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028 砂金神社攻防戦Ⅲ

AMI歴12年6月1日 石動家

石動太一郎(いするぎたいちろう)


『絶対見てね(はぁと)』と言うメッセージと共に秋月羽依から送られてきたアドレスを見ると、夜中に謎の軍隊が多くの負傷者を出した阿鼻叫喚の様を中継する動画だった。

事前に話を聞いていた為、俺にはこれが砂金先輩を狙って神社を襲撃に来た央華連邦の軍隊だとすぐに分かった。

そしてカメラが切り替わると、一人の男が神社の方へ歩み寄ってきたかと思うと、空中のドローンを雷撃で打ち落とす様が映し出された。


「本当に、フィグニブ・・・なのか・・・お前、勇者ともあろう者が何やってんだよ・・・」


そこに映っていたのは、恐らく雷神の勇者・・・かつて苦楽を共にしたパーティーのリーダーであり、長年連れ添った戦友の転生した今生での姿だった。


奴が『勇者』を志して『雷神の剣』を得る為の試練を成し遂げたのには、ハッキリとした目的があった。


それが『大地の宝珠』だ。


それは大地の女神の神威を宿せし究極の浄化能力を宿す神器で。

当時は混沌の勢力に奪われ、殺戮神の神徒が守る『穢土を覆せし迷宮』に安置されていた。


奴がその究極の浄化の力を求めたのは、妹の為だった・・・


奴の妹は穢土の汚れに身体を蝕まれ、回復の見込みがないまま苦しみ続けていた。

その穢土の汚染から妹の命を救うには、神器の奇跡に頼る他に手段が無かったのだ。


法の勢力にとっても悲願であった神器の奪還の為、これまで幾人もの屈強な戦士達が『穢土を覆せし迷宮』に挑戦しては敗れてきた。

その迷宮を突破して、悪名高き『牛頭簒奪王』を倒し『大地の宝珠』を奪還する為に、奴は雷神の勇者となったのだ・・・


「くそっ・・・・黙って見てなんていられるかよっ・・・!」


(はじめ)羽依(うい)に手出しは無用だと言われていたが、やっぱりこのまま黙って見ているなんて出来ない。

奴らなりに雷神の勇者の仲間だった俺を気遣って今回の争いに巻き込まないように配慮してくれていたのだろうが・・・

当人の姿を動画で確認した俺は、衝動のままに家を飛び出し砂金神社目がけて夜の街を駆け出していた。


==========


AMI歴12年6月1日 砂金神社境内

砂金奏


正面の鳥居をくぐってフクロウが飛来した。


ホーゥホーゥ


「正面から13人来るって」


「ありがとう美津紀・・・少しは数を減らせるといいんだけど」


斥候のフクロウの報告を翻訳してくれる美津紀に礼を言いながら御神木の枝の上に立って構えた弓を引き絞る。

見張り役のフクロウに付けたお守りを通し、近付いてくるゼンモン持ち達の魔力を感知し、その内の一人の幽体波動(エーテルパターン)をマーキングして風の精霊を補助に付けた矢を放つ。


まだ神社から少し距離がある為、精霊結界から離れると、矢に宿る風の精霊は急速にその魔力を失いながらもかろうじて矢を誘導してくれる。

そのままなけなしの魔力を失った精霊は、現界での存在を維持出来ずに精霊界へと帰ってゆく。


「ん・・・まず一人・・」


フクロウを通じて感じる幽体波動(エーテルパターン)から、狙った一人に矢が命中して突撃する部隊から脱落した事を察する。結界の外では魔力を使った能動的な探知魔術は魔力の燃費の問題で多用は出来ない。


フクロウにぶら下げたお守りには、幽体の波動を受動的に感じるセンサーとしての役割を負わせている。単体では精度が低すぎてあまり役に立たないが、お守りを付けたフクロウを複数配置する事で立体的に幽体波動(エーテルパターン)を捉えておおよその位置関係を割り出す程度の事は出来ている、ものすごく精神を集中させないと正確な位置は把握できないけど。


精霊結界(エレメントサークル)の中に入って来たら、こんな手間と精神集中が必要な方法は止めて、直接精霊で監視させればほぼダイレクトに位置関係も把握出来るのだけれど。


続いて二人目に狙いを定めて矢を放ったが、今度は敵も警戒していたようで、発動されたスキルによって矢は逸らされ風の精霊も散らされてしまった。なんだろう、衝撃波を放つようなスキルかな?


うーん、結界外への攻撃はこれ以上は無意味かな。


次は手筈通りに侵入のタイミングに合わせて矢を放つとしよう。


私は樹齢100年を超える御神木の枝の上で弓を(たずさ)えてしゃがみこんでいる。

罰当(ばちあ)たりとは思うが、御神木には許しを得ているので(とが)めるのは勘弁(かんべん)して欲しいところ。


隣には玲さんが枝に座って私へ手のひらを向けて『気』を練りながら放ってくれている。竜脈源(エーテルポイント)の恩恵と玲さんによる魔力供給を受け、何とか低位の精霊魔術の継続行使を可能としている。どちらかでも欠けていれば地球でここまでの魔術を行使する事は出来ないわよね。


反対側には美津紀が立っていて、こちらは随時フクロウと私のコミュニケーションを仲介してくれている。


神社の外で敵は三隊に分かれた、正面には雷神の勇者を含む12名(1名脱落済み)が、他には3名ずつになって右側面と背後に回っているようだ。狙いとしては割と単純に、主力が正面でこちらの戦力を引き付けた上で、側面、背後から奇襲をかけようというのだろう。


幽体波動から察するに、正面は雷神の勇者が一番の使い手だけど残りの11名は大した敵がおらず、別動隊の方に強敵を配置して少数精鋭としているようだ。


特に背後に回った部隊は隠密スキルを発動しているらしく少し位置が把握し辛い、多分側面と時差を付けて最後に背後からこの部隊を本命として急襲させるつもりかな?


恐らく本来のスキル性能が発揮されていれば、これ程簡単にこちらに位置を把握される事も無かったのだろうけど、いかんせん地球上では魔力の関係でスキルの性能も著しく低下する。

彼らにとっては残念だろうけど扱える魔力の量で優位を取っているこちらの裏をかく事は出来ない。


異世界(あっち)の魔術戦でも竜脈(エーテルライン)の上流、竜脈源(エーテルポイント)に近い場所を抑える事は基本中の基本だが。魔力が少ない地球での魔術戦においては、その重要さがより高くなっていると思う。


正面の敵に対しては、一くんと助っ人さんが迎え撃つべく控えている。私も基本的には弓と魔術を駆使して一くん達を援護、正面戦力の押さえに尽力する。


側面には伊織くんと羽依ちゃんが、背後には亮人と五十棲くんがそれぞれ待機している。

ここから戦況を俯瞰しつついざとなったら玲さんが遊軍として助っ人に向かう予定だが、そうなると魔力の供給量の問題で私が使える魔術は制限を受ける事になるので、そうならない様にそれぞれ受け持った場所での勇戦を期待しましょう。


余談だけど伊織くんを送り出す時に玲さんが伊織くんに熱いベーゼを交わしておりました、唐突に人の目の前でおっぱじめるのどうにかして欲しい(いいぞもっとやれ)。私は何度か目撃していたおかげで多少耐性があったが、美津紀は見事に昇天していました。気持ちは分かるけど本人を目の前にして拝むのは止めなさい。


さて、そろそろ正面の敵が鳥居をくぐる頃合いね。まずはフィーラレル式狩猟弓術、多重偏差角乱撃矢(マルチプルアローストーム)を味わってもらいます。


==========


AMI歴12年6月1日 砂金神社境内

(いさご)(はじめ)


鳥居の向こうに雷神の勇者の姿が目に入った、一人で突出はせず全員で同時に突入する気のようだ。(まと)を分散させようという意図なんだろうけど、今回は先行して僕の動きを邪魔されるよりは逆にありがたい。


全員鳥居をくぐって正しく入場して欲しい所だけど、さすがにそうも行かず、左右の塀を飛び越えて侵入しようという不逞の輩が大勢いるね。

しかし、風神の勇者の前で不用意に地から足を離す事はあまりお勧め出来ないんだけどね。


今の砂金神社は奏お姉ちゃんが張った精霊結界の影響下にあり、僕の操る風の精霊も体感5割増し位の威力が出せる、しかも個人結界(パーソナルスペース)外での精霊の維持が非常に容易になったおかげで遠隔系の精霊魔術も低燃費で実現出来ている、大変素晴らしい!さすが奏お姉ちゃん。


突入タイミングに合わせて風の精霊を操り、正面から入った相手には正面から最大級の風圧をぶつけ牽制、塀を飛び越えて侵入してきた相手には、飛んでいる最中に側面から風圧をぶつけて中央に向けて吹き飛ばす。三方向からの風に大量の木の葉が舞い上がり、侵入者たちの視界を覆い尽くす。


分散していた相手には悪いけど正面の鳥居前に強制的に全員集合してもらう。


風圧の塊にはわざわざ裏の森から集めておいた大量の木の葉を舞い散らせていて、これは牽制目的プラス目隠しとして役に立ってくれた。視界を奪われた敵集団は一瞬足止めをくらう。


季節柄あまり枯れた木の葉は落ちておらず、生えたばかりの葉を使わせてもらう事になり春越えの萌木達には悪い事をしてしまったけれど。


三方から風の精霊が舞う風圧を浴び、密集状態となって舞い散る木の葉に目隠しされ膠着した瞬間、木の葉に紛れて奏お姉ちゃんの放った矢が四方八方から同時に襲いかかる。

これだけの矢を一人で放って同時に着弾させる技には惚れ惚れしてしまう。


僕も手持ちの棒手裏剣を放って3人に命中、咄嗟にスキルや手持ちの武器を駆使して矢を払えた数名を除いて外側に位置する敵は矢と手裏剣の餌食となり、苦痛(ペイン)の呪いを身に受けてうめき声をあげている。


続けて再び風の塊を放とうと風の精霊を集めていたけど、さすがに二撃目は許してくれず、飛び出した雷神の勇者がこちらに一人で突っ込んで来る、その様はまさに迅雷の如くと評するしかない。

それでは僕も集めた風の精霊をこの身に宿し、疾風と化してお相手しましょう。


前回の隠し警棒と違って、今度はお互いに真剣を手にしている。

軍属である雷神の勇者はともかく、なんで小学生の僕が真剣や棒手裏剣なんか持っているのかと言うと、実はこれクラスメイトの太一郎くんに作って貰ったんだよね、まぁ詳しい話は長くなるので今は割愛させてもらうけど、一言で言うと彼は前世で仲間だったドワーフなんだよね。


僕は襲い掛かってきた雷神の勇者の斬撃を受け止めながら問いかける。


「何で勇者ともあろう人が人攫いなんかに手を貸すんですっ!!」


「―――――――――!!」


あー、やっぱり日本語は通じないか、僕も央華連邦の言葉なんてわからないし・・・それなら・・・


『何で勇者ともあろう人が人攫いなんかに手を貸すんですっ!!』


ならば異世界(あちら)側の共通語(コモン)で話しかけてみよう。


『!?・・・・夢以外では初めて故郷の言葉を耳にしたぞ・・』


この身体では異世界の言葉を言い慣れないせいで舌が回らず、お互い発音がかなり怪しい感じになっているのはご愛敬だね。


『答えて下さい!!雷神の勇者ともあろう方がなぜ人攫いなんか!?勇者の誇りはどこへ行ったのですか!!!』


『勇者か・・・風神の勇者よ、お前はこちらの世界に生まれ落ちてからこっち、神の声を聞く事があったのか?』


『それは・・・ありませんけど』


『やはりそうか・・・我等はお互い神に見捨てられたのだな』


『なんですかそれはっ!?親に相手して貰えないと拗ねている駄々っ子ですかっ!!!』


言葉を交わすのと合わせるように、同時に僕等は剣戟を交わす。いつかの焼き直し・・・と言うには大分こちらが優勢だけどね。


奏お姉ちゃんの精霊結界の影響で精霊の力が強化されている僕に対し、雷神の勇者は雷精の力が前回より大分抑えられているはずだ。それでも一方的な展開にならないのは、後方にいたゼンモン持ち達がこちらを半包囲するように広がってスキルや投擲武器で遠距離攻撃を放ってきているからだ。


鬱陶しいので他のゼンモン持ち達から先に倒したいのだけど、さすがに雷神の勇者が立ち塞がってそれを許さない。

僕一人では周りのゼンモン持ち達にはせいぜい棒手裏剣で牽制する位しか出来ない、だけど。


周りのゼンモン持ち達を突然の突風が襲い、舞い散る木の葉によって再び視界が妨げられる。


そんな中風切り音を立てながら襲い掛かる矢に気付いたゼンモン持ちが、衝撃波を放つスキルを発動して矢を落とす。


『また木の葉に紛れての不意打ちか、ワンパターンなんだよっ!!』


男が勝ち誇って吠えたその瞬間、音も無く別の角度から飛来した矢がそのゼンモン持ちを貫いた。


「ぐがぁっ!?くぅぅぅ」


太ももを矢に貫かれ、激痛に襲われうずくまるゼンモン持ち。あー結構出血してるぞ、動脈が傷ついたかな、下手したら命に触るな。


僕の召喚していた風の精霊を奏お姉ちゃんが操って風を起こし、矢が到着する寸前の目くらましとして使ったのだ。先に放った矢に風の精霊を纏わせて静寂(サイレンス)をかけた上で誘導して大きく曲線を描いて側面から敵を狙い、後から放った直線に飛ぶ矢を正面で目立たせて囮とする。


木の葉に紛れながら風切り音を発して襲い来る普通の矢に気を取られると、本命の無音の矢に気付けないという、二重の罠によって相手を陥れるこの容赦の無い攻め手が頼もしい。


そして少々やっかいな衝撃波を使うゼンモン持ちに負傷を負わせ戦線離脱させてくれたのは僕にとって有難い。


『チッ・・・やる、しかし多少弓の援護があろうとこの人数相手にお前一人ではジリ貧だぞ、犬上達はどうした?』


『サボりですよサボり、しょせん犬畜生は駄目ですね』


おしゃべりを続けながらも攻撃の手を緩めない雷神の勇者と僕の剣戟はスピードをいや増して目まぐるしく位置を変えながら戦い続ける。


『ふんっ、こちらの別動隊を警戒してるのか?・・だが朔日(ついたち)の人狼族に我等の精鋭が止められるかな?そもそもここを押し切られては元も子も無いだろうに余裕な事だなっ!!』


『そちらは随分余裕が無いようですね?三藏郷(イベット)では独立戦争が起こっているらしいじゃ無いですか』


『あんなモノはただのテロリストによるゲリラ活動に過ぎん』


『そうですか?なんでも小白竜とかいう人に随分と酷い目を見せられたそうじゃ無いですか』


『・・・・なんでその名を知っている?貴様!その名をどこで聞いた!!!』


『ははーん、ゼンモン持ちの部隊もやられたって聞きましたが、その部隊もあなたが率いていたんですね・・・勇者ともあろう者が惨めに敗走してきたと、でもって自分達だけじゃ勝てないから他人の力を頼ろうって事ですね、そんな事の為に奏お姉ちゃんは渡せません!』


『知ったような口をっ!!』


あえて挑発するような物言いの僕に、怒りに任せたような鋭く重い斬撃を放つ雷神の勇者。

これは図星だったかな。


「おぅ、いい加減俺の出番はまだかよ十一(といち)


「誰が十一(といち)だ誰が!!」


「んだよ、十一でいいだろ本名なんだから」


雷神の勇者と対話がしたいと言う僕の要望により、後ろに控えて貰っていた助っ人が、出番を待ちきれなかったのか勝手に出てきました。ていうかだれが十一(といち)やねん。


『おう、久しぶりだな雷神の勇者様よ』


『誰だお前は・・・』


僕達の会話を聞いていた為、自身も異世界の言葉で雷神の勇者に語りかける助っ人さん。


『つれねぇなあ、俺の事はもう忘れちまったのか?穢土を覆せし迷宮では世話になったな』


『穢土を覆せし迷宮だと・・・まさか・・・お前は・・』


『なんの因果か生まれ変わった地球(こっち)で又お前と戦える日が来るとはな!』


『牛頭・・簒奪王なのか!?』


ニヤリ


『おう、雷神の勇者様よぅ!あの日のリベンジマッチ果たさせてもらうぜ!!』


両手に分厚い大振りの鉈(太一郎君作)を構えて、阿波根さんが戦の咆哮をあげる。


雷神の勇者との闘い後、前世での両者の因縁に思い至った僕は、駄目元で阿波根さんに助っ人を頼んでみようと思ったんだけど。思った以上に前のめりないい食いつき加減でこちらの話にのってくれました。


それでは約束通り雷神の勇者のお相手は阿波根さんに任せて、僕は残りのゼンモン持ちのお相手をさせて貰いましょう。


前回に引き続き一くんと奏ちゃんが活躍しておりますね!そしてついに出て来ました助っ人は阿波根くんでした!!いやー、最初主人公の前に立ちふさがった敵が味方になる王道展開ですね!!

阿波根さんの認識としては味方になったつもりは無いとかツンデレ発言しそうですが。

次話ではようやく久しぶりに主人公が活躍するハズ


ここまで当作品をお読みいただきありがとうございます!


この作品を読んで少しでも

『楽しい』『続きが気になる』『この伏線ちゃんと回収されるの?』

などと思って頂けたのでしたら、感想やブックマークをお何卒よろしくお願い致します。

ページ下の評価システム【☆☆☆☆☆】をご活用いただければと思います。

ご評価頂けますと作者の励みになり、モチベーションの持続にも繋がりますので、

どうかよろしくお願いいたします!

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