# 第十二話 回復薬は命綱! 遺跡のボスが硬すぎませんか!?
今回は、いよいよ古代遺跡のボス戦!
守護ゴーレムに、クロたちはどう立ち向かうのか……!?
そして、ボス撃破の報酬とともに、新たな謎も明らかに……?
ぜひ最後までお楽しみください!
「……えっと。つまり、これって昔の人たちが作った記録ってこと?」
私は、再生を終えた古代の装置を見つめていた。
空に浮かぶ島々。
九つの属性を示す紋章。
そして、最後に映し出された黒い影と、崩れ落ちる建造物。
……うん。
分からないことが多すぎる。
「この記録だけでは、何が起きたのかまでは分からんな」
ガルドが腕を組んだ。
「ただ、最後に映っていた影……あれが何か関係している可能性はありそうですね」
リリアも難しそうな顔をしている。
せっかく重要そうな記録を見つけたのに、謎が増えただけだった。
「……ま、まあ! 今は先に進もう!」
私は気を取り直して、奥へと続く通路を見た。
この先には、いったい何があるんだろう。
お宝とか?
レア装備とか?
……いやいや!
別に、宝箱を期待しているわけじゃないからね!?
私は期待に胸を膨らませながら、通路を進んだ。
* * *
通路の先には、巨大な石造りの扉があった。
扉の中央には、九つの属性を示す紋章が刻まれている。
「わぁ……すごい。いかにも重要な場所って感じ……」
近づいてみると、扉の脇に小さな装置があることに気づいた。
私は恐る恐る触れてみる。
――ゴゴゴゴゴ……!
「ひゃあっ!?」
地面が揺れ、重たい音を立てながら扉が開いていく。
その向こうには、広大な円形の部屋が広がっていた。
天井は高く、壁には青白い光を放つ結晶が埋め込まれている。
そして、部屋の中央には。
巨大な岩の塊が、鎮座していた。
「…………え?」
その岩が、ゆっくりと動いた。
ゴゴ……。
ゴゴゴゴ……!
岩の塊が立ち上がる。
巨大な腕。
太い脚。
そして、胸部には九つの紋章に囲まれた魔力結晶。
その全身が淡く輝き、頭部に埋め込まれた二つの結晶が、こちらを捉えた。
『侵入者ヲ確認』
『研究所・最終防衛機構』
『守護ゴーレム、起動』
「…………」
私は、そっと一歩後ずさった。
「……え、待って」
ゴーレムの頭上に、巨大なHPゲージが表示される。
その名前は――。
『古代遺跡の守護者』
「ボ、ボスじゃん!?」
思わず声が裏返った。
「いやいやいや! 聞いてない! こんなの聞いてないよぉぉぉ!!」
コメント欄が一気に流れ始める。
『ボスきたあああ!』
『でっかwww』
『絶対強いやつじゃん』
『クロちゃん、がんばれ!』
「が、頑張るけどぉ……!」
私は慌てて装備とアイテムを確認した。
こういうときこそ、準備が大事。
私は怖がりだ。
何が起こるか分からない状況で、回復薬をケチるなんてできない。
だからこそ、回復薬は常に持ち歩いている。
ただし、まだゲームを始めたばかり。
高級品を好きなだけ買えるほど、お金に余裕があるわけではない。
現在の所持数は――。
HP回復薬。
最上級、一個。全回復。
上級、四個。約八割回復。
中級、八個。約四割回復。
下級、十個。約二割回復。
そして、MP回復薬も同じ数。
「……よし」
私は小さく頷いた。
「最上級が一個ずつあるし、なんとかなる……はず!」
『回復薬の数、めっちゃ管理してるw』
『最上級一個しかないのが不安なんだろうな』
『まだ序盤だし、そんなもんじゃない?』
「だって、最上級って高いんだもん……!」
そうなのだ。
全回復できるのは魅力的だけど、お値段も立派。
できることなら、もっとたくさん買っておきたい。
でも、今は無理。
だからこそ、今ある分を大切に使うのだ。
「……よし! 絶対に無駄遣いしない!」
私は決意を固めた。
直後。
ゴーレムの胸部が輝いた。
『防衛行動ヲ開始』
「ひゃああああ!?」
* * *
ゴーレムの胸部から、赤い光が放たれた。
次の瞬間、炎をまとった魔法弾が飛んでくる。
「うわっ!?」
私は慌てて回避する。
魔法弾は床にぶつかり、小さな炎を散らした。
続いて、水の弾丸。
風の刃。
地面から突き出す岩の槍。
氷の礫に、緑色の魔力弾。
さらに、雷光と光の弾、闇をまとった黒い球体まで飛んでくる。
「ちょっ、ちょっと待って! 属性多くない!?」
ゴーレムは、次々と異なる属性の魔法を放ってくる。
けれど。
……あれ?
思っていたより、ダメージが小さい。
魔法弾がかすめても、HPは少ししか減らない。
攻撃の間隔も長く、回避する時間は十分にある。
「……あれ? もしかして、そんなに強くない?」
『フラグやめろw』
『魔法は控えめっぽいな』
『でもボスだぞ、油断するなよ!』
「わ、分かってるってば!」
私は勇者を操作し、光属性の攻撃を放った。
「ライト!」
光の弾が飛び、ゴーレムの胸部に命中する。
しかし。
『守護ゴーレムに与えたダメージ:わずか』
「…………え?」
ほとんど効いていなかった。
「ちょっと!? 私の攻撃、弱すぎない!?」
何度か攻撃してみるものの、HPゲージはほんの少ししか減らない。
どうやら、あの岩の装甲が相当硬いらしい。
ならば、と別の手を試そうとした、そのときだった。
ゴーレムが大きく腕を振り上げた。
「……え?」
その腕が、勢いよく振り下ろされる。
「うわあああああ!?」
私は必死に回避した。
――ドゴォォォン!!
床が砕け、破片が飛び散る。
すぐそばを通った衝撃で、勇者のHPが大きく減った。
「いったぁ!? ちょっと待って! 今の威力おかしくない!?」
『物理攻撃は強いタイプか!』
『魔法が弱い代わりに殴りが痛いんだな』
『当たったら危なそう』
なるほど。
魔法は弱めだけど、物理攻撃は別格。
しかも、あの巨体から繰り出される攻撃だ。
まともに受けたら、あっという間にやられてしまう。
「……よし。ガルドさん、お願いします!」
私はキャラクター切り替えボタンを押した。
――ガルド!
大剣を構えた戦士が、ゴーレムへと向かっていく。
「ガルドさん! あの岩、砕けませんか!?」
もちろん、ゲーム内のガルドは音声に応じて動くわけではない。
けれど、私は操作しながら、つい声をかけてしまう。
そして、大剣を振り下ろした。
――ガキィィィン!!
硬い音が響いた。
「えっ!?」
ゴーレムの腕に、大剣が食い込んでいた。
岩の表面に亀裂が走る。
続けてもう一撃。
――バキィッ!
装甲の一部が砕け、床に落ちた。
『部位破壊!』
「うそっ!? 壊れた!?」
画面に表示された文字を見て、私は思わず声を上げた。
ガルドの大剣には、破砕効果がある。
岩や鉱石のような硬い敵に対して、装甲を破壊しやすいのだ。
普通の攻撃ではなかなか傷つかない相手でも、ガルドなら亀裂を入れられる。
私はさらに大剣を振るった。
ゴーレムの腕に、次々と亀裂が広がっていく。
そして、ついに。
――ガシャァァン!
右腕の装甲が大きく砕け散った。
『右腕装甲、破壊!』
『部位破壊ボーナス!』
『守護ゴーレムがスタンしました!』
「……えっ?」
ゴーレムの巨体が大きく傾いた。
振り上げかけていた腕が垂れ下がり、頭部の光が明滅する。
どうやら、部位破壊によって体勢を崩し、一時的に動けなくなったらしい。
「い、今のうちに攻撃だぁぁぁ!」
私は慌てて勇者に切り替えた。
今度は間違えない!
「ファイア!」
炎の魔法がゴーレムに直撃する。
さらに光属性の攻撃を叩き込む。
リリアにも切り替えて、魔法を連続で放った。
「リリアちゃん、お願い!」
魔法が命中し、ゴーレムのHPゲージが一気に削れていく。
『部位破壊からのスタン、強い!』
『ガルドで隙を作って、勇者とリリアで火力出すのいいな!』
『クロちゃん、今の連携うまかったぞ!』
「ほ、本当!? 今の、うまくできてた!?」
コメントを確認する余裕があるくらいには、少し落ち着いてきた。
……いや、落ち着いている場合じゃない!
スタンが解除される前に、もっと攻撃しなきゃ!
「えっと、次は……ガルドさん!」
キャラクター切り替え!
――ガルド!
「……あれ?」
またガルドだった。
勇者に戻すつもりが、操作を間違えたらしい。
「ちょ、ちょっと待って!? なんでガルドさんばっかり!?」
『ガルド酷使されてて草』
『もうガルド一人でよくない?w』
「よくないよぉぉぉ!!」
そうこうしているうちに、ゴーレムが再び動き始めた。
『防衛機構、再起動』
「ひゃっ!? もう終わり!?」
私は慌てて距離を取った。
* * *
それからも、戦闘は続いた。
ゴーレムは何度も属性を切り替え、魔法弾を放ってくる。
ときには大きな雷を落とし、ときには地面から岩の槍を突き出す。
けれど、魔法攻撃の威力は控えめ。
回避さえできれば、致命傷にはなりにくい。
一方、物理攻撃は相変わらず強烈だった。
腕の振り下ろしを受ければ大ダメージ。
踏みつけを食らえば、さらに危険。
私は必死に回避しながら、少しずつ装甲を破壊していった。
右腕の次は脚。
ガルドの大剣が叩き込まれると、脚部の岩が砕け散った。
『脚部装甲、破壊!』
『守護ゴーレムが転倒しました!』
「わああっ!? また倒れた!」
ゴーレムが体勢を崩し、巨体を床に叩きつける。
その衝撃で部屋全体が揺れた。
私は慌てて距離を取ろうとしたものの、攻撃のチャンスを逃すわけにもいかない。
「い、今だぁぁぁ!」
勇者に切り替えて魔法を放つ。
リリアの魔法も叩き込む。
さらにガルドの大剣で追撃!
ゴーレムが起き上がるまでの間に、HPゲージを大きく削ることができた。
『脚部破壊はスタン時間が長いのか!』
『大剣の役割が分かりやすくていいな』
『クロちゃん、今度はちゃんと切り替えられてるw』
「で、できてる! 私、成長してるかも!」
少しだけ自信が湧いてきた。
……ほんの少しだけ。
だって、ゴーレムはまだ元気なのだ。
しかも、胸部のシールドは健在。
このまま攻撃を続けても、倒しきるには時間がかかりそうだった。
「……よし。次は胸を狙おう!」
私はガルドを操作し、ゴーレムの胸部へと接近した。
大剣を振り上げる。
――ドゴォォン!
強烈な一撃が、胸部装甲に直撃した。
亀裂が走る。
もう一撃。
さらに一撃。
そして。
――バキィィィン!!
胸部の装甲が砕け散った。
『胸部装甲、破壊!』
『防御シールド、出力低下!』
『守護ゴーレムがスタンしました!』
「今だぁぁぁ!!」
私は勇者に切り替えた。
……今度こそ、間違えていない!
「ファイア!」
炎の魔法が放たれる。
赤い炎が、露出した魔力結晶に直撃した。
――バチィィィッ!!
ゴーレムの体が大きく揺れる。
『守護ゴーレムに大ダメージ!』
「よっしゃああああ!!」
さらにリリアの魔法を叩き込む。
魔力結晶が激しく明滅した。
ゴーレムのHPゲージが、一気に減っていく。
あと少し。
あと少しで倒せる!
「ガルドさん! 最後、お願いします!」
私はガルドに切り替え、大剣を構えた。
――ドゴォォォン!!
大剣が魔力結晶を捉える。
亀裂が広がり、ゴーレムの全身が大きく揺れた。
『防衛機構、停止』
次の瞬間。
全身の岩が崩れ落ち、巨大な体が床へと沈んだ。
『古代遺跡の守護者を撃破しました!』
「…………」
私は、しばらく画面を見つめていた。
そして。
「……勝ったぁぁぁぁぁ!!」
思いきり叫んだ。
怖かった!
めちゃくちゃ怖かった!
でも、勝てた!
『撃破おめでとう!』
『ガルドの大剣、強かったな!』
『部位破壊からのスタンが気持ちよかった!』
『クロちゃん、操作うまくなってる!』
『途中ずっとガルドだったけどw』
「そこは言わないでぇぇぇ!!」
* * *
戦闘が終わると、ゴーレムが崩れた場所に、いくつもの光が浮かび上がった。
宝箱。
魔力晶。
装備品。
そして、床いっぱいに散らばる金貨。
「…………」
私は、ゆっくりと画面に近づいた。
「……え?」
宝箱を開く。
『古代の魔力晶を入手しました』
『高性能装備を入手しました』
『金貨を大量に入手しました』
「………………えっ!?」
報酬欄を確認する。
経験値も大量に獲得していた。
レベルアップの表示まで出ている。
「えええええっ!? こんなにもらえるの!?」
『ボス報酬うまいなw』
『装備も出てるじゃん!』
『クロちゃん、金貨の数見てw』
「お、お金……!」
私は金貨の獲得量を確認した。
……すごい。
これだけあれば、回復薬をもっと買える。
最上級だって、今より多く持てるかもしれない。
「……ふふっ」
思わず笑みがこぼれた。
これで、回復薬を補充できる!
もっと安心して冒険できる!
「やったぁぁぁ! これで回復薬が買えるぅぅぅ!!」
『喜ぶところそこなの!?w』
『レア装備より回復薬www』
『クロちゃん、どんだけビビりなんだよw』
「だ、だって! 回復薬は命綱なんだから!」
私は胸を張った。
いや、本当に大事なのだ。
HPが減ったときに回復できる。
MPが足りなくなったときにも回復できる。
これほど安心できるものはない。
……最上級回復薬、もう一個くらい買えないかな。
私はさっそく、街に戻ったあとの買い物計画を立て始めた。
* * *
報酬を回収し終えた私は、部屋の奥にある装置を見つけた。
ゴーレムが守っていた場所だ。
装置の中央には、先ほどの記録装置と同じ紋章が刻まれている。
私は、古代の魔力晶を装置に近づけた。
――ピィィィン……。
淡い光が広がる。
そして、空中に映像が浮かび上がった。
そこに映っていたのは、先ほどの記録と同じ、空に浮かぶ島々だった。
しかし、今度は違う。
島々の間を、巨大な光の柱がつないでいる。
人々が魔法を使い、装置を操作していた。
九つの属性の紋章が、それぞれ別の場所で輝いている。
そして、映像の中央に。
巨大な塔が映し出された。
『九属性制御計画――最終段階へ移行』
機械音声が響く。
『制御装置、出力上昇』
映像の中の光が強くなる。
次の瞬間。
画面が乱れた。
黒い影が、塔を覆い尽くしていく。
光が消え、島々が揺れた。
『警告――制御不能』
『全施設、緊急停止――』
そこで映像が途切れた。
「…………」
私は、言葉を失っていた。
いったい、昔の人たちは何をしようとしていたのだろう。
そして、あの黒い影は何だったのか。
「……この遺跡、ただの研究施設じゃないんだね」
小さく呟く。
ガルドも、リリアも、真剣な表情で装置を見つめていた。
「この技術が失われた理由……あの影と関係があるのかもしれませんね」
リリアが静かに言った。
「ふむ。もしそうなら、我々が見たゴーレムも、ただの番人ではなかったのかもしれんな」
ガルドが頷く。
……うーん。
また謎が増えた。
でも、今はひとまず。
「……帰ったら、回復薬を補充しよう」
『そこに戻るのかwww』
『古代文明の謎より回復薬w』
「だ、だって! ボス戦で減ったんだもん!」
私はアイテム欄を開いた。
HP回復薬は、少し減っている。
MP回復薬も、いくつか使ってしまった。
「……次の冒険までに、ちゃんと補充しなきゃ」
私は決意を新たにした。
古代文明の謎も気になる。
この先に何が待っているのかも知りたい。
でも。
回復薬が足りない状態で進むなんて、絶対に無理!
――こうして。
クロは古代遺跡の守護者を撃破し、貴重な報酬と新たな謎を手に入れた。
そして何より。
回復薬を買い足すためのお金も、たっぷり手に入れたのだった。
「……よし。次は最上級をもう一個ずつ買おう!」
『結局それwww』
古代文明の謎が深まる一方で、クロの回復薬へのこだわりも、ますます深まっていくのだった。
古代遺跡の守護者、ついに撃破!
ガルドの大剣による部位破壊とスタンが大活躍でしたね!
そして、少しずつ明らかになる古代文明の謎……。あの黒い影はいったい何なのでしょうか?
ちなみにクロは、レア装備よりも回復薬の補充が気になっているようです(笑)
次回も、クロたちの冒険は続きます!
面白かった、続きが気になると思っていただけたら、感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです!




