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026 砂金神社攻防戦Ⅰ

026砂金神社攻防戦Ⅰ


AMI歴12年5月31日 砂金神社

宮代伊織


新月となる今日、襲撃に備えて今夜は皆で砂金神社に泊まり込みです。

日が沈んですぐ、奏ちゃんは小野寺さんを伴って裏手の森の側までやって来ました。


「美津紀、お守りの確認もしたいから、一度集めてくれる?」


「了解」


そう言うと小野寺さんは、森に向かって不思議な声を発しはじめました。

鳥の鳴き声にも似た不思議なフレーズは、とても人の声帯から発せられているとは思えません。

とても美しく不思議な声が裏手の森に響き渡ります。


ピュルリイピュルリリリリリリイィィィ


ピュルリイピュルリリリリリリイィィィ


そうしてしばらくすると、ホウホウと鳴くフクロウの声が応えるかのように聞こえ始めました。

そして、森から飛び出して来た影が音も無く小野寺さんの周辺を飛び交い始めました。


羽ばたきをしながら間近を飛んでいるにも関わらず、全く音がしません。


フクロウなど夜活動する猛禽類は、音も無く獲物に襲い掛かる為静穏性が優れていると聞いた事がありますが間近で見るととても不思議な感じです。


良く見ると、そのフクロウたちには首に砂金神社のお守りがかけられていました。

やがて集まったフクロウはそれぞれ境内の木々に止まってこちらを見下ろしています、その数全部で12羽。


「これが小野寺さんの力なの・・?」


「翼持つ者は皆風神の眷属なので意思を交わす事位は出来るのです!それはここ地球でも変わらないのよねっ!」


「首にかけられたお守りは奏ちゃんが?」


「ええ、彼らには斥候や監視役、ポイントマンになって貰うつもり」


「ほへぇー」


フクロウの使い魔とかなんだかいよいよ奏ちゃんのやる事が魔女めいてきたよ。


「そうそう、伊織くんはやっぱり何も武器は持って来なかったのね?」


「一くんが刀を貸してくれるって言ってくれてたけど、慣れない得物持ってもなぁと思って、飛び道具なら少し持ってきてるよ」


「飛び道具って?」


「うん、パチンコ玉なんだけどね、気を込めて指ではじくとそれなりの威力が出るから」


「指弾って奴ね、それなら良いモノがあるわ・・・んと・・・はいコレ」


奏ちゃんがごそごそと取り出したモノを受け取ると。


「これは・・・種?植物の??」


種をどうしろと言うのだろう?

指弾の弾ならパチンコ玉の方が普通に強いと思うけれど??


==========


AMI歴12年5月31日 白銀楼市内 某所


「では最終ブリーフィングを始める」


「我々の最優先目標は、砂金奏の生きたままの捕獲だ、出来るだけ無傷で捉える事が望ましいが、無力化するのにやむを得ず傷つける事は許可するが、間違っても四肢以外に銃弾を当てる事など無いように十分注意をはらう様に」


「ターゲットは月を奉じる妖精族(エルフ)の転生者で、精霊眼と呼ばれる特殊な目を持つ、その能力により転生者とその前世を見破る事が出来るらしい、今後転生者の軍を強化するにあたりなんとしても確保しなくてはならない人材だ」


「戦闘力に関しては未知数、目標の神社で祭事のおり弓を扱っているらしく、恐らくそれなりの腕を有していると予測されるがいかんせん女子供の腕力では脅威とはならないだろう、あとは種族として精霊魔術に長けているが、地球では勇者でも無い限り警戒すべきレベルの魔術行使は難しいだろうという事が結論付けられている、月の眷属の為新月では魔力も弱まるそうだしな」


「彼女にはやっかいな守護者が二人ついている、一人は犬上亮人(いぬがみあきと)人狼族(ワーウルフ)という事だ、これまで散々こちらの監視役に逆追尾を仕掛けて来た、身体能力と嗅覚に優れ、こいつのせいで近場のセーフハウスを利用する事が出来なかった、だが今日は新月となり普段の能力と比べて著しく弱体化している・・・転生者四名と銃火器を持った援護が四名もいれば無力化出来るだろう、こいつも有力な転生者ではある事から、出来れば生け捕りにしたいと言うのが上層部の意向だが・・油断は出来ない」


(だが俺は正直気が進まん、こいつからは危険な臭いがする・・・むしろ殺す気で当たらねば足を掬われかねない)


「次に、こいつが今回一番厄介だと思われる相手、十一(つなしはじめ)、風を奉じる妖精族(エルフ)の一族で伏虎(タンフー)同様『勇者』と呼ばれる存在だ、先日セーフハウスの一つまで尾行を許した際『雷神の勇者』である伏虎と交戦し、その時はほぼ互角だったと言う事だ・・・今日もこいつの相手はその伏虎にやって貰う、援護として転生者八名と銃火器を持った四名をつける、こいつも生け捕りを目標とする」


「戦場となる神社は小高い山の中腹に一件だけの建築物で、周辺に高い建物などは存在しない為、狙撃班には射線の確保の為裏手の森で木登りをして貰う事になる。A班は犬上亮人を第一目標、B班は十一を第一標的とし、C班は両班の援護に当たってもらう、最悪の場合は両名の射殺も許可する」


「もう一人、最近になって砂金奏に同行するようになった五十棲駿だが、こいつは転生者なのは確かだが何者なのかは不明、少なくとも徒競走において犬上亮人と同レベルの身体能力を持ち、過去の競技記録から犬上亮人同様にその能力は月齢の影響を受けるようだ。犬上亮人と同様転生者四名と銃火器を持った援護が四名であたる事」


「他に想定される転生者として、秋月玲、秋月羽依、宮代伊織、小野寺美津紀がいる。秋月姉妹は何の転生者か不明、妹である羽依が先日素手でこちらの転生者二名を一時的に制圧している上に・・・銃撃を素手で跳ね退けたという報告もある・・・なんだこれは・・・?」


(何でこんな厄介そうな奴の情報を私は今まで軽視して来たのだ??)


プルルルルルルルル


プルルルルルルルル


「何故こんな時に私の電話が??」


当然電源は落としていたハズだと思い苛立ちながらも相手を確認する、その相手からの電話には絶対出なくてはならないのだ。


「チッ・・私だ・・・あぁ・・・そうか・・・・大丈夫だ、何があっても任務は完遂するとも・・・」


電話を切ると、ブリーフィング内容をどこまで説明したのか認識が曖昧になっていた。


「すまない・・どこまで説明したか・・・」


「残りの転生者は大した脅威にはならなさそうだって事ですよね」



「え・・・・あっ・・・あぁ・・・そうだな」



「うむ・・・よし、では続けよう、次は突入経路だが・・・・」



==========



「羽依?こんな時間に誰に電話してたの」


「んーーちょっと野暮用ーー」


(やっぱり直接マーキングして無いと暗示の効きもイマイチだねぇ)



==========


AMI歴12年5月31日 1:30 砂金神社周辺


「間もなく全員配置に付きます」


「よし、まずは偵察用のドローンを飛ばせ」


「はっ」


月のない夜空に音も立てずに黒塗りの小型ドローンが舞う。

視認性が極めて低くほぼ無音、地上からこれを発見する事は出来ないであろう偵察用ドローンを砂金神社敷地内へ向けて飛ばす。


ガッ


ガッ


しかし神社の敷地内に入ろうかという時に、飛ばしたドローンが悉く落下した。


「何だっ!?」


「わかりません、ドローンが全て墜落しました」


「もう一基飛ばせ・・・・伏虎見えるか?」


「・・・・・」


ガッ


「矢だ・・・」


「矢だと!?灯り避け、をろくに視認も出来ないこの暗闇の中・・・一体どうやって・・ターゲットの仕業なのか?」


「恐らく」


「くっ飛行をランダムに蛇行させながらもう一度だ・・・」


再び飛び立つ偵察用ドローンだが・・・


ガッ


「何故あたる?!ランダムに回避行動を取らせてるんだぞ!!」


「移動するドローンに対して矢が軌道を変えて追尾したように見えた」


「っ!?なんだとっ」


「恐らく砂金奏が何らかのスキルか魔術を併用しているのだろう、あるいは風神の勇者かも知れない」


「くっ狙撃班から連絡は!?狙撃班に内部の状況を報告させろ」


==========


AMI歴12年5月31日 砂金神社 裏手の森 狙撃班


「あぁん?内部の様子だと?ドローンはどうしたんだ・・・撃墜された??・・あぁ分かったよ」


「ようやく木登りで配置についた所だってのに・・・人使いの荒い事だ・・・しかしどうやってドローンの位置を把握したんだ・・?矢を当てるにも視認出来るようなモノじゃ無いだろうに」


「なぁお前、200mでうちの偵察用ドローン狙撃出来るか?」


「ホバリングしてる状態で位置が確定出来るならともかく、移動中はまず無理だろ」


「まぁそうだよなぁ」


暗視用の眼鏡を装着し、内部を監視しようとすると、何かが近くで男の視線を横切った。


「はあ?」


視界を遮ったものを確認しようと暗視眼鏡を外して周囲を見渡すと。


ホーゥホーゥ


近くの枝に止まるフクロウの姿が目に入った。


「何だよ・・・フクロウか・・・ん?」


何か違和感を感じて男がフクロウを良く観察すると・・・


「お守り・・・?」


ドスッ


「が”あ”っ!!!あ”っあ”っあ”っあ”っ」


突如肩を耐えがたい激痛が襲い、体制を堪える事が出来ずにそのまま木の上から男は落下した。


ドサッ


「おいっ!?どうした」


同じ狙撃班の人間が声をかけるが、その男の肩にもまた・・


ドスッ


「ギャーーーーーーーーッ!!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


これまでの人生でおよそ体験した事の無い激痛が男の肩を蝕み始めた。


「矢?!がっ、つっっ・・・痛い、何でぇ!?こんなっ!!痛い痛い痛い・・・・」


肩に突き刺さった矢を確認し、全身に冷や汗をかき、痛みに必死に耐えながら落下だけはまぬがれようと意識を強く持つ男だったが、肩に刺さった矢を抜こうと手を添えた時。


「あ”っあ”っあ”っあ”っ――――――――!!!!!」


今まで以上の激痛に襲われ、半ば意識が飛んだ状態でそのまま落下していった。


ドサッ


落下の衝撃か肩の痛みか、地面に落ちた男達は意識を失い。にわかに夜の森を騒がせていた悲鳴は消え、再び夜の静寂(しじま)を取り戻した月の無い(とばり)の中を、音も無くフクロウだけが舞っていた。


ホーゥホーゥ


ホーゥホーゥ


==========


AMI歴12年5月31日 1:45 砂金神社周辺 仮設司令部


「何だっ!?何が起こっている!!?」


緊迫した司令部に、司令官のヒステリックな声が響いていた。


「配置についた狙撃班と連絡が途絶えていきます、どうやら次々と矢で攻撃を受けている様です」


「駄目です!全員連絡が途絶えました!!」


「狙撃班が全滅だと・・・・」


「どうやら砂金奏の弓使いとしての実力を見誤っていたようですね」


「ぐぐぐぐぐ・・・」


「それでどうします指令?」


「どうとは何だっ!?」


「撤退しますか?敵の戦力が想定以上のものだったのですから、作戦を練り直す必要があるかと思います」


「そんな事が出来るかっ!!」


予想外の反撃に対し、作戦の見直しを迫る副指令の忠告はしかし、司令官に一蹴されてしまう。


「では、予定通りに突撃ですか?内部の様子が全く分からないままに」


「構わんっ!!そもそも過剰な戦力を投入するのだ、多少想定外の事があろうと数で押し切れる」


「ハッ」


普段ならともすると臆病とのそしりを受けかねない程に慎重で冷静な判断をする司令官のいつにないヒステリックな様子に内心首を捻りながら、戦力では大きく上回っている事も事実だと思い副指令は素直に命令に従うのであった。


次の話も今日中に上げます。


ここまで当作品をお読みいただきありがとうございます!


この作品を読んで少しでも

『楽しい』『続きが気になる』『この伏線ちゃんと回収されるの?』

などと思って頂けたのでしたら、感想やブックマークをお何卒よろしくお願い致します。

ページ下の評価システム【☆☆☆☆☆】をご活用いただければと思います。

ご評価頂けますと作者の励みになり、モチベーションの持続にも繋がりますので、

どうかよろしくお願いいたします!

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