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027 砂金神社攻防戦Ⅱ

AMI歴12年6月1日 砂金神社周辺


神社から一定の距離を保って、武装した央華連邦軍の兵士が多数詰め寄ってきていた。


「作戦開始時間だ、突入開始」


「各隊突入開始します」


バンッ ババンッ バババババババババババンッ


突入の為に神社の周辺まで兵士達がにじり寄った瞬間、兵士の持つ銃器がことごとく炎に包まれ再び夜の静寂(しじま)は破られた。


それは先ほどの悲鳴より何倍も大きな炸裂音が、突入しようと神社に近付いた全ての兵士達から同時に発生した。


「ぎゃーーーー!!」「痛い痛い!!」「がががががが」「助けて・・タスケテェ・・・」

「衛生兵、衛生兵をっ!!」


その場にいた銃を携行していた兵全て、全身いたる所から血を流して這いずり回る姿はまさに地獄絵図のような有様だった。


「なっ・・・・何が起こっている・・・・?」


「どうやら携帯していた銃弾が全て暴発したようですね」


「暴発・・・だと・・・?一体何が・・・・・」


「どうやらこれも砂金奏の仕込みですね・・・精霊結界が敷かれていたようです」


「精霊・・結・・界・・・だと?」


「結界の外縁に炎の精霊を待機させていたようです・・・結界内に侵入した全ての弾薬に反応させたようですね、地球でこの規模の精霊魔術が行使出来るとは凄まじい魔術の腕前だ・・不足するはずの魔力をどうやって補っているのだろうか・・・神社内に竜脈源があるのか・・・いやそれにしたってこの規模は異常だ」


(小白竜(アイツ)もそうだった・・・地球ではあり得ない量の魔力を行使していた・・・)


その時、負傷してうずくまる兵士達が突然空中に複数現れた光によって照らしだされた。


「なんだ??光が・・・」


「あの空中に浮いている光源は何だ!?」


「あの光は何だ!?何が起きている!!」


「光の精霊を召喚したようですね」


「光の精霊だと・・?なんだそれは、一体何のために?」


「指令!?負傷者を撤退させますよ、よろしいですね?それで残りはどうします?無事な転生者だけで突入を続けますか?」


「無事な転生者だけで?」


「そうです、配置した一般兵は全て銃の暴発で負傷しています、彼らに戦闘続行は不可能です」


「それに今の音で通報されれば、最悪現地の警察が動く可能性もあり得ますよ」


「なぁアレ、ドローンじゃ無いか?」


「ドローン??」


あらゆる弾薬が暴発し、光の精霊に照らし出された地獄絵図と化した兵士達の上空を悠々と飛行するドローンの姿がそこにはあった。


「指令、本部から連絡が入ってます・・・我々の状況がSNS上で動画配信されていると!!」


「『平和な神社を襲う謎の集団、彼らの目的は一体!?・・・数日前からストーカー被害にあっていた幼き巫女をつけ狙う変質者集団との白熱の攻防を生配信』・・・と、そんなタイトルで・・あのドローンからの映像だと思われます」


「ただちにドローンを撃ち落とせ!!」


「神社に近付けば銃が暴発するので無理です、この距離をハンドガンでは狙うのは難しく・・・狙撃班とは依然連絡が取れません」


「再生数がどんどん増加しています・・・」


伏虎(タンフー)っ!!ご自慢の電撃でアレを落とせるだろっ!」


「・・・・」


伏虎がドローンの近くまで歩みを進めると、伸ばした指先から細い紫電が放たれドローンに纏わりついた。


ボシュッ


紫電を浴びたドローンは黒煙を上げ落下する。


「今の電撃を使ってドローンを落とす場面が別のアングルから撮影されていました・・・凄い勢いでコメントが付けられています・・・場所を特定しようとしているコメントも増えています・・・下手をしたらここに一般人が集まりだす可能性も・・」


「ぐ・・ぐぐ・・」


その時、決断を迫られ苦悩する指令の視界の端を何かが横切った。


(なんだ・・・フクロウ?)


ヒュン


ドスッ


「がぁぁあああああっ!」


神社から100m以上は離れていた指令の肩を、飛来した矢が射貫いた。


「痛いっ痛いっ痛いっ何だこのっくっそぉ・・ぐぐがぁ・・・・痛い痛い」


「指令!?」「大丈夫ですか?!」


「ぐがががが・・くそっ、てっ・・・撤退するっ・・・撤退だ!!痛い、痛いちくしょう・・」


「どうやら矢に苦痛(ペイン)の呪いが込められているようです」


「呪い・・・っくっつぅうう・・・だとぉおおがぁああ」


「撤退だ、負傷の軽い者は重傷者に手を貸せ」


「森の中で狙撃班が気絶している!森の中まで担架を回せるか?」


「指令・・・」


「痛い、どうにかしろっくそぉっ!!伏虎っ!!こうなったらお前ら転生者だけ残って任務を続行しろ!!普段のデカい態度に見合った働きを示せっいいなっ!!」


「これだけの力を示した相手の陣に援護も無く我々だけで攻め込めと?正気ですか?」


「がぁ、はぁっ、はあっ、伏虎雷公子(タンフーレイエンハイツ)転生者どもの相手は転生者に任せる!お前の責任で任務を果たせっ!」


==========


負傷した兵士を引き連れ司令官が撤退した後、砂金神社周辺に残ったのは転生者のみで形成された部隊、総勢22名の少年少女達であった。

犬上亮人や十一との交戦を経て、日本へ入国していた転生者のみでは戦力不足と判断され、本国の転生者部隊から現状可能なだけの戦力を集めた成果である。


最盛期にはこの3倍以上の人数が転生者部隊に所属していたが、彼らの多くは既に小白竜との戦闘で犠牲となっていたのだ。


「隊長・・・本当に我々だけで任務を継続するんですか?」


「どんな内容であろうと命令は命令だ・・・作戦内容の変更を確認する・・」


彼らの多くは央華連邦においては何の変哲もない一般市民の両親から生まれた子供達だ。

党幹部の息子に転生者がいたおかげで、いち早くその存在に気が付く事となった共産党の上層部は、学校の成績や運動能力から異常値を示した子供達を転生者と判定、未成年の彼らを強制的に徴兵して部隊に組み込んだのだ。


中には反抗する者や両親を捨て逃走する者もいたが、大半の転生者は地球上での産みの親や家族を人質にとられたような状態で、央華連邦共産党の意向に逆らう選択は出来なかったのだ。


「どうやら部隊が撤退した事を見届けて動画配信は終了したようです・・今はSNS上で動画の真偽に関する議論や場所特定の議論が起こっているようです」


「そうか・・」


「これだけの魔術を行使出来るなんて・・・まるで小白竜みたいじゃないですか」


「敵の敷いた精霊結界の中で風神の勇者と戦うなど、いくら数の上で上回っていたとしても危険です」


「確かに魔術と弓術の腕は相当のようだが、一つ一つの魔術自体は小細工の域を出ていない、圧倒的な力の差を見せつけた小白竜とは全然別物だ・・・それにいくら結界があるとて新月の影響で魔力には限界があるはずだ、どれだけ優れた精霊魔術の使い手でも魔術行使が重なり魔力が低下すれば結界の維持も難しかろう。何より既に指令からの命令は下ったのだ文句を言っても始まらない、いいな?」


「はい・・でも指令はこの作戦の目的をどう考えているのでしょうか?戦力としての転生者の増強が最終的な目的なはずなのに、その戦いで我々転生者を使い潰し兼ねないリスクを負うなど本末転倒では無いですか・・正常な判断とは思えません」


「ふぅ・・もう言うな、では部隊編成の見直しとそれぞれの突入ルートを変更する」


(だが確かに不自然な気もする・・・もう少し保身に長けた人物だった印象だが、何故リスクが高まった無謀な作戦を強行するのだ?)


==========


AMI歴12年6月1日 砂金神社 砂金奏


敵襲の第一波は無事退ける事が出来た。


ドローンの飛翔音は風の精霊の勘に触ったらしく、積極的に矢の誘導を手伝ってくれたので楽に打ち落とせたわ、(はじめ)くんと手分けして素早く対処が出来て良かったわ。


さすがに風神の勇者と協力しているおかげで、得意としている風の精霊が更に低燃費で扱い易くなっている。風神の祝福を受けた勇者の称号は伊達では無い事を実感するわね、正直ありがたい。


後方の森に配置された狙撃手(スナイパー)は、フクロウの斥候を利用して位置を特定、苦痛(ペイン)の呪い付きの弓矢で狙い撃ちさせて貰った。風の精霊で矢除けの呪いを発動させていれば、狙撃されても銃弾を逸らせるとは思うけど、内部を監視されるだけでも嫌だし先手を取らせて貰った。


警告として数人の銃器を暴発させて、銃器を扱う事を躊躇(ためら)わせる事が出来れば儲けものと、あまり扱いに自信が無い為に少数だけ配置していた炎の精霊だけど。

持ち込まれた大量の弾薬に大喜びで、こちらの制御を離れて勝手に仲間を呼び集め次々と弾薬を暴発させ、連鎖的に炎の精霊が大量召喚されてしまった。


火薬が無くなったらもう用は無いとばかりに速攻で退去していったけど、危うく精霊結界の維持すら困難な程に瞬間的な消費魔力が跳ね上がって正直焦ったわ。


これだから炎の精霊を扱うのは苦手なのよ。

計算違いも良いところだけどまぁ結果オーライだったから贅沢は言うまい。



そんなこんなで敵の動きに対応し続け、敵の動きが止まった所で司令官らしき人物を激痛(ハードペイン)の呪い付きの矢で狙撃に成功、文字通りに痛い目を見て貰ったと言う訳ね。

やがてフクロウの斥候と羽依ちゃんのカメラで敵主力部隊が撤退して行く事が確認出来た。


しかし敵全員が撤退した訳では無く、恐らく転生者であろう者たちは神社から距離を取りつつまだ潜んでいるみたい。


今は正面に一くん、裏口に五十棲くんが見張りに立ち、フクロウが4羽ずつ3交代で見回りをして貰い警戒態勢を維持しつつ休憩している。



羽依ちゃんのSNSでの動画配信は、結局サブ垢を使って行われたそうで、国内のゼンモン情報まとめサイトとして有名な『賢者の森』でスレッドを立てて宣伝したそうな。


神社の名前や一目で場所が特定出来るような構図を巧みに避けて映されたおかげで、いまだ砂金神社と言う事は特定されずに済んでいるらしい。


密かに収音マイクを向けて風の精霊で増幅された央華連邦語での会話も乗せられていた為、大惨事となった謎の集団は央華連邦人の軍隊であると言う事は確定的に語られているようだ。

他国の軍隊が日本国内で暗躍してるのだから当然だけど、自衛隊に治安出動要請すべき問題だろうとの声も上がっている、うーんこれは大事だなぁ。


主力が撤退する様を納めて、何とか撃退に成功と言う事で生配信は終了したのだけれど。

サブ垢から羽依ちゃんまでは辿れないようになっているらしいけど、本当にこの娘は一体何をやっているんだろう・・・


雷神の勇者がドローンを雷精で打ち落とす映像は視聴者にそれなりのインパクトを与えたようで、何かのトリックかと議論が起こっていたが、AMI(アフタームーンインパクト)世代のあれは『ゼンモン』持ちの能力に違いないと言う指摘から『ゼンモン』の話題へと議論がシフトしていっている。


ゼンモン持ちだのスキルだの言われても、BMI(ビフォアームーンインパクト)世代にとってはにわかに信じがたい話だろう。

身近にゼンモン持ちが居る人なら、その特異性を実感しているのだろうけど、実例を知らずにネット情報だけでそんな話題に触れた人はオカルトネタとして一笑に付すのが通常の反応だ。逆に面白がって無責任に話を膨らませる輩もいるみたいだけど。


「て言うか平日の深夜にこの人たちは何でこんなにネットでくだを巻いているのか・・・この人たちって明日学校や仕事は無いのかしら?」


「さぁ?」


「僕達こんな時間まで起きてる事なんて無いから知らない世界だねぇ」


「奏がしてくれた覚醒の(まじな)いのおかげで眠気は無いが、これ後で反動が来るんだろ?」


「まぁ術が切れたら明日は一日中頭がフラフラしちゃうかもね」


「しかしまぁ、見事に作戦がハマったなぁ」


「精霊結界を張れるだけの魔力が確保出来たら、魔術への対策が出来ない人間が何人侵入してこようと相手にならないわねぇ」


「お前の罠にハマったあいつ等の姿・・・・まるで昔の自分を見るようだぜ・・・」


「何よっ!!アンタはいつだって一人でピンピンしてたじゃないのよっ!!こんな小手先の罠じゃ無くて、ありったけの精霊石をつぎ込んだ渾身の罠も平然と突破してくれやがって!!!」


「エルフの住まう森に無断で侵入する者にはそれなりの仕打ちが待っているって、あっちの世界じゃ子供でも知っている事だよね」


「あとは残ったゼンモン持ちが来るかどうか・・・」


ガラっ


「おう、そろそろ出番か?」


障子を開けて顔を出したのは、隣の部屋で仮眠をとっていた一くんが連れて来た助っ人さん。


「今頃お目覚めか?他人の家に来ていきなり寝るとか図太いと言うかなんと言うか」


「うっせーな、覚醒の呪いとか怪しいモンは受けたくねーんだよ」


「でもいい勘してる、敵が動いたみたい」


「!?」


「お、いよいよ来るか」


「それじゃあ手筈通りお出迎えの準備をしましょうか」


「また皆で見張りをお願いねー」


美津紀がお願いすると、与えたエサをついばんでいたフクロウ達が夜の帳に一斉に飛び立った。


奏ちゃんの活躍はまだ続きます、そして次話では一くんも頑張ります!

主人公の出番は?・・・・・そして謎の助っ人の正体は!?


ここまで当作品をお読みいただきありがとうございます!


この作品を読んで少しでも

『楽しい』『続きが気になる』『この伏線ちゃんと回収されるの?』

などと思って頂けたのでしたら、感想やブックマークをお何卒よろしくお願い致します。

ページ下の評価システム【☆☆☆☆☆】をご活用いただければと思います。

ご評価頂けますと作者の励みになり、モチベーションの持続にも繋がりますので、

どうかよろしくお願いいたします!

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