013 追跡者たち事情
今回から新章突入です。
AMI歴12年2月 央華連邦共和国 三藏郷自治区 羅砂近郊
央華連邦共和国軍 三藏郷方面軍司令官
目の前には悪夢が広がっていた。
新疆回教郷自治区における転生者によるゲリラ活動が活発化した陰に、三藏郷自治区からの援助があった事を突き止めた上層部は、一旦新疆回教郷自治区方面の戦線を縮小し、先に三藏郷自治区に潜伏するゲリラの掃討すべく大規模な軍を編成した上で作戦を開始した。
100年前の三藏郷の国土回復戦争では央華連邦共和国の近代兵器に対し、およそ原始的な小火器程度しか持たない三藏郷族は成すすべもなく蹂躙された。
今回も陰ながら濱印度の支援を受けて装備がましになろうが多少の転生者がいようが、央華軍が総力を結集すれば抗する術を持たないであろう事は明白である。新疆回教郷地区に欲目を見せる他国への見せしめの意味も兼ね、党本部は大袈裟とも言える戦力を動員して三藏郷族を蹂躙する事を決めたようだ。
逆らう三藏郷族に対して、央華軍は慈悲を見せる事は決して無かった。転生者の散発的な反撃にも、特別に編成された転生者の部隊がこれに対処した。
兵士には捕虜にした三藏郷族には何をしても良いと通達しており、行く先々で三藏郷族の男を虐殺し、少女に襲い掛かる兵士の姿を目にしてきた。
彼自身も既に殲滅した先で目についた三藏郷族の少女を数名犯していた。
劣等種たる三藏郷族の女に、優良種たる央華族の子を産む栄誉を与えてやろうと言う慈悲である。
そうやってここまで彼の軍隊は逆らうゲリラを圧倒的な戦力差で殲滅してきた。
しかし、その圧倒的だったはず戦力は、目の前で瓦解しつつある。
カチカチカチカチカチカチカチカチ
「悪夢だ・・・・」
何の武器も持たないたった一人の少女によって、彼の率いてきた栄えある央華軍は壊滅の憂き目を見ていた。
少女に向けられた銃器は、少女が手をかざしただけであっと言う間に氷点下を下回り火薬が燃焼反応を起こせない程までに冷却され、それを持つ兵士の手ごと凍てつかせてしまい。
遠距離より放たれた戦車砲は、威力をそのままに方向を180度変えられ放った戦車を貫く結果となった。
彼女が視線を向けただけで、その冷徹な怒りに心を浸食された兵士は恐れおののき逃げ惑う事になり、既に全く統率の効かない烏合の衆と化していた。
カチカチカチカチカチカチカチカチ
恐怖のせいか、身を襲う冷気のせいか、もう長い時間彼は歯の根が合わない状態だ。
破壊された車両の残骸で退路が塞がれているせいで、彼に出来る事は目の前の殺戮をただ最後まで見届けるのみだった。
恐らく少女は自分の事を指揮官と認識したうえで、わざといたぶっているのだ。
「小白竜・・・・!」
それは真っ白な美しい少女だった。
およそ色素というものを持たない、アルピノと呼ばれる先天的に色素の異常を持って生まれた者である。
小白竜は軍によって彼女に付けられたコードネームだが、彼はそれが彼女の本質を表していた事を知らない。
カチカチカチカチカチカチカチカチ
「役立たずの転生者共め・・・」
転生者、ムーンインパクト以降稀に生まれる異能と異世界の記憶を持った者を、央華連邦共和国ではそう呼んでいた。
年齢的にはまだ子供ばかりだが、一部そうした能力を持つ者の中から戦闘能力に特化した者を集め小部隊を形成していたが、その部隊も既に小白竜の前に成すすべも無く敗れ去っていた。
ただ一人、その部隊を率いていたリーダーの少年だけが、雷光を纏い未だに目にもとまらぬスピードでヒット&アウェイを繰り返しているが、小白竜に対して何の痛痒を与える事も出来ず足止めにもなっていなかった。
小白竜のまとう冷気と、彼女の放つ殺意に当てられながら闘志を失わず戦い続ける事が出来る少年の資質は非凡な物があるのだが、見る目の無い彼にとっては他の役立たずの兵士と十把一絡げの存在でしか無かった。
最後の戦車も破壊され、悉く瓦礫の山と化した軍隊を前に、戦い続けていた少年もとうとう諦めたのか一人意を決し逃走していった。
逃走する少年を横目に見ながらも、彼の意識はこちらに近付きつつある小白竜に奪われていた。
ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ
ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ
ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ
小白竜が近付くたびに恐怖と冷気がいや増し、彼の歯の根は音量を上げていよいよ壊れたおもちゃのような有様だった。
「お前はこれまで何人の三藏郷族を殺してきた?何人の三藏郷の少女たちを犯してきた?」
ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ
彼は恐怖に囚われ何も答える事も出来ず歯を鳴らし続ける。
「悪辣な侵略者に死を・・」
「おごぁっ!!?」
突然彼の真下から逆さにした氷柱が生え、彼の尻を貫いた。
下半身を貫く痛みと冷気で声にならない悲鳴を上げ、そのまま全身を冷気に蝕まれて彼は恐怖と冷気に震えながら死に絶えた。
「お前ら悪しき央華民族は全て根絶やしにしてくれる」
小白竜と呼ばれた少女は、その美しい顔を東方へ向けてそう誓った。
この日、央華連邦共和国軍は5万を超える戦死者を出し、ただ一人逃走した転生者を除いて三藏郷ゲリラ討伐部隊はほぼ全滅した。
今より2か月前の出来事である。
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AMI歴12年4月20日 帰り道 秋月羽依
私が取り押さえた男の子は、お姫ぃ様たちと同年代かしら、茶色の髪に灰色の瞳、少しそばかすが残る堀の深い顔立ちをしている、外見で人の事は言えないけどまぁ外人だよね。
一っちが捕まえて来た大人の男性は黒髪だけど思いっきり外人顔だね、やっぱりアメリア人かな?お姫ぃ様目当てじゃ無ければ良いんだけど、先ほどの立ち合いを覗き見されたらお姫ぃ様の正体も気になっちゃうだろうなぁ。
お姫ぃ様を戦わせちゃったのは失敗だったかなぁ、でも止めようも無いし考えても仕方ないね。
でもまぁ多分本命は奏ちゃんだと思うんだよね、希少性の高い極めて有用な技能持ちだもんね。うちの学内じゃ奏ちゃんの精霊眼は有名だから、まぁ諜報機関の人間だったら知られてて当然よね。
「こんな道端ではちょっと話しにくいですね、お話する前にどこかへ移動しましょうか。」
「伊織くん、あまり人に聞かれたくない話をするなら神社にくる?」
「ありがとう奏ちゃん、助かるよ」
「逃げないでね」
「今更逃げ隠れはしないよ、こちらから話したい事もあるんでね」
流暢な日本語が話せるのは助かるわね。
というわけで皆でゾロゾロと砂金神社を目指して出発だ。
すれ違う人に何の集団だとジロジロ見られながら10分ちょっと歩いて、階段を昇れば砂金神社に到着だ。
「この時間なら自宅には誰も居ないと思うから、そっちに行きましょう」
そう言う奏ちゃんに促されて、社務所の裏手にある奏ちゃんの自宅へ向かう。
私はあんまり気にしないけど、伊織ちゃんは神社に来たのにお参りしないで奏ちゃん宅に向かう事に少し躊躇があるみたい、こんな状況だと言うのに律儀と言うか、参道の途中で遠くの拝殿に向かって一礼だけしてる、微笑ましいお兄ちゃんだ事。
結構な人間に目撃されている訳だから、この人が諜報機関の人間だとしたら色々致命的なんじゃ無いかと思うけど、こちらの身の安全を図る上では多くの人に彼らと一緒に居る所を見られて居た方が保険になるんじゃ無いかな?まぁ気休めだろうけど。
砂金宅の客間に通されて、さーてここからは嬉楽しい尋問タイムのはじまりよ~
伊織ちゃんの主導に任せておいて、外せない所だけは口を出すようにしよう。色々聞きたい事が有り過ぎるんだけど、あんまりアタシが口を出し過ぎるのは不自然だからなぁ、どうしても外せない質問だけさりげなーく誘導したい所だけど、はてさてどうなる事やら。
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AMI歴12年4月20日 砂金神社 社務所裏砂金家宅客間 宮代伊織
「彼は『ゼンモン』持ちで何か姿を隠すような技能を持ってますよね?その能力を使いながらここ数日僕達の事をずっと見張ってましたよね?」
僕は気付けなかったんだけど、玲ちゃんには通じなかった。教えてもらった場所に意識を集中したら何とか認識出来たけど。
「インビジブル・チェイサーだわ」
「聞いた事無いけど『ゼンモン』の種類なの?」
「虚偽や欺瞞、幻惑を司る幻影神の眷属よ、名前の通り姿を隠して対象を追跡して暗殺する事が得意なの」
さすがに奏ちゃんは『ゼンモン』の知識も豊富で助かるね。
「へーナルホド、所であなた方はCIAの人なんですか?」
「CIA!?はっはっはっはっは、子供は想像力が豊かだねぇ!!勿論そんな訳は無いよ、我々はこう言う者だ」
そう言って名刺を差し出す男性だけど、英語で書かれた名刺をどうしろと・・・・
「おっと失礼、日本の方向けはこちらでしたね」
と、今度は日本語で書かれた名刺を差し出してくる、準備が良いと言うか余計胡散臭い気がして来るんだけど。
「CIAじゃ無いと言うのは本当みたい」
と玲ちゃんが言ってるので所属する組織は違うようだ。
「USA国立DMC学園大学付属中等学校 特別顧問 ミシェル・ダグラス さんですか・・?」
「うんうん、ただ学園と言ってもまだ開校前の準備中なんだけどね!はっはっはっは、今は様々な人材集めの最中と言う分けさ!」
「名前は偽名、学園は本物、肩書と用向きは表向きのものとしては本物っぽいかな」
なるほどなるほど。
玲ちゃんの突っ込みにミシェル(仮)さんが笑顔を凍らせて冷や汗をかいている。
「裏に何があるのかまでは本人に聞かないとわからない」
「まぁいきなり何もかも全部話してはくれないでしょう、この人にも立場ってモノがあると思うし」
「それ私達が気にする必要あるの?」
「一応ほら、向こうだって最初からケンカ腰だった訳じゃ無いし、友好的に話を済ませられる相手なら友好的に行きたいじゃない?」
「隠れて監視するって友好的かぁ?」
「伊織ちゃん!拉致するチャンスを伺っていた可能性もあるよ!」
「んー言われてみれば・・・拉致しようとしてました?」
「とんでもない!!学園に相応しい人材であるかどうかを見極めようとしていたんだよ!!」
「部分的に嘘ね・・最悪の場合は拉致も考えていたみたい」
「っ!!さっきから何なんだねこちらのお嬢さんは!?嘘だの本当だの当てずっぽうを・・・それとも何か人の嘘を見破れるような技能を持っているとでも言うのかね!?」
「まぁまぁ、お兄さん諦めな、こいつ等に常識なんて通用しないから、怒ったふりで怒鳴りつけて黙らせようとか動揺を誘って情報を得ようとかの駆け引きは無駄だから止めておきな、心象が悪くなるだけだぜ」
「君らは彼女の言葉を全面的に信じると言うのかね・・?」
「まぁ、秋月姉だからなぁ」
「玲ちゃんだからねぇ」
「うちのお姫ぃ様は凄いのよ!」
「玲さんが断言して間違っていた事って無いんですよ」
「姉さんの言う事は絶対です!」
こくこくと黙って頷く風香ちゃん。
「所で先ほど奏ちゃんが言ったインビジブル・チェイサーと言う話は否定しませんでしたね?やはり奏ちゃんの技能に関しては調査済みと言う事ですよね」
「ふーーーーーーー・・・・あぁそうだ、我々はミズ奏をスカウトに来たんだよ」
「拉致ではなく?」
「平和的な解決が一番望ましいと思っているよ」
「これは本心みたい」
「アメリアと日本は友好国だ、当然その日本国民と諍いを起こすなど本意では無いさ、だが」
「だが?」
「央華連邦が我々と同じ平和的な手段を望んて取るとは期待しない方がいい」
「奏ちゃんが他の国の組織からも狙われていると言うんですか?」
そう聞くと首を振るミシェル(仮)さん。
「いや、幸いなことに未だ央華連邦が動いたと言う情報を掴んではいない、だがそれは時間の問題だろう」
「そっそんなっ!!?私が狙われるって言うんですか!」
会話の最中どんどん表情が沈んでいった奏ちゃんがとうとう爆発した。
「日本は平和な国だな・・・だがその平和に甘んじていていささか国際的な問題への危機感が極めて薄い、残念な事だ・・・DMC、君らの言う『ゼンモン』に関してもそうだ」
「我が国アメリアでも今になって慌てて動いていると言うのが実情だがね、私の学園ではDMCの保護を・・・いや、隠し事はやめておこうか、保護・育成・観察・監視・情報収集を目的としてアメリア全土からDMCを集めようとしている、その為にDMCを見分ける能力を有するミズ奏の力を貸してほしいと思っているんだよ、当人に自覚の無いDMCですら見分けられると言う能力をね」
「概ね嘘は無いと思う」
「オイオイオイ待てよ?アメリアでそんな動きがあるってなら、当然日本にだってあるんだろうそういう動きがよ?」
「残念ながら日本政府はこの問題に関してはかなり動きが鈍くてね、未だに『ゼンモン』の存在自体をまるっきり信じようとしない政治家が殆どだ、我が国が本格的に圧力をかけるか、民間企業が事の重大さに気付いて政府の尻を叩くまで動きは無いと予想されている」
「あー・・・」
「我々が恐れるのは、日本政府が無警戒な状態で、央華連邦が日本で人狩りを始めないかと言う事だよ・・・現にここ数年日本でAMI世代の行方不明者が数名出ている・・・央華連邦に拉致されたのでは無いかと疑われている」
「そんな事が・・・」
「本当にそんな事が起こっているんですか!?」
「アメリア、南濠太、日本、三藏郷自治区、洪牙利按、ニジェーリア、アルギニアン何だかわかるかね?」
「ムーンインパクト時に地球へ降りそそいだムーンチルドレンの内、特に大きかった7つの月の欠片、セブンス・ムーンフラグメントが落下した国ですか?」
「そう、落下した地域周辺でのムーンインパクト直後のDMC出生率は50%を超えるが、落下点から離れる程に出生率は下がってゆく事が判明している。そしてここ白銀楼市はそのセブンス・ムーンフラグメントが落下した場所だ」
「逆に言うと、落下しなかった国々でのDMC発症率は極端に低くなる、我々の調査では1%どころか0.001%にも満たないというのが実情だ」
「だが、日本の隣国の央華連邦ではとある党幹部の孫が早い段階で発症したらしく、孫の夢の話が事実だと確信したその者の働きかけで早い内からDMCの重要性に目を付けている、そして自国の人材より他国の人材の方が潤沢である事も既に承知していて、三藏郷自治区と日本の人材に目を付けているという情報がある」
「つまり、日本政府が当てにならない以上、アメリアに身を寄せる方が安全だと言いたい訳ですか?」
「そうだ、特に能力の希少性から狙われ易いであろうミズ奏には是非我らの招待を受けて貰いたいと思っている・・・央華連邦の手が伸びる前に」
「そんな事を急に言われても・・・・」
「勿論こちらとしても結論をそんなに急ぐ気は無い、自分の将来に関わる事だ、じっくり考えて結論を出してくれ、ただ我々の招待を受けてくれるなら、最高級の教育環境、生活環境、待遇を約束しよう、こちらの事業に協力してくれるなら相応の額の報酬も約束しよう」
「今までの話に目立った嘘は無さそう・・・まだ隠し事はありそうだけど信用出来ないって事は無いと思う」
「ミズ玲がそう保障してくれるなら有難いね」
そう言っておどけた仕草で玲ちゃんにウインク。
こーゆー仕草が様になる大人って羨ましいなぁ。
「一ついいですか?」
「何だね?」
「アメリアはその『ゼンモン』持ちの軍事利用を考えているのですか?」
僕は色々と話を聞いていて気になっていた事を質問してみた。
「それは・・・・いや、隠し事は無駄だったな、勿論考えている。言い訳では無いが他国がそうする恐れがある以上対抗手段は絶対に必要だ」
「・・・さすがにそれは納得し難いですね」
「現に既に紛争地域で生まれたDMCは望むと望まざるとに関わらず、戦争の只中でその力を振るわざる得ない状況に陥っている、そして自ら戦場での有用性を証明してしまっているのだ、事ゲリラ戦においてその力は恐るべきものとなる」
「そりゃ、いかにもな話だな」
納得したように頷く亮人くん。
「中東の狂信的なテロ組織において、子供を攫って洗脳を施し戦闘員にする事は日常的に行われているのだが、DMCには洗脳が効かないのだ。当たり前だな、洗脳とは未熟な状態の者に自分たちに都合の良い情報だけを与えて信じ込ませる訳だが、DMCには前世の記憶がある、後から教えられる神の教えなど胡散臭い以外の感想を持つまい、なんせ前世では神の力をよりリアルに感じていて、多くは神の眷属ですらあると言うのに、こちらの教えの中にしか存在しない空虚な神の話をされても信じる分けが無い。結果としてテロに拉致されて育ったDMCはテロ組織の中で反乱を起こすに至るというケースが枚挙に暇がない程存在する、何せ戦闘力はそこらの大人以上なのだ、攫われた子供達の中ではカリスマになってしまい、DMCを中心とした新たな戦闘集団が結成されているとも聞く」
「嘘ではなさそう」
「世界中の『ゼンモン』持ちにそんな事が起こっているんですね・・」
「平和な日本にいると想像も出来ないね」
「何故そこまで色々な情報を私たちに?」
「何、君達には正しくDMCの現状を知って貰った方が良いと判断したまでだ、お伝えした情勢を踏まえ、先程の提案を是非前向きに検討してくれたまえ」
「場合によっては地球上で所属する国家に分かれて『ゼンモン』持ち同士が戦うような日が来るかも知れないんですね、いや紛争地帯では既に起こっているかも知れないんだ」
「『ゼンモン』と無関係に起こっている地球上の紛争に巻き込まれてしまう事と、『ゼンモン』を取り込んで積極的に自国の為に利用しようとする勢力に参加する事は全く別だと思う」
「現在確認されているDMCは最年長で11歳だが、今後彼らが成長して全国的なスポーツ大会に顔を出すようになったら何が起こると思う?」
「そりゃ、団体競技では大活躍、個人競技では新記録を更新しまくったりするだろうなぁ」
て言うか既に亮人くんは陸上短距離で活躍してるじゃないか。
「日本で本格的に君達への関心が高まるのは、そう言った目に見える成果が出始めてからだろうね、つまりビジネスになる事が判明してからと言う事だ」
「それが?」
「つまり央華連邦が君たちをどうにかしようと思ったら、注目がまだ集まっていない今の内に事を起こすだろうという事さ、世間が『ゼンモン』を認識した後、行方不明になった若者の多くが『ゼンモン』持ちと言う事になれば、世間の注目を嫌でも引いてしまう」
「逆に言えば、世間の注目が集まるようになれば今よりは安全に近付くと?」
「最もそうなれば今度は別の厄介事が増えるだろうがね・・・例えば世間では君達を同じ『人間』だと認めるか否かと言った議論も起こり得るだろう」
「・・・・・」
あまりの指摘に何も言えなくなってしまう僕達。
「繰り返すが、私達の手伝いをしてくれるのならば、そういったあらゆる厄介事からも全力で君を守る事をお約束しよう」
「お誘い自体はありがとうございます、しばらく考えさせて下さい」
「うん、他にも希望者が居れば一緒に面倒を見させて貰おうと思っているから遠慮なく言ってくれたまえ」
「そうですね、色々と教えて頂いたお礼に・・・一つお伝えしておきます」
「ほう?何だね?」
奏ちゃんが突然そんな事を言い出した、ミスターは意外そうな顔をしている。
「魔力と言う概念はご存じですか?」
「あぁ、君たちの持つ技能や魔術行使に必要な要素らしいね、ただ地球では君たちのもと居た世界と比べて圧倒的に少ない為仕える技能の種類や威力に制限を受けている状態だと聞いている」
「その、地球上での魔力濃度なんですが・・・ムーンインパクト以降毎年増え続けています」
「なんだと?それは本当かね??」
「数値化出来るような力はございませんが、実感としては確かです」
「その魔力はどこから・・・・?」
「残念ながらそこまでは・・」
「では・・今は魔力が足りなくて使えないと言う強力な技能も・・・・」
「やがて開放される日が来るかも知れません」
その事がどのような事態を巻き起こすのか、今の時点で見通せる賢者は居なかった。
「しかし意外だったな、この場でミズ奏の方からそのような話をしてくれるとは」
「そうですね、もし私が日本に残る事を決めたとしても、あなた方とは友好関係を結んでおいた方が良さそうだと思ったんです」
「ほう?」
「つまり、日本にいても可能な範囲でならお手伝い出来る事があるかも知れませんし」
「なるほど、強かだね」
つまり日本に残ったとしても、アメリアさんが央華連邦を牽制してくれるならお役に立ちますよと言ってるのかな?
「まぁあくまで私の本来の仕事は君のスカウトだ、出来るだけ色よい返事を期待しているよ・・そうだ、最後に一つ聞いておきたいのだが」
「何ですか?」
「異世界において・・前世の君たちにとって『竜』とはどのような存在だった?」
不意にされたその質問に、何故か僕は胸が締め付けられるような思いを抱いたのだった。
そして気が付くと・・・
「伊織・・・泣いているの?」
「え?」
何時の間にか僕の瞳からは涙がとめどなくあふれ出ていて、感情が制御が全く出来なくなっていた、そんな僕を玲ちゃんはそっと抱き締めてくれるのだった。
あぁ、玲ちゃんは温かいなぁ・・・・
「・・・君は何か知っているのかね?」
「ごめんなさい、わかりません・・・」
ただ悲しかっただけでは無い、懐かしさ、温かさ、色々な想いがぐちゃぐちゃになって溢れていた、本当に何だろうこの感情は、僕は・・・
※本作品はフィクションです、実在の人物、団体、国家、地域とは無関係です。
海外勢がどのように絡んでくるのか、日本以外での『ゼンモン』持ちがどのような境遇にあるのかなど、世界情勢を少し説明しています。
オープニングはちょっと暴力的な描写の範疇になるのかなこれ。とまれ新たにチート級の人物が初登場いたしました、日本からは遠い異国の事情ですが、これから主人公達といかなる関係になるのか。
小白竜と言えばイッツァベリーメサイアですね!
ここまで当作品をお読みいただきありがとうございます!
この作品を読んで少しでも
『楽しい』『続きが気になる』『この伏線ちゃんと回収されるの?』
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