発、です!」


 門をくぐると、光の精霊が小さく輝いた。


『メインクエスト:水の国アクエリア』


『目的:水の国の異変を調査する』


『水の国では、現在、深刻な問題が発生しているようです』


「……どんな問題なんだろう」


 私は画面の向こうに広がる道を見つめた。


 これから、どんな冒険が待っているんだろう。


 どんな人たちに出会えるんだろう。


 そして、どんな景色が見られるんだろう。


 考えるだけで、胸が弾んだ。


 その隣で、エルフィは静かに歩いていた。


 時折、彼女は後ろを振り返っていた。


 まるで、もう戻れない場所を確かめるように。


 ……何か事情があるんだろうな。


 でも、今は無理に聞かなくてもいい。


 いつか話してくれる日が来たら、そのときに聞こう。


 私は新しい仲間たちとともに、水の国アクエリアを目指して歩き始めた。


 ――こうして。


 チュートリアルを終え、仲間を集めたクロの冒険は、新たな国へと進んでいく。


 その先に待つのが、どんな出会いと試練なのか。


 今の私には、まだ分からなかった。


今回は、ずっと気になっていた謎の女性が、ついに仲間になりました!


これでパーティーは四人に。チュートリアルも終わり、いよいよ次の国へ向かいます!


エルフィの秘密も、今後の冒険で少しずつ明らかになっていく予定です。


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