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4/5

雷竜vs海緑水流

エターナルが好きでスタンダードに馴染めない人はいる。

彼もそんなひとりだ。

スタンダードシンパの私としては、ことあるごとに引き合いに出すスタンダード下げが気にならないわけではないが、

彼の持っているエターナル愛には一目置いているし、

彼自身もこうやってスタンダードを理解しようと対戦を申し込んでくれたりもする。


「【水流】は大型引けないと話にならないから」

彼はデッキをシャッフルしながら、事故気味の手札でぐずぐずと負けてしまった前の試合について自嘲気味に語る。

引いたカードで試合を組み立てられるのがスタンダードの良さなんだけど…と喉から出そうになった言葉を飲み込む。

言葉にしても伝わらない、ゲームで語ればいいんだから。

次こそスタンダード面白いと言ってくれるようないいゲームをしよう。


彼は先行を選んで手札入れ替えをする。

手札入れ替えは権利なのだけど、不思議と好んでやる人とあまりやらない人がいると感じる。

いい手札が最初に来ない人とくる人というわけではなかろう、

配られた手札に満足しないひとと、それで戦おうと思うひと、気持ちの在りようだと思っている。

どっちがいい悪いという話ではない、そういうタイプが居るなという話。

彼は入れ替えをするタイプのひと、私はしないタイプのひとだ。


私の初期手札


<ヴェロキラント>

<トリプルサンダー>

<ファイアピラー>

<ファイアピラー>


バランスは良くないが、とりあえず2ターン目に召喚するBP-スピリットは確保できているので手札入れ替えはしない。


相手1ターン目


<アロトール>を召喚。


---

アロトール

3(2)/緑/海緑・水精

<1>Lv1 3000 <3>Lv2/真界放 5000

Lv2《真界放》【水流:海緑&コスト8以上】『自分のアタックステップ』【起動:フラッシュ】

このスピリットを疲労させる▶コスト8以上で系統:「海緑」を持つ自分のスピリット1体を指定する。このバトル中、それに緑シンボル1つを追加する。

---


低コストの【水流】持ち。真界放も持っている。

先行1ターン目最善の一手。


自分2ターン目

ドローはラニラヤ、当初の予定に変更はない。


<ヴェロキラント>を召喚、そしてアタック。


---

ヴェロキラント

4(2)/黄/雷竜

<1>Lv1 4000 <2>Lv2 5000

Lv1-2『アタック時』

相手のスピリット1体を指定する。このターン中、それをBP-2000する。その後、それがBP0なら破壊する。

Lv2『自分のエンドステップ』

このターンに自分が系統:「雷竜」を持つマジックカードを使用していたなら、このスピリットを回復できる。

---


BP3000になった<アロトール>でブロックするわけもなく、1ライフを削る。


5-4


相手3ターン目


<サラッカ>を召喚。


---

サラッカ

3(1)/緑/海緑・水精

<1>Lv1 2000 <3>Lv2 3000

Lv1-2『召喚時』

ボイドからコア1個を自分のトラッシュに置く。

【水流】を持つ自分のスピリットがいるなら、かわりにコアをこのスピリットに置く。

---


これもまた最善手。

単体ならトラッシュに置かれるコアが自分の上に乗る。

【水流】を持つ<アロトール>が居るとX相当の効果に化けるのだ。

スタンダード第一弾では厳しく制限されているコアブーストの脱法ルート。


そして二体目の<サラッカ>でさらに脱法コアブースト。

私が迂闊に与えた1コアのため、相手フィールドには2コアブーストしたうえで3体のスピリットが並んだ。

試合巧者はこの好機を逃さない。


二体の<サラッカ>はLv1、<アロトール>はソウルコア以外に1コア乗っていて、ソウルマジックも使えるぞという状態。

<サラッカ>からアタック。

私のフィールド上にあるコアは<ヴェロキラント>上のソウルコア1個だけ。

自壊してまで<トリプルサンダー>を撃つ局面ではない。

ライフで受ける。


4-4


さらに<サラッカ>でアタック。


自壊すれば<ファイアピラー>で個のアタックは止められる。

でもそこまではしない。


3-4


続けて<アロトール>でアタック。


そこまで来るか、やっぱり。

<ファイアピラー>を撃ったとてこのアタックは止められない。

自壊して<トリプルサンダー>を撃つのは期を逸している。

間違いなく彼はここまで計算してアタックを組み立てている。

<アロトール>にアタックされる前に覚悟を決めて<トリプルサンダー>を撃つべきだったのか、

いや間接的に<ヴェロキラント>を始末できたならそれでも彼の優位。

どう転んでも彼の手のひらの上、完全にしてやられた。

スタンダードでは私に一日の長があると指導者気取りになっていたが、エターナルを含めた戦歴では彼には遠く及ばないことを思い知る。


自分4ターン目

ドローは<リバースサンダー>。


スタンダードでは残りライフ2になると、できることが極端に制限される。

ブロッカーを減らすことはもう許されない。

BPマイナスマジックをフル軽減で使用するためにはフィールドに2つシンボルが必要、

ラニラヤを召喚。

コアはまだある、一枚でも多く壁が欲しいところだが無い袖は振れない。

アタックステップに入る。


<ヴェロキラント>アタックで<サラッカ>を破壊。

さらに<リバースサンダー>でもう一体の<サラッカ>も破壊。

相手スピリットは一体になったが、もともと<サラッカ>はコアブ要員、恐らくここまでは相手も計算のうち。


雷竜マジックを使用したことで、エンドステップに<ヴェロキラント>は回復し、2体の壁になる。

心もとないが、これが今の私にできる最大限の守りだ。


相手5ターン目


<マーメイディア・プリンセス>を召喚


---

マーメイディア・プリンセス

5(3)/緑/海緑・渦人

<1>Lv1 5000 <4>Lv2/真界放 7000

Lv1-2『召喚時』

ボイドからコア1個をこのスピリットに置く。

Lv2《真界放》【水流:海緑&コスト8以上】『自分のアタックステップ』【起動:フラッシュ】

このスピリットを疲労させる▶コスト8以上で系統:「海緑」を持つ自分のスピリット1体を指定する。このバトル中、それに緑シンボル1つを追加する。

---


1コアブーストして、真界放BP7000の壁になる。

こちらの手札枚数を確認される。3枚。

アタックには来ない。

さすがに慎重。


自分6ターン目


ドローは<ディヴァエス>

今は一枚でも壁が欲しいところ、迷うことなく召喚。

私も相手手札を確認する。やはり3枚。

緑ならマジックを握っていると考えていい枚数。

しかしこちらも砲台が2体揃い手札にマジックも潤沢にある状態。

攻め込むべきか、受けるべきか少し悩む。

<ヴェロキラント>ならエンドステップに回復できるのでアタックはやり得だ。


アタック、<マーメイディア・プリンセス>を指定してBPマイナス。

これで相手のブロッカー2体はどちらもBP5000。

フラッシュタイミングはお互いになし、ライフで受ける。

相手に相打ちするメリットはないので、これは当然。


ここで歯車が狂った。


アタックステップ終了宣言をしかけたところで思考が止まる。

…しくじった!雷竜マジックを使っていないから<ヴェロキラント>が回復しない!

やむを得ない、<ラニラヤ>もアタックだ。


大プレミである。

そもそも<ヴェロキラント>を回復させるために<ラニラヤ>を疲労させてどうする。

そんな問題ではない。

アタックステップ開始前に考えていたじゃないか、

メイン2でファイアピラー使おうと。

最悪だ。

よりによって、スタンダードの面白さを見せたい試合でやるミスじゃない。


やってしまったプレイを巻き戻すことはできない。

気を取り直してリカバリするしかない。

BPで劣る<ラニラヤ>をブロックしてくれれば、コンバットトリックで巻き返せる。

思った通り、BP5000の<アロトール>でブロックしてくれた。

そうだろう、ライフ2には落としたくないはずだから…

方針が変わった、このターンで相手スピリットを一掃する。


「<トリプルサンダー>で<マーメイディア・プリンセス>を3回指定、破壊します。」

次のフラッシュで<アロトール>のBPも下げてBP勝負に持ち込み破壊。

<ヴェロキラント>を回復させて<ディヴァエス>と共にブロッカーにすれば守り切れる。


対戦相手のフラッシュ。

「<テンタクルアタック>を使用、<ディヴァエス>を重疲労させます」

計算が狂った、ブロッカーが減った、しかしまだ負けたわけではない。


「<リバースサンダー>、<アロトール>を指定、BPマイナス2000します。フラッシュどうぞ」

この瞬間まではまだ勝ち筋があると思っていた。


「<ハイドロフォース>を使用。<アロトール>を指定します」


---

ハイドロフォース

7(4)/緑/海緑

《継召》

トラッシュのEXシンボルを除外し軽減できる。

フラッシュ:

系統:「海緑」を持つ自分のスピリット1体を指定する。このターン中、それをBP+7000する。

その後、このターン中、それがBP比べで相手のスピリットだけを破壊した時、2枚ドローする。

---


それは海緑で一番使いたいカード。

BP勝負を挑んできた相手の虚を突いて破壊し、手札補充までする大逆転の一枚。

なんて綺麗なプレイングなんだ、これこそスタンダードの醍醐味!

今まさに喰らわされているというのに思わずガッツポーズをしたくなる瞬間。


BPでまくり返すのは不可能、せめて<ラニラヤ>を自壊させて2枚ドローを阻止することができればスタンダード推しの面目も保てるのだが、

悲しいことに<ラニラヤ>上のコアは2個、手札の<ファイアピラー>で自壊させることは叶わない。

<ハイドロフォース>を警戒していない私のさらなる凡ミス。

<ラニラヤ>は破壊され、2枚ドローされる。

こてんぱんにやられるというのはまさにこのことだ、

<リバースサンダー>を忘れかけて指摘される。何から何までぐだぐだプレイで凹む。


手札最後の1枚<ファイアピラー>を使って<トリプルサンダー>でも引き込んでいれば微かながらも希望はあったかもしれないが、

もう気持ちは負けていた。

せめてもの抵抗<ヴェロキラント>を回復させて、ターンエンド。


相手7ターン目


相手が最後のライフを削るまで折れた気持ちを隠し通すのが私のプレイに対する美学。

負ける時はちゃんと負ける、そして相手を讃える、これだけは絶対に曲げない。


相手フィールドには<アロトール>1シンボルしかない。

しかし、コアブーストで溜めた潤沢なコアと<ハイドロフォース>で引き込んだ手札がある。

<マーメイディア・プリンセス>からの<マーメイディア・プリンセス>でさらにコアを増やし、

<ガビアダイル>

一気に4体の中型スピリットが盤面に並ぶ。

<トリプルサンダー>が手札にあってもどうしようもなかった。


<アロトール>からアタック。

私は手札の<リバースサンダー>と<ファイアピラー>をLv1の<マーメーディア・プリンセス>に使用。

<ヴェロキラント>でブロック破壊されることで回収される<リバースサンダー>で1体取って有終の美を飾ろうとしたが、

それさえ許されなかった。


「<テンタクルアタック>を使用、<ヴェロキラント>重疲労してください」

ソウルコアではなく、アタックしている<アロトール>のコアをすべて使用、<アロトール>は自壊する形。

ここまで押していても返しのターンのことを考えて上級スピリット保存を選択する、手慣れている。

私の手札は0枚、詰んだ。

ここからの逆転はあり得ない。

<ガビアダイル><マーメイディア・プリンセス>とアタックされてライフ0.


「ありがとうございました」


勝負が決した後、カードを並べての感想戦。

「【水流】とはなんぞや、って感じでしたね」

「えー、大型スピリット出なくても【水流】の効果を十二分に発揮した綺麗な勝負になったじゃないですか」

「やっぱり大物出して勝ちたいなぁ」


残念ながらまだスタンダード楽しいと素直に言ってくれない。

まぁいいか、ドラマじゃあるまいに人はそう簡単に変わらない。

それでも、ちょっとくらいは面白いと思ったはずだ。

……そうじゃないと、今の大プレミが報われない。

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