8/16
第七話
どれくらい経ったのだろう。
外は濃いオレンジ色に染まり
荒れた騒音の数が減ったかわりに
カラスの鳴き声が増えていた。
マサルは、静かだった。
腫れた目でどこか遠くを見ていた。
「……水、飲む?」
静けさに耐えられなくなった
ユリがマサルに声をかけた。
「ああ」
喉は渇いていないが
マサルは返事をした。
水の入ったコップを渡されたが
うまく持つことができない。
手がブルッと震えその拍子に
コップを床に落としていた。
たったそれだけのことなのに、やけに大きな出来事のように感じられた。
ヒヨリが、心配そうに声をかけた。
「パパ?」
マサルが″ゆっくり″とヒヨリを見た。
その視線に
ユリは背中に冷たいものが走った。
「……マサル」
マサルが、はっとして
ヒヨリから目を逸らした。
「……悪い」
マサルはその一言だけ発した。
三人の間に見えない何かが入り始めていた。




